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解決事例のご紹介~弁護士伊達はじめの事件簿

法律相談センターでは、様々なトラブルについてご相談を受け付けています。
本ページでは、「弁護士伊達はじめの事件簿」として、解決に至った事案の概要を紹介いたします。
実際ありうる事案ですが、事例内に登場する弁護士・関係者等はすべて架空のものです。

刑事事件(被害者)編~気仙沼さんのケース

事件の概要

平成27年4月15日午後10時頃,気仙沼さんは友人数名と居酒屋で食事をしていたところ,近くで食事をしていた人物から,会話の声量が大きいことを理由に因縁をつけられました。
気仙沼さんは,相手がかなりの量を飲酒しているように感じたので,穏便にすませようと相手に謝罪をしました。しかし,相手は興奮状態が冷めず,今度は気仙沼さんの謝罪の方法について因縁をつけてきました。そして,突然,相手は,気仙沼さんの胸ぐらをつかみ,気仙沼さんの顔面を殴打してきました。気仙沼さんは,殴られた衝撃で地面に倒れ,相手は,倒れている気仙沼さんの右上腕部分を何度か蹴ってきました。

気仙沼さんが何度か蹴られたところで,一緒にいた友人らが相手を取り押さえ,その後,居酒屋の店員の通報により駆けつけた警察官に相手は逮捕されました。
その後,検察庁から,相手が起訴されたとの連絡がありました。

気仙沼さんは,相手からの一連の暴行により,顔面打撲,右上腕部打撲の傷害を負いました。また,地面に倒れた際に居酒屋のテーブルに頭をぶつけてしまい,頭部挫創の傷害を負いました。
気仙沼さんは,自身の健康保険を使わずに自費で通院治療をしており,今回の事件で被った損害については相手に請求したいと考えました。また,相手に一方的に暴行を加えられ,傷害を負わされたことについて,自身の処罰感情を刑事裁判で裁判官にきちんと伝えたいと思い,そして裁判の行方を見守りたいと考えました。

しかし,気仙沼さんは,どのように損害賠償請求すればよいのか,また,刑事裁判がどのようなものであるかわからなかったので,まずは,仙台弁護士会の犯罪被害者支援窓口が行っている犯罪被害者無料(初回限定)電話法律相談に電話をかけてみることにしました。

伊達弁護士との電話相談

気仙沼さんが電話相談をした日の担当は伊達弁護士でした。

伊達弁護士は,気仙沼さんから事情を聞き,被害者が刑事裁判への参加できること(被害者参加制度)や加害者に損害賠償請求(損害賠償命令・民事裁判)できることを説明しました。伊達弁護士は,刑事裁判に被害者参加した際,弁護士(被害者参加弁護士)による援助を受けることが可能であること,損害賠償請求については代理人として活動できることを伝えました。

そうしたところ,気仙沼さんは,伊達弁護士に被害者参加弁護士として活動してもらうこと,損害賠償請求をする際の代理人となってもらうことを決断し,伊達弁護士と委任契約を締結することとなりました。

伊達弁護士との電話相談

伊達弁護士は,被害者参加の申し出をするため,担当の検察官にその旨を伝えました。

そして,裁判所から起訴状の写しを取得し,第1回公判期日の日を確認しました。
伊達弁護士は,第1回公判期日の予定を気仙沼さんに伝え,第1回公判期日に一緒に出席することを約束しました。
また,伊達弁護士は,刑事裁判を行った裁判所と同じ裁判所が損害賠償の審理を行う損害賠償命令制度を利用するため,損害賠償額の算定に着手しました。

気仙沼さんの通院治療費,通院交通費,休業損害,傷害慰謝料及び弁護士費用を計算して刑事損害賠償命令申立書を作成し,裁判所に申立書を提出しました。
その頃,加害者の弁護人から示談の申し入れがありました。

伊達弁護士は,気仙沼さんに対し,示談をすることや宥恕をすることが加害者の有利な情状になることなど刑事裁判における示談の意味と,示談をすることによって加害者が気仙沼さんに対して支払い義務を負う賠償額が確定することなど民事における示談の意味を説明したところ,気仙沼さんは,示談するかどうかは公判での加害者の態度を見てから決めたいという意向であったため,その時点で示談はしないこととしました。

第1回公判期日では,被害者である気仙沼さんの証人尋問と現場にいた気仙沼さんの友人の証人尋問が行われ,第2回公判期日では被告人質問が行われることとなりました。第2回公判期日において,審理が終結することが予想されましたので,伊達弁護士は,第2回公判期日で被害者参加人による意見陳述をしてはどうかと気仙沼さんに提案しました。

気仙沼さんとしても,加害者に対する処罰感情を述べる機会が欲しいと思っていましたので,意見陳述を行うこととしました。そして,気仙沼さんは,伊達弁護士と相談して,意見陳述の内容を検討しました。
そして,第2回公判期日において,気仙沼さんは,検察官による論告・求刑の後に意見陳述を行いました。気仙沼さんは,加害者に対して公判廷で自らの意見を述べることができたことに満足しました。
第3回公判期日において判決が宣告されることとなりました。気仙沼さんは,加害者に対して自らの意見を述べることができたこと,また加害者が反省している様子を感じることができたので,加害者と示談をしても構わないと考えるようになりました。

伊達弁護士を通じて,加害者の弁護人と交渉した結果,加害者から賠償金を一括払いの方法で支払いを受けることとなりました。そして,示談書を取り交わし,損害賠償命令申立は取下げました。
示談金の金額としては,損害賠償命令申立書に記載した金額に比較すると少なくはなっているものの,被告人質問の際に知った被告人の生活状況からすれば,十分に誠意を感じることができる金額でした。

第3回公判期日の判決宣告には,伊達弁護士のみが出席し,判決は,懲役1年6月,執行猶予4年でした。その後,加害者が控訴せず,判決が確定し,伊達弁護士の活動も終了しました。

ワンポイントアドバイス

今回は,被害者が示談に応じたため,損害賠償命令申立を取下げましたが,損害賠償命令によって,被害回復を図る方法について説明します。

損害賠償命令の審理は,刑事裁判の第1審判決言渡し後すぐに開始されます。損害賠償命令の審理を担当する裁判所は,刑事事件を担当した裁判所と同じで,特別の事情がある場合を除いて4回以内の審理期日で終結となります。

すなわち,損害賠償命令制度では,刑事手続の成果を利用でき,被害者は,簡易かつ迅速に被害回復を図ることが可能となります。

ただし,裁判所の決定に対し,異議申立てがなされた場合や,4回以内の審理で終結しない見込みのときなど一定の場合には通常の民事訴訟に移行することとなります。

弁護士報酬を自身で負担することが困難な方のために,弁護士報酬の援助や立替えの制度があります。国選被害者参加弁護士制度や犯罪被害者法律援助制度を利用し,国や弁護士会に弁護費用を払ってもらいながら,弁護活動を依頼することも可能です。

