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生活保護基準の更なる引き下げに反対する会長声明

2018年01月25日


 政府は、平成29年12月22日、社会保障審議会生活保護基準部会が同月14日に示した報告書を基に、生活保護費のうち食費や光熱水費に充てる生活扶助の基準を、最大5%引き下げ、年間160億円削減する内容を含む平成30年度予算案を閣議決定した。
 しかし、以下に述べる理由から、このような生活保護基準の引き下げには大きな問題がある。
 今回の基準引き下げは、生活保護基準と第1・十分位層(所得階層を10に分けた下位10%の階層)との消費水準を比較した結果、生活保護基準の方が高くなっているので引き下げるという発想に立っている。
 しかし、生活保護の捕捉率(生活保護基準未満の低所得世帯の中で、現実に生活保護を受給している割合)は、厚生労働省が公表している資料を前提にしても2~3割に留まっている。そうすると、第1・十分位層の中には、生活保護基準以下の低所得でありながら、生活保護を受けていない又は受けられないでいる世帯が含まれている。
 そうであるにもかかわらず、第1・十分位層との比較によって生活保護基準を引き下げるとすれば、生活保護基準が際限なく引き下げられることとなる。現に、平成25年の生活保護基準の引き下げも第1・十分位との比較を1つの根拠として行われていたのであり、このような発想に基づく生活保護基準引き下げは、困窮状態から脱却できないレベルで生活保護基準と第1・十分位層の消費水準が均衡するまで続くおそれがある。
 また、平成25年の生活保護基準の引き下げでは、第1・十分位層との比較に加えて、消費者物価の下落も考慮事項とされた結果、大幅な生活保護基準の引き下げが行われた。これに対して、平成27年の消費者物価指数を100とした場合、前回の引き下げが行われた平成25年が96.3であるのに対し、平成29年11月では100.9まで上昇しており、この要素を考慮すれば生活保護基準は引き上げる方向になるはずであった。しかし、今回の基準の改定でそのことは全く考慮されていない。このような考慮事項の選択は極めて恣意的なものであり、今回の生活保護基準の引き下げには合理性・正当性が無いと言わざるを得ない。
 そもそも生活保護基準は、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を定めるものである。さらに、生活保護基準は「最低限度の生活=ナショナルミニマム」を定めているため、最低賃金や地方税の非課税基準、国民健康保険・介護保険の保険料の減免基準、就学援助の給付対象基準などの様々な施策にも連動している。そのため、生活保護基準の引き下げは、生活保護受給世帯に大きな影響を与えるとともに、その他の低所得世帯の生活にも影響を与える。その結果、人々の間の格差が拡大し、社会の分断を広げることになりかねないのである。
当会は、前回の生活保護基準の引き下げに対して、平成24年12月13日に「生活保護基準の引き下げに反対する会長声明」を発したところであり、その引き下げに引き続いて行われるこのたびの更なる引き下げは到底容認できない。よって、当会は、政府に対し、生活保護基準の更なる引下げを行わないよう強く求めるものである。

2018年(平成30年)1月25日

仙 台 弁 護 士 会

会 長 亀 田 紳一郎

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