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「新たな所得連動返還型奨学金制度の創設について」(第一次まとめ)に対する会長声明

2016年05月19日

奨学金の返済が困難となる事例が多数存在していることから、国は、独立行政法人日本学生支援機構の学資金の貸与制度について、貸与を受けた者が返済する金額を、その者の所得に応じて変動させる所得連動返還型奨学金制度の導入を目指し、「所得連動返還型奨学金制度有識者会議」を設置して議論を続けてきた。そして、2016年(平成28年)3月31日に「新たな所得連動返還型奨学金制度の創設について」(第一次まとめ)(以下「第一次まとめ」という。)が示された。
そもそも子どもの成長・発達は社会全体で支えるべきものであり、教育にかかる費用は、教育を受ける権利(憲法第26条)、親の経済力等により教育を受ける機会を差別されないという平等原則(憲法第14条)等の観点から、社会全体で負担を分かち合うべきものであり、奨学金については給付型を原則として設計されるべきである。
また、給付型導入まで貸与型を維持するとしても、このような憲法上の要請を踏まえれば、できるかぎり利用者負担の少ない適切な制度設計をすることが求められる。
貸与型の場合、借入時に将来の収入を見通すことができない一方、返済は長期間にわたるので、低収入または無収入となった場合に返済が過酷なものとなってしまうという問題点がある。
この問題点を十分に考慮して制度設計しなければ、奨学金返済の行き詰まりを恐れて進学を断念することとなりかねず、憲法上の要請に反することになり、厳に留意する必要がある。
この点、所得連動返還型奨学金制度は、設計と運用次第では利用者の負担を大きく軽減する効果を生むものであり、第一次まとめについても一定の評価ができる。しかし、第一次まとめには以下のような問題点がある。
第1に、年収0円であっても月額2000円は支払わなければならないという制度設計がなされていることである。年収300万円以下の者には申請により返還を猶予することが検討されてはいるものの、申請による猶予制度は、現在、運用等も含めて様々な利用制限がなされている。そのため、収入が無い者が返済を強いられる事態が生じるおそれがある。
第2に、返済期間について、返還完了まで又は本人が死亡若しくは障害等により返還不能となるまでとすることが適当としていることである。学業を支えるための奨学金については、貧困の連鎖が生じるのを防ぐために、原則として、生涯にわたって返済の負担をさせるべきではない。第一次まとめでも検討することが求められていることをふまえ、返済開始から一定の期間が経過した後は、残額を免除するという返済終了期限を設けるべきである。
第3に、第一次まとめが所得連動返還型奨学金制度を導入するとしているのは、2017年度(平成29年度)以降の無利子奨学金の新規貸与者からであり、これまでに借り入れて返済が困難になっている者の救済に資するものではない。多数の者がすでに奨学金の返済に困難を抱えている現状を考えれば、これらの者に対する施策まで考えることも有識者会議には求められているはずである。
第一次まとめには、上記のように多くの問題が存在しており、このまま導入されれば、当初の目的を十分に達成できず、現在、奨学金返済が困難な者の救済の役にも立たない。
所得連動返還型奨学金制度を創設するとすれば、収入が一定額未満の者には返済を求めない閾値を設けること、返済開始から一定期間を経過した後は残額を免除する返済終了期限を設けること等利用者の負担が合理的な範囲に制限されるような制度とするべきであり、その適用はすでに貸付を受けた者に対してもなされるべきである。
以上のような理由から、当会は、所得連動返還型奨学金制度について、上記の問題点について十分に議論を尽くした上で、奨学金問題の解決に資する制度とするよう求める。

2016年(平成28年)5月19日

仙 台 弁 護 士 会
会長 小野寺 友 宏

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