詳しくは仙台弁護士会の「犯罪被害者支援窓口」までご連絡ください。

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被災ローン減免制度編~泉さんのケース

事件の概要

泉さんは,工場勤務の35歳の男性です。妻と小学生2人の4人家族です。
泉さんの自宅は,東日本大震災で跡形も無く流されてしまいました。自宅は,平成20年にみやぎ銀行で総額約3000万円,月額10万円のローンを組み,土地を購入し,新築したものでした。
東日本大震災後も月々10万円ずつ返済し続けてきた泉さんでしたが,ローンが未だ2500万円以上残り,今住んでいる仮設住宅を出た場合には家賃などが発生することを考えて,不安な気持ちになっていました。
そのような時,被災者のローン問題を解決するために「被災ローン減免制度」(正式名称:個人版私的整理ガイドライン)というものができたという話を耳にしました。
そこで,被災ローン減免制度について聞いてみようと思い,弁護士会法律相談センターに行ってみることにしました。

伊達はじめ弁護士との面談

  1. 伊達弁護士は,弁護士会法律相談センターで泉さんと面談しました。
    そして,泉さんから,東日本大震災によって自宅を流されてしまったこと,みやぎ銀行で組んだローンがまだ2500万円以上残っていること,勤務先の工場は運良く被災を免れたものの,給料は震災前と比べ約5万円も下がり手取り25万円となったこと,震災前に妻がパートで働いていたスーパーは流されてしまい,妻の収入はなくなってしまったこと,小3と小2の二人の娘がいて,今後の教育費なども不安であるとの話を聞きました。
    また,泉さんにはローン以外に借金はないこと,預金が600万円あり,支援金や義援金として200万円,地震保険金として500万円(うち150万円は家財分)を受け取っていたこと,震災後に50万円で購入した中古車に乗っていること,津波の来た土地にはもう戻る気持ちはないことも確認しました。
  2. これを受けて伊達弁護士は,泉さんに対して,「被災ローン減免制度が使えそうですね」と切り出しました。
    そこで,泉さんは,被災ローン減免制度についていろいろと聞いてみることにしました。
泉さん 「被災ローン減免制度というのは,よく聞く『破産』と同じものですか?」
伊 達 「破産は裁判所を通した正式な手続ですが,被災ローン減免制度は,あくまで銀行などとの話し合いによってローンの減額や免除を受ける手続です。」
泉さん 「でも,被災ローン減免制度を使ったら,二度と銀行からお金を借りられなくなるんでしょう?いつかまた自宅を建てたいのですが・・・」
伊 達 被災ローン減免制度によって『弁済計画案』が成立すれば,信用情報への登録はされません。ですから,またローンを組むこともできます。」
泉さん 「ちなみに,費用はおいくらですか?」
伊 達 被災ローン減免制度の使い方には2つ方法があります。1つは被災ローン減免制度の運用をしている『ガイドライン運営委員会』から『登録専門家弁護士』を紹介してもらう方法,もう1つは,弁護士が代理人として手続を進める方法です。前者は無料,後者は法テラスによる費用の立て替えを利用して12万円程度です。ちなみに,後者の場合でも,最後に返還が免除されることもありますよ。」
泉さん 「そうですか。私としては,このまま先生に代理人として手続を進めてもらえると安心なのですが・・・」
伊 達 「わかりました。では,一緒に頑張りましょう。」
泉さん 「財産は全て手放すことになるのでしょうか。」
伊 達 被災ローン減免制度では,500万円までの現預金,地震保険の家財分250万円,それに支援金や義援金は銀行に支払わなくて良いということになっています。また,およそ200万円程度の自動車も手放さなくても良いということにもなっています泉さんの場合には,預金600万円のうち支援金や義援金が200万円,地震保険の家財分が150万円で,残りは250万円と500万円以内なので,みやぎ銀行に支払いをする必要はないのではないかと思います。自動車も中古車ですし,手放さなくて済みそうです。」
泉さん 「本当ですか。土地はどうなりますか。」
伊 達 「泉さんに戻る気がないのですから,将来売れたときに,その代金を抵当権者であるみやぎ銀行に払うということにしましょう。それを支払ったら,残りのローンは全て免除されることになります。」
泉さん 「わかりました。よろしくお願いします。」

泉さんは,今後生活していくためのお金を手元に残すことができ,さらに,ローンを支払い続ける不安からも解放されるのであれば,被災ローン減免制度を利用してみたいとの気持ちになり,伊達弁護士に依頼をすることにしました。

伊達弁護士の活動

  1. 後日,伊達弁護士は泉さんと自分の事務所でさらに話をし,被災ローン減免制度申出に必要な書類をまとめ,申出書一式を,被災ローン減免制度の運用をしている『ガイドライン運営委員会』に提出しました。
  2. 運営委員会では,伊達弁護士から提出された申出書の内容を確認し,内容に問題がなかったことから,その申出書をみやぎ銀行に送付しました。
  3. 申し出から1ヶ月後,伊達弁護士は,申出書がみやぎ銀行に送付されたことを受けて,泉さんが現在有している預金などからは支払いをしないものの,土地については,将来売れたときにその代金をみやぎ銀行に支払う,それ以外のローンは免除するという弁済計画案を作成し,運営委員会に提出しました。
  4. 運営委員会では,弁済計画案の内容も問題ないと判断し,その案をみやぎ銀行に送付しました。
    みやぎ銀行でも,泉さんが被災者である以上,送付された弁済計画案の内容で問題はないという結論に至り,内容に同意すると回答してきました。
    そして,最終的に,運営委員会より,みやぎ銀行が同意したことで被災ローン減免制度の手続が全て終了したことが伊達弁護士に伝えられました。申し出から約3ヶ月後のことでした。

その後

  1. 伊達弁護士は,泉さんと事務所で話をし,全て手続が終わったこと,今後はローンの支払いはしなくて良いこと,将来的に土地が売れた場合には,その代金をみやぎ銀行に支払う必要があると伝えました。
伊 達 「お疲れさまでした。無事に終わりましたね。」
泉さん 「ありがとうございました。もうローンを払う必要はないんですね。」
伊 達 「そうです。ただ,将来土地が売れたら,そのお金はみやぎ銀行に支払う必要がありますから,その点は気をつけてください。」
泉さん 「わかりました。その時には銀行に連絡してみます。」
伊 達 「そうですね。何かわからないことがあれば,いつでも連絡してください。」

泉さんの安心した表情を見て,自分も何だかほっとした伊達弁護士なのでした。

ワンポイントアドバイス

  • この被災ローン減免制度は防災集団移転促進事業の対象地域の方も利用することが可能で、既に積極的に活用されています
  • 被災ローン減免制度は,すでに銀行と支払条件の変更(リスケジュール)をしていたり,現在は支払を猶予されている方でも利用できる可能性があります
  • 震災当時宮城県内にお住まいであった方であれば、無料で法律相談をすることができます。もちろん被災ローン減免制度に関するご相談にもご利用頂けます。詳しくはこちら

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交通事故編~青葉さんのケース

事件の概要

平成23年8月30日、青葉さんは自転車を運転していて車と接触する交通事故に遭いました。救急車で病院に運ばれ、「頚椎捻挫、全身打撲」との診断を受けました。その後約半年の間通院しましたが結局痛みは無くならず、平成24年6月に「症状固定」と診断されました。

事故後は、相手の運転手が加入していた任意保険会社の担当者とやりとりをしており、青葉さんの治療費はすべて保険会社に支払ってもらっていました。「症状固定」したということで、相手方の保険会社から「損害賠償金提示のご案内」という書面(以下「示談提案書」といいます。)が届き、示談の提案がなされました。

その示談提案書の内容は、「後遺障害14級、過失相殺30%」などとして、保険会社から青葉さんに対して約120万円を支払うというものでした。青葉さんとしては、車と自転車の事故なのに自分の過失が30%ということに納得ができず、交通事故電話相談(0570-078-325、毎月10日・午後1時~4時)に電話して相談しました。相談を担当した弁護士からは、過失割合にも争いがあるため資料を見ながらの面談相談を勧められました。

そこで、青葉さんは日を改めて仙台弁護士会に行き、面談相談(交通事故相談・相談料無料)を受けることにしました。 (交通事故電話相談・交通事故無料相談の詳細はこちら。)

伊達弁護士の活動

  1. 青葉さんが相談に行った日の担当は伊達弁護士でした。伊達弁護士が、保険会社から届いた示談提案書の内容を検討したところ、自賠責保険の基準によって損害額を算定されており、裁判になった場合にはもっと大きな金額になる可能性がありました。また、事故現場の図面や青葉さんから聴き取った事故の状況からすると、示談提案書の過失割合にも疑問が残りました。
    そのため伊達弁護士は、弁護士に依頼して先方と交渉することを勧めましたが、青葉さんには弁護士費用を支払う余裕がないとのことです。伊達弁護士は「最近は車等の保険に弁護士費用特約が付いていることが多く、その場合には青葉さんが弁護士を依頼する際の費用は保険でカバーすることができます。」とアドバイスしました。青葉さんが契約している保険会社に確認したところ、弁護士費用特約が付いていることが分かったので、青葉さんは伊達弁護士に依頼することにしました。
  2. まず、伊達弁護士は相手方保険会社の担当者と交渉をしましたが、お互いの見解の隔たりが大きくなかなか思うように進展しませんでした。伊達弁護士は裁判を出すこともやむを得ないかと考え、青葉さんに相談しました。しかし、青葉さんとしてはできれば早期に話合いで解決したいと考えているとのことでした。
    そこで、伊達弁護士は専門的な知識を有する弁護士が間に入って和解あっせんを行う「日弁連交通事故相談センター」(以下「交通事故相談センター」といいます。)に和解あっせんの申立をすることにしました。
    (「日弁連交通事故相談センター」のサイトはこちら。)
  3. 交通事故相談センターでは、中立の弁護士が間に入り、伊達弁護士と相手方保険会社の担当者が出席して話合いが行われました。
    第1回目の話合いでは、間に中立な弁護士が入ったおかげで、損害額についてお互い納得ができるところまで話が進みましたが、過失割合については折り合いが付きませんでした。
    そこで、2回目の話合いには青葉さんにも来てもらい、事故の状況を説明してもらうなどしました。
    3回目の話合いでは中立の弁護士から和解案が示されました。和解案は、青葉さんの過失は10%としており、和解金として約350万円を支払うという内容のものでした。青葉さんは伊達弁護士と相談し、和解案を受け入れることにしました。相手方保険会社も中立の弁護士が示した和解案を重く受け止め、これを受け入れたため、和解が成立しました。申立てから解決まで、約4ヶ月での解決となりました。
    その後、相手方保険会社から、和解金が青葉さん側に支払われました。伊達弁護士の成功報酬についても弁護士費用特約により支払われたため、青葉さんは和解金全額を受け取ることができました。

ワンポイントアドバイス

もし青葉さんの場合に訴訟になったら?
まず青葉さんと打合せの上、伊達弁護士が訴状を作成し、証拠等とともに裁判所に提出します。その後、裁判所から第1回口頭弁論期日の連絡が来ます。口頭弁論期日には伊達弁護士が出席するので、青葉さんは必ずしも出頭する必要はありません。
通常、第1回口頭弁論期日の前に相手方から答弁書が提出されます。答弁書では、訴状の記載についての認否と反論がなされます。
第1回期日以後、何度かお互いの主張を記載した準備書面と証拠書類のやり取り(及び期日での補足説明)が行われ、双方の主張と証拠が整理されます。
主張と証拠が整理されたら、必要な場合には青葉さんと相手方の言い分を法廷で直接裁判官に伝える本人尋問が行われます。本人尋問では、青葉さんは伊達弁護士の質問に答える形で言い分を述べ、その後相手方の弁護士や裁判官の質問にも答えます。
本人尋問の後は、裁判所から和解勧告がなされることも多くあります。この段階で和解ができない場合には、判決になります。

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労働問題編~若林さんのケース

事件の概要(残業代と退職金の未払いの発生)

  1. 若林さんは,地元の大学卒業以来,仙台市内の中小企業であるA社に会社員として10年勤めており,妻との間に小学生の子供が1人います。
    若林さんはA社で総務部門を担当しており,ここ1,2年は,毎日のように残業を余儀なくされていましたが,A社ではいわゆるサービス残業が横行しており,若林さんも上司に残業代を支払ってほしいと言えないまま勤務する日々が続いていました。
  2. あるとき若林さんは,長時間の残業が原因でついに体調を崩して入院,ところが退院後も長時間残業が続いたことから,家族とも相談して転職することを決断し,ちょうど総務の経験者を探していたB社への転職が決まりました。
  3. 若林さんは,A社を退社するにあたり,退職金を受け取り,それを子供の教育資金等に充てようと考えていました。
    ところが,若林さんが退職の意思を伝えたところ,上司からは,A社の近年の業績悪化を理由に退職金は一切支払えない旨を通告され,その後抗議しても聞き入れてもらえず,とうとう若林さんはそのままA社を退職することとなりました。
  4. 若林さんは困り果てて労基署に問い合わせたところ,仙台弁護士会で労働者の法律相談を無料で行っているとの情報を教えてもらったことから,さっそく仙台弁護士会法律相談センターに連絡し,「労働に関する無料法律相談」を受けることにしました。

伊達弁護士との面談

  1. 若林さんが仙台弁護士会法律相談センターから法律相談の担当として紹介された弁護士は,伊達弁護士でした。
    伊達弁護士が法律相談で若林さんの話を聞く中で,A社に退職金規程があること,それによれば若林さんは今回の退職で50万円の退職金を受け取れるはずであること,それと同時に,若林さんがこれまで続けてきた残業についての未払い残業代が約90万円に及ぶことが判明しました。
  2. 若林さんは,無料法律相談での伊達弁護士の上記回答結果を踏まえて,伊達弁護士に今回の件を依頼しようと決断,正式に伊達弁護士と委任契約を締結しました。

伊達弁護士の活動

  1. 伊達弁護士は,さっそくA社に催告書を内容証明郵便で送付して時効を中断させたうえで,若林さんと打ち合わせを行い,退職金と残業代をどのような方法でA社に請求するかを検討しました。
    その結果,当事者間での話し合いでは解決が困難である一方,争点がさほど複雑ではないこと等から,労基署による和解あっせんや,訴訟,保全処分などの各解決手段の中から,本件では労働審判を選択することとしました。
  2. その後伊達弁護士と若林さんは,数回の打ち合わせを繰り返しながら,若林さんのA社内での役職や残業状況などの各事実や,タイムカード等の証拠の有無などを確認し,最終的に,退職金50万円と残業代90万円の合計140万円の支払いを求める労働審判を仙台地方裁判所に申立てました。
  3. 労働審判は,原則3回の期日で話し合いによる解決(調停)を目指しつつ,当事者の合意ができず調停不成立の場合は,審判という裁判所による判断がなされるのが,和解あっせん等の他の手段とは異なる大きな特徴です。
    若林さんのケースでは,規程やタイムカード等の各証拠がA社に残されており,若林さんが退職金と残業手当を受け取る権利があることは明白でした。そのため第1回期日では裁判所からA社に対し,若林さんの請求は一定程度認められると現時点では考えていることから,一定額の解決金の支払いにより解決できないかどうか検討してほしい旨が提案され,それを踏まえてA社は第2回期日で,解決金100万円を第3回期日で若林さんに一括払いして解決するとの調停案を提案してきました。
    伊達弁護士と若林さんは,A社の上記提示額が請求した140万円には及ばなかったものの,今後,審判の内容をA社が拒否して訴訟に至った場合の時間や費用面でのリスクや回収リスク,過去のことは極力早期に解決して転職先での仕事に集中したいという若林さんの意向等を踏まえ,A社提案の上記調停案に承諾することにしました。そして,第3回期日にA社から解決金100万円を受け取って調停が成立し,本件は解決しました。
    最初に若林さんが伊達弁護士に相談してから,約4ヶ月後のことでした。

ワンポイントアドバイス

労働問題の解決手段は,労基署による和解あっせんや,労働審判,訴訟,保全処分など様々な種類があり,どの方法を採るべきかは,事案の内容や,有償無償の別,解決までに要する期間等により判断していくことになります。
また,残業代にしても退職金にしても,一般の債権とは異なる短い消滅時効期間(残業代は発生した月毎に2年,退職金は退職時から5年)が定められていることから,すばやく事件に着手して時効中断等の手段を採る必要があることに注意が必要です。
仙台弁護士会では,労働に関する無料相談窓口を設置しており,労働者からの労働に関する法律相談であれば無料で弁護士による相談を受けることができます。詳しくは「労働と生活保護に関する無料法律相談窓口」まで(022-223-2383)。

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相続(遺言)編~太白さんのケース

事案の概要

太白さんは、70歳の男性で、数年前に長年連れ添った妻を亡くし、現在は二男の家族とともに、自宅で生活しています。東京で暮らしている長男とは疎遠になっていることから、面倒を看てくれている二男に自宅を含め自分の財産を相続させたいと思うようになりました。
そこで,太白さんは遺言の作成方法を質問するため,弁護士会の法律相談センターに行ってみることにしました。

伊達弁護士との面談

太白さんは、相談を担当した伊達弁護士に、自分の主な財産としては自宅の土地建物と預金があること、相続人になるのは2人の子供だけということを説明し、疑問に思っていることを聞いてみました。

    1. 自筆証書遺言と公正証書遺言
太白さん 「遺言を作ろうと思っているのですが、自分一人で作ることもできるんですよね?」
伊  達 「はい。もちろん自分で遺言を作成することもできます。自筆証書遺言といって、民法の定める方式にしたがって作成すれば有効な遺言になりますよ。」
太白さん 「方式?書き方が決まっているのですか?」
伊  達 「そうです。遺言の全文、日付及び氏名を自書して、判子を押す必要があります。不備があると遺言が無効になる可能性もあるので注意が必要です。」
太白さん 「難しそうですね。無効になると困ってしまうし…。」
伊  達 「不安な場合には、弁護士に遺言書案の作成を依頼して、それを清書して自筆証書遺言にすることもできますよ。より確実に作成したいということであれば公正証書遺言を作成することをおすすめします。」
太白さん 「公正証書か。名前くらいは聞いたことがあるけれど、どういうものなんですか?」
伊  達 「公証人が法律で定められた方式に従って作成する遺言書です。公証人という専門家が作成するため、方式の不備で無効となることはありませんし、遺言書が公証人役場で保管されるため紛失したり改ざんされたりするおそれもありません。ただ、自筆証書遺言と違って手数料がかかります。」
太白さん 「簡便さを優先するなら自筆証書遺言、確実性を優先するなら公正証書遺言ということかな。」
伊  達 「そうですね。どちらがいいのか検討してみて下さい。」
    1. 遺言の内容と遺留分
伊  達 「遺言の内容としてはどのように考えられているのですか?」
太白さん 「ずっと面倒を看てくれている二男に、自宅の土地建物も含めて全ての財産を相続させようと思っているのです。この内容だと長男は何も相続できないことになりますが、そのような遺言書作ることはできますか?」
伊  達 「内容自体としては可能ですよ。ただ、遺留分の問題が生じてしまいますね。」
太白さん 「遺留分とはなんですか?」
伊  達 「相続人が法律上必ず確保できる相続財産のことです。遺言で全財産を二男に与えると書いても、長男が遺留分を主張して二男に対して物件等の返還を求めることになる可能性があります。」
太白さん 「以前、長男は親父の財産は一切もらうつもりはないと言っていたのですが…。」
伊  達 「それなら、遺留分の主張をしない可能性もありますし、長男に遺留分放棄の手続をとってもらうことも考えられますね。ただ、二男にできるだけ多くを相続してもらうよりもご兄弟間での争いを予防したいというお気持ちの方が強いようでしたら、最初から長男の遺留分を侵害しない形で遺言書を作成するのがいいかもしれませんね。」

太白さんから正式に公正証書遺言の作成の依頼を受けた伊達弁護士は、戸籍等の必要書類を集めるとともに、不動産の評価額の確認や財産目録を作成する作業を行った。その後、二男が土地建物を取得しつつ、可能な限り長男の遺留分を侵害しないよう長男が預金の一定額を取得する遺言書案を作成した。
伊達弁護士は、遺言書案について太白さんの了解を得たので、事前に遺言書案を公証人に送付し、遺言書の文言の詰めを行った。
後日、無事に公証人役場で証人立会いのもと太白さんの公正証書遺言が作成されました。

ワンポイントアドバイス

遺言は、太白さんのように法定相続分とは異なる相続を実現するために利用する他に、相続人以外の人に財産を残したい場合や寄付をしたいという場合等にも利用することができます。

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離婚(決めておくべきこと)編~宮城野さんのケース

事件の概要

宮城野さんは(女性,50代),平成元年に夫と結婚し,平成2年に長男,平成7年に長女と子宝に恵まれました。夫(50代後半)は某不動産会社に勤めるサラリーマンで,宮城野さんは長男が生まれるのを機に,勤め先を退職して専業主婦になりました。
平成10年に3000万円のローンを組んでマンションを購入しましたが,その頃から,夫との間の夫婦関係が冷めていきました。夫への不満は尽きませんでしたが,子供たちの幸せを考えて今まで我慢してきました。しかし,長男は成人しましたし,長女も東京の大学に行くとのことで,そろそろ夫との夫婦関係を清算するタイミングなのかな,と思い始めました。
とはいえ,長女の大学進学費用や,今後の私の生活費のことも心配なので,弁護士会の法律相談センターに行ってみることにしました。

伊達はじめ弁護士との面談

1.離婚の方法・離婚の際に決めておくべきこと

宮城野さん 「離婚届を提出すれば、離婚はできるんですよね?」
伊   達 「そうですよ。ただ、離婚の際は、お子さんの親権者、養育費、夫婦共有財産の清算(財産分与)、年金分割など、決めておくべきことがたくさんあります。」
宮城野さん 「夫も離婚には応じてくれると思うのですが,離婚の条件について折り合わない可能性が高いです。」
伊   達 一度旦那さんと2人で話し合ってみて,離婚条件に付いて折り合わないようであれば,家庭裁判所に調停を申し立てて旦那さんと話し合いをするというのがよいでしょう。なお,離婚届提出後に,財産分与や年金分割についてのみ調停を申し立てることは可能ですが,離婚後2年以内という期間制限がありますので,注意が必要です。」
宮城野さん 「調停では,夫と顔を合わせなければならないのでしょうか。」
伊   達 「代理人がいる場合,旦那さんと顔を合わせないで調停を成立させることも可能ですが,裁判所の建物内で顔を合わせる可能性がゼロとは言えません。」
宮城野さん 「調停が話し合いの場であることは分かりましたが,話し合いがまとまらない場合は,どうなるのですか?」
伊   達 「その場合は,離婚訴訟をするほかありません。」
宮城野さん 「最初から離婚訴訟をすることはできないのでしょうか。」
伊   達 「できません。離婚調停が成立しない場合に,離婚訴訟をすることができるという仕組みになっています。」
2.婚費分担、養育費、親権について

宮城野さん 「離婚したら,夫から生活費はもらえないんですか?」
伊   達 「婚姻中の生活費(法的には「婚姻費用」といいます。)は,あくまで夫婦間の扶助義務に基づいて支払われるものですので,離婚して夫婦でなくなった場合,婚姻費用を支払う法的根拠がなくなります。
ただ,例えば宮城野さんが未成年のお子さんの親権を取得した場合,夫婦の収入にもよりますが,お子さんの養育費の請求ができる場合があります。とはいえ,養育費はお子さんの養育のための費用であって,元妻の生活費ではありませんが。」
宮城野さん 「私は夫の扶養の範囲内でのパート収入しかありませんが,夫は年収400万円くらいもらっているので,長女(18歳)の親権を取れれば,長女の養育費や大学進学費用が受け取れますね?」
伊   達 「はい。ただ,18歳とすると,親権者の決定においては,長女さんが父親,母親のどちらと生活したいのかという意向が重視されます。小学校低学年くらいまでであれば,子の福祉の観点から,母親が親権を取る可能性が高いのですが。
なお,長女さんの大学進学費用については,離婚の際,月々の養育費とは別途協議するという形で,父親にも相応の負担をしてもらうことを前提とした取り決めをしておくのがよいでしょう。」
3.財産分与について

宮城野さん 「長女の意向によっては,確実に親権を取れるわけではないんですね。それなら,財産分与において,収入の低い私の生活を考慮していただくことはできないのでしょうか。」
伊   達 「個別の事情にもよりますが,財産分与の割合は,夫婦が結婚してから共同で築いた財産を5:5の割合で分割することが多いです。とはいえ,夫婦の一方が離婚後,生活を再建するまでの合理的な期間(数か月から長くても1年くらいでしょうか。)の生活費を考慮して財産分与の額を調整するということもあり得ます。」
宮城野さん 「夫は,あと4年で定年退職なのですが,将来の退職金というのは財産分与の対象となるのでしょうか?」
伊   達 「あと4年であれば,退職金が得られる可能性が高いため,離婚時(あるいは別居時)に退職したとすれば得られる退職金が財産分与の対象となる可能性があります。ただ,財産分与は,宮城野さんが結婚期間に内助の功として旦那さんを支えたという貢献を考慮したものですので,退職金全額が財産分与の対象となるわけではありません。」
宮城野さん 「それなら,私の生活も保障してもらわなきゃいけないから,退職金を夫6:私4くらいの割合で分割することを前提に話し合いができればいいわね。」
伊   達 「マンションはどうしますか?」
宮城野さん 「夫名義で借りている住宅ローンが1700万円くらい残っていて,今のマンションの価値からしても,今はオーバーローンだと思うんです。退職金の一部を使って完済する予定だったのですが。」
伊   達 「夫婦共有の負債についても,離婚時に清算する必要があります。マンションを保有する方が住宅ローンも負担するというのがオーソドックスです。」
4.年金分割

伊   達 「最後に年金分割ですが,旦那さんは民間企業のサラリーマンで,宮城野さんが専業主婦ないし扶養の範囲内でのパートということなので,旦那さんの厚生年金部分について,年金分割の申立てをすることができます(基礎年金部分は分割できません。)。離婚調停の前に,年金事務所から「年金分割のための情報通知書」をもらって,調停の際に併せて申し立てておくとよいでしょう。分割の割合は,特段の事情が無い限り5:5となります。」
5.受任

宮城野さん 「それでは,離婚条件についての夫との協議がまとまらない場合は,離婚調停をお願いしてよいかしら。」
伊   達 「その際にはまたご連絡下さい。」

ワンポイントアドバイス

離婚には合意していても離婚条件について折り合わない,あるいは離婚の際に決めておくべき事項が分からず,それを決めないまま離婚してしまい,暫く経ってから後悔するということがよくあります。早く別れたい,終わりにしたいという一心で離婚届にサインする前に,離婚条件について一度相談しておくことにデメリットはないと思いますので,気兼ねなくご相談いただければと思います。

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個人再生編~大河原さんのケース

事件の概要

大河原さんは、40歳のサラリーマンで広告代理店に勤めています。専業主婦の妻と小学生の子供1人の3人家族です。大河原さんは、10年前に住宅ローンを組んで、一軒家の土地建物を購入しました。大河原さんは5年ほど前から、趣味の競馬に使うために消費者金融から借り入れをしていたのですが、3年ほど前から会社の業績が悪化して給料が下がってしまいました。生活費が不足した分も、消費者金融などから借り入れをして、なんとかしのいできたのですが、住宅ローンの支払いが厳しくなってきました。現在の消費者金融の借り入れの残高は3社合計で350万円で、返済は月額6万円、住宅ローンの残高は約2500万円で、返済は月額7万円、年2回のボーナス時にそれぞれ20万円です。毎月手元に残るお金はほとんどありません。このまま借金を返していくのは難しい状況ですが、住宅だけはどうしても手放したくありません。大河原さんはどうしたらいいか困ってしまい、とりあえず弁護士会の法律相談センターに相談に行ってみることにしました。

伊達弁護士との面談

当日の担当は伊達弁護士でした。大河原さんは伊達弁護士に状況を説明しました。

伊 達 「借金をなくすには、破産と民事再生という方法があります。破産の場合は、基本的には全ての借金をなくすことができますが、自宅は手放さなくてはなりません。民事再生の場合は、住宅ローンはそのまま支払い続けなければなりませんが、住宅ローン以外の借金を少なくすることができ、自宅も手放さなくてすみます。」
大河原さん 「民事再生の場合は、自宅を残すことができるのですね。」
伊 達 「はい。ただし、ご自宅に、住宅ローン以外の抵当権が付いていないことなどの一定の要件が必要になりますが、大河原さんの場合はどうですか。」
大河原さん 「住宅ローン以外の抵当権は付いていないと思います。」
伊 達 「あと大河原さんは、競馬で作った借金があるんですよね。破産の場合には、ギャンブル等で作った借金がある場合には、借金をなくすことが認められない場合もありますが、民事再生の場合にはそのようなことはありません。」
大河原さん 「自宅を残せるならば、民事再生の手続きをとりたいです。具体的にはどのような手続きなのですか。」
伊 達 「はい。住宅を残す場合は住宅ローンについてはその全額、その他の借金については、その一部を原則3年間で返済していきます。ただし、民事再生の場合、一定期間継続して支払っていけるだけの収入の見込みがなければなりません。大河原さんの場合は、給料はこれからも定期的に入ってくるということで間違いありませんか。」
大河原さん 「今後も給料は入ってきますし、これ以上下がることはないと思います。住宅ローン以外の借金については、具体的には、どのくらい返済していく必要があるのですか。」
伊 達 「民事再生には、主に小規模な個人事業主を対象とする小規模個人再生という手続と、サラリーマンを対象とする給与所得者等再生という手続があります。大河原さんのようなサラリーマンであっても、小規模個人再生手続を利用することはできます。こちらの手続の方が返済する金額は通常少なくなりますので、今後の生活のことを考えると、こちらの手続を検討するのがよいでしょう。大河原さんの場合、住宅以外に高価な財産もありませんので、返済する金額は100万円になります。これを3年間で返済することになりますので、1か月の返済は約28,000円になります。」
大河原さん 「その金額なら返済していけそうです。それでは、小規模個人再生の手続をお願いします。」
伊 達 「分かりました。それでは、借り入れの金額や財産、収入、支出に関する資料を集める必要がありますので、用意をお願いします。また、私が債権者に民事再生手続を行う旨を通知します。住宅ローンはそのまま支払うようにしますが、消費者金融への支払いは止めてください。」
大河原さん 「分かりました。」

事件の経過

二週間後資料が揃い、伊達弁護士は小規模個人再生の手続を仙台地裁に申し立てその二週間後、裁判所から民事再生手続の開始決定が出された。

伊 達 「裁判所から民事再生手続の開始決定とともに、積み立ての勧告が出されています。勧告に従って毎月28,000円を積み立ててください。これから、債権者から債権の届け出がなされて、債権の金額を確定する手続があります。その後、再生計画案と言って法律の要件に従って返済の計画の案を作成し、裁判所に提出します。その案に、債権者の過半数かつ金額の二分の1以上の同意がえられれば可決となり裁判所の認可を受けて確定すると、その内容で借金を返済すればよいこととなります。」
大河原さん 「そうなんですね。債権者は同意してくれるでしょうか。」
伊 達 「法律の要件に従っていれば、基本的には反対はしないはずです。また、反対の意見が述べられなければ同意したものとみなされます。」

その後伊達弁護士は再生計画案を提出し、再生計画について債権者から反対の意見は出されず、裁判所から認可の決定が出され、異議申し立て期間を経て再生計画は確定した。

伊 達 「無事に再生計画が可決され、認可の決定も確定しました。後は再生計画に従って返済すればよいことになります。きちんと返済していってくださいね。」
大河原さん 「しっかりと返済していきたいと思います。これで生活がずいぶんと楽になります。本当にありがとうございました。」

ワンポイントアドバイス

破産や民事再生等の債務整理手続については、借金がある程度大きくなってからご相談にいらっしゃる場合が多いように思われます。けれども借金が大きくなりすぎないうちに、早めにご相談いただければ、適切な解決方法をご提示できる場合もありますので、ぜひお気軽にご相談下さい。

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刑事事件・加害者編 ~古川さんのケース~

事件の概要

古川さん(40代・男性)が,ある晩,職場の同僚数人でお酒を飲み,とある繁華街の路地を歩いていると,自分の肩が,前から来た男性の肩に,すれ違いざまに軽くぶつかりました。古川さんは特に気にせずに立ち去ろうとしたのですが,相手の男性は「おい,人にぶつかっといて謝りもしねえのか!」などと悪態をついてきました。どうやら相手男性も相当お酒を飲んでいる様子でした。
古川さんは,余りこの男性と関わりたくないと思い,「ああ,すいませんね。」と言い捨てて,その場を立ち去ろうとしたのですが,男性が「そんな謝り方があるか!おい,逃げるのかこの野郎!」など更に悪態をついたので,お酒の勢いもあってか,古川さんもカッとなって,つい男性の顔を拳で一発殴ってしまいました。
すると,相手男性は,酔っていたせいもあり,バランスを崩して路上に転倒し,頭を強く打って,頭から血が大量に流れました。これを見ていた周囲の人が警察への連絡と救急車の手配をしたため,近くの交番から警察官が駆けつました。
古川さんは交番に連れて行かれて警察官から事情を聞かれ,その日は家に帰されたのですが,後日また警察署に呼ばれて任意の取調べを受けました。この後の処分がどうなるのかが心配になった古川さんは,後日,仙台弁護士会の法律相談に来てみました。
なお,後日の取調べで警察官から聞いたところによると,相手男性は頭に切り傷を負い,何針か縫うケガをしたようですが,命に別状はなく,後遺症もないそうです。

伊達弁護士との面談

古川さん 「いま,警察から任意で取調べを受けているところなんですが,私はいずれ逮捕されてしまうのでしょうか?」
伊  達 「事案の重さや捜査の進み具合次第ですので,何とも言えませんが,現時点で在宅のまま捜査が進んでいることからすれば,警察は古川さんが逃げたり,証拠を隠したりすることはないだろうと判断しているはずです。そうすると,今後逮捕される可能性もそれほど高くないと思います。」
古川さん 「では,今回はこのまま刑事事件にはならずに終わるということですか?」
伊  達 「そうとは限りません。在宅のまま捜査が進められて,起訴される(裁判にかけられる)こともあります。起訴されるかどうかは事案によりけりですが。ちなみに,古川さんは今までに警察に逮捕されたり,刑事裁判にかけられたりしたことはありますか?」
古川さん 「いいえ…まあ,スピード違反とか駐車禁止違反で切符を切られたことはありますが,それ以外はないですね。」
伊  達 「そうですか。それでしたら,相手方との間で示談が成立し,被害届を取り下げてもらえれば,不起訴といって,裁判まで行かずに事件が終わる可能性が高いと思います。」
古川さん 「その示談というのは,私が自分でもできるのですか?」
伊  達 「もちろん,相手方が話し合いに応じてくれれば,古川さんご自身でもできるのですが,まず,加害者自身が被害者に連絡を取ろうとして警察に問い合わせたとしても,被害者が仕返しを恐れている,直接連絡を取りたくない・連絡先を知られたくないと言っている等の理由で,連絡先を教えてもらえない場合も多々あります。
また,慰謝料をはじめ損害の額が問題となった場合などは,一般の方が自分で被害者と交渉しても,どれ位の金額が適切なのか分からなかったり,交渉の進め方がうまく行かなかったりすることも考えられます。
それに,示談交渉がまとまったとしても,示談書を法的に有効な形式で作成したり,検察官に対して不起訴が相当である旨の意見書を提出したりする必要がありますので,弁護士にご依頼いただいた方が何かとスムーズに行くかと思います。」
古川さん 「そうですか。いろいろ難しいんですね。ちなみに,私の場合,国選弁護人って付けられないんですか。」
伊  達 「訴される前の段階では,国選弁護人は,勾留(こうりゅう)されて身柄を拘束されていないと付けられない,と刑事訴訟法で決められているんです。古川さんの案件で弁護士に依頼するなら,私選弁護人として依頼するしかありませんね。」
古川さん 「~ん,そうですか…。分かりました。それでは伊達先生にお願いしたいと思いますので,よろしくお願いします。」

事件の経過

伊達弁護士は,さっそく所管の警察署に電話し,事件についての詳細を聞くとともに,警察官に対し,被害者の連絡先を教えてくれないか,と打診した。
警察官が被害者の意向を確認したところ,「被害者から,加害者本人には教えて欲しくないが,弁護士限りであれば教えても良い。」との回答があったため,伊達弁護士は警察から被害者の連絡先を教えてもらい,被害者と直接に交渉することにした。
伊達弁護士が被害者と話したところ,被害者は,「自分が酔っていたせいで古川さんに絡んでいったところは,自分にも非がないわけではないが,頭を数針縫うケガをしているので,まず治療費は払って欲しい。それに,今回の事件で痛い思いや恐い思いもさせられたのだから,それなりの額の慰謝料も請求したい。慰謝料の金額次第では,被害届を取り下げてもいい。」との回答を得た。
そこで,伊達弁護士は,被害者から病院の領収書の写しをもらって治療費の総額を確認するとともに,同種の事件でどの程度の金額の慰謝料が支払われているのかを調査した上で,今回の事件で妥当と思われる示談金の金額を古川さんに提案した。
古川さんもその案であれば問題ないとの意向を示したので,伊達弁護士がその案を相手方に提示したところ,相手方からもその金額であれば示談に応じる旨の回答を得た。
そこで,伊達弁護士は,被害届の取り下げや宥恕(ゆうじょ:許す,厳しい処罰を求めない,という意味)文言を含めた示談書を作成し,被害者との間で署名押印を行った上で,被害者に示談金を渡した。
伊達弁護士は,この示談書とともに,不起訴が相当である旨の意見書を検察庁の担当検察官に提出した。
その後,古川さんはもう一度,検察庁に任意の取調べに呼ばれたが,その後1週間ほどで不起訴に決まったとの連絡が届いた。

ワンポイントアドバイス

今回は在宅事件(逮捕されずに捜査が進む事件)の一例をご紹介しましたが,刑事事件は身柄事件(逮捕・勾留されて警察に身柄を拘束されて捜査する事件)の場合もあります。
身柄事件の場合は,「当番弁護士」といって,仙台弁護士会から24時間以内に弁護士が1回,無料で警察署に接見に駆けつける制度があります。当番弁護士の詳しいことについてはこちらのページをご覧下さい。
特に,捜査の初動の時期は,逮捕された被疑者は,黙秘権や供述調書の何たるかも十分に理解しないまま,孤立した中で捜査官の取調べに圧され,真実と違う内容の自白調書を取られてしまうこともしばしばあるため,なるべく早い段階で弁護士のアドバイスを受けることが重要です。
当番弁護士としての出動は初回1回のみですが,出動した弁護士に対し,その後の弁護活動を私選で依頼することも可能ですし,金銭的余裕がない場合(かつ,勾留されている場合)には,被疑者国選や被疑者援助といった制度を使って,国や弁護士会に弁護費用を払ってもらいながら弁護活動を依頼することも可能です。
被疑者本人以外にも,ご家族やご友人でも当番弁護士を要請できますので,まずは専用電話 022-214-1054(トウバンベンゴシ)にご連絡下さい。24時間受付をしています。

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子どものいじめ編~美里さんのケース

事件の概要

  1. 美里さんは、宮城県内の中学校に通う中学2年生で、両親と3人で暮らしています。
    美里さんは、1年生の頃から同じクラスのAさんを中心とする2、3人のグループで一緒に遊んでいましたが、今年の6月頃から同じクラスのBさんらと話すことが多くなっていきました。すると、Aさんから「裏切った。」などと言われるようになりました。
  2. 7月頃には、席を離れている間に机の中の物が隠されていたり、外靴の紐が解かれていることが度々ありました。はじめのうちは誰も現場を見ていないようでしたが、ある日、近くの席の子からAさんがいたずらをしているのを見たと教えてもらいました。
    そこで、美里さんは、Aさんに対して、「物を隠すなどのいたずらはやめて欲しい。」と話したところ、Aさんは「そんなことはしていない。」「言いがかりを付けられた。」と言い、美里さんに対してLINEで悪口のメッセージを送ってくるようになりました。
    さらに、Aさんは、周囲に対して、美里さんの悪口を言いふらしたり、美里さんと仲良くしたらクラスで仲間外しをするなどと話していたようで、美里さんは、仲良くしていたBさんらからも次第に距離を置かれるようになりました。美里さんは、こんなことになったのは自分が悪いのかもしれないし、自分のことで周囲に迷惑をかけたくないとも思い、誰にも相談することが出来ませんでした。
  3. 9月、美里さんが学校から帰宅すると、美里さん宛にAさんやAさんのグループの子らから「嘘つき。」「もう学校に来るな。」などのLINEのメッセージが一斉に送られてきました。
    美里さんはメッセージを見ながら真っ青になっていると、そばで様子を見ていた母親からスマートフォンを取り上げられ、Aさんとのこれまでの経緯を知られてしまいました。
    美里さんは、Aさんとの問題を解決したいと願う一方で、Aさんからの報復も恐れていました。そこで、美里さんの母親は、仙台弁護士会の「子どもの相談窓口」に電話で相談することにしました。

伊達弁護士との相談

  1. 美里さんの母親が仙台弁護士会の法律相談センターに電話したところ、相談窓口の担当者として紹介されたのは、伊達弁護士でした。
    伊達弁護士は、母親の話を聞き、事件の方針を決めるにあたっては、美里さんの意向を直接確認する必要があると考え、後日美里さんを同席の上で面談を行うことにしました。
  2. 美里さんは、面談の中で、伊達弁護士に対して、Aさんのことは怖いと思っているが、転校はしたくないし、これ以上おおごとにしたくないと思っている旨を話しました。
    美里さんの意向を踏まえ、伊達弁護士は、調整役として学校にも関与してもらいながら慎重に問題の解決を図る必要があると考え、この件を受任することにしました。

伊達弁護士の活動

  1. 伊達弁護士が両親とともに学校を訪問したところ、学校側では、校長、学年主任、担任が対応しました。
    伊達弁護士は、美里さんから聴取した事実の概要を説明した上で、学校側に対し、事実関係を詳しく調査していただくよう依頼しました。
    その後、学校側から伊達弁護士に対して連絡があり、事実関係を確認したところ、Aさんらは美里さんに対する一連の行為を行ったことを認めたとのことでした。そして、Aさんは、グループを外れるような美里さんの態度が気に入らなくてやってしまったと話し、グループのほかの子らは、Aさんに指示されてAさんに荷担したと話していたとの報告を受けました。
    伊達弁護士は、学校側からの報告を踏まえて美里さん及び両親と打ち合わせを行いました。その結果、本件を解決するにあたっては、Aさん側と話し合う場が必要であると考えるに至りました。そこで、伊達弁護士は、学校側に対して、Aさんの両親と話し合う場を設けてもらうよう依頼しました。
    学校側からの報告を受けて、Aさんの両親からも謝罪したいとの申し出があり、後日、美里さんの両親とAさんの両親が学校で話し合う場が設けられました。
  2. 話合いの場では、まず、学校側から、改めて本件の事実関係について調査結果の報告がなされ、その後、Aさんの両親から美里さんの両親に対して謝罪がなされました。
    そして、美里さんの両親から、Aさんらに対してこれ以上嫌がらせをしないことを約束してもらえれば他には何も望んでいないという美里さんの意向を伝えたところ、Aさんの両親からは、同じようなことをしないようAに対して家庭内で指導していくとの意向が示されました。
  3. また、学校側からは、今後の方針として、AさんのほかAさんに加担した子らについても両親に報告するとともに、学校からも個別に指導すること、美里さんの意向を踏まえて3年生に進級するまではクラス替えはせず、席を近くにしないなどの措置で対処する予定であるなどの方針が示されました。
    さらに、学校側では、本件について学年の教師全員に周知して美里さんとAさんらの動向を特に注意するとともに、一般的な教育指導として、自分自身やクラスの子が困っているときには先生や親にすぐに知らせるよう生徒全体に改めて周知するなどの対策を講じる予定であることが説明されました。
  4. 美里さんは、両親同士の話合いがなされるまでは学校を休むことにしていましたが、話合いの後、伊達弁護士や両親からの報告を受けて、Aさんからの報復の恐れがなさそうであることが分かり、様子を見ながら、また学校に通うようになっていきました。
    Aさん側との間で話合いがなされ、学校側にはさらなるトラブルを防止するための対策を講じてもらう見込みとなったため、伊達弁護士は、その職務を終えることとなりました。

ワンポイントアドバイス

加害生徒側が学校の調査の中で加害行為を否定したり、加害生徒の親が事件の解決に向けて協力的でない場合には、被害生徒本人の意向を確認しながら、民事調停やADRで話合いをすることも考えられます。
また、そもそも学校側から事実関係の調査に協力してもらえない場合には、教育委員会に対して協力を求めることも方法の1つです。
最初は些細な出来事であっても、重大な事件に発展してしまうこともありますので、早期に対応することが重要です。
子ども相談窓口では、被害生徒側、加害生徒側のどちらからのご相談も受け付けております。

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