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東日本大震災から2年を迎えての会長声明

2013年03月11日

 東日本大震災の発生から2年を迎えた。

この間,震災被害からの復旧・復興がある程度進んでいる地域がある一方で,現在でも仮設住宅等における生活を余儀なくされている被災者,様々な困難や先行きの見えない不安に悩まされ,いまだ生活再建に向けての一歩を踏み出すことができない被災者も数多くいる。また,現在でも復興計画が具体的に進行するに至っていない地域も少なくない。そのため,いまだ事業再建の見込みがつかない事業者が数多くいる。

被災者の生活再建,被災地の復興は全体として見れば緒についたばかりであると言わざるを得ない。

 震災発生後,当会は被災者の救済に向けて最大限支援する旨を宣言するとともに,「人間の復興」の基本視座のもと,被災者一人一人が立ち直るための支援活動を続けてきた。

当会は,法的支援を必要とする被災者のニーズにこたえるべく,震災直後から,無料電話相談や県内全域にわたる無料巡回相談を実施し,約1年の間に,合計1万7000件を超える相談に対応してきた。さらに,平成24年4月以降も,東日本大震災被災者援助特例法のもと,当会法律相談センターにおいて合計5794件もの無料法律相談を実施してきた(平成25年2月末日時点)。石巻・気仙沼の各法律相談センターでは,平成23年に引き続き,平成24年以降も現在に至るまで相談日を通常以上に増加して対応したほか,南三陸・東松島・山元に開設された法テラス臨時出張所にも土日を含め相談担当弁護士を派遣した。

また,簡易迅速な紛争解決制度を構築すべく震災直後に創設した震災ADR制度も,利用件数は486件に及び(平成25年3月8日現在),震災に関連する多数の紛争を短期間で解決に導くことができた。

当会は,今後も引き続き,法律相談や震災ADR等を通じて,被災者に対する法的支援を継続していく所存である。

 また,当会は,被災者の救済,被災地の復興に向け,震災から2年目にあたるこの1年の間にも,様々な提言や意見表明を行ってきた。

防災集団移転促進事業における被災宅地買取に際しての抵当権抹消の手続の整備は,集団移転を円滑に行う為に不可避の問題であったが,当会による提言から間もなく,県内自治体の手続も整備されるに至った。本手続の整備に尽力された自治体及び金融機関等の関係各者に敬意を表するとともに,当会としても,複数の抵当権が設定されている被災宅地の権利関係の調整等,今後の集団移転の円滑な実施のために必要な法的支援の取り組みを惜しまない所存である。

また,今回の震災では,巨大津波による甚大な被害のみならず,地震による建物被害,宅地被害も深刻である。当会は,被災マンションの復旧・復興に向けての諸制度の創設,宅地被害者の救済のための支援制度の拡充等を提言したが,これらは,今回の震災からの復旧・復興のために必要であることはもとより,今後我が国において発生するかもしれない大規模災害に対する備えとしても,その制度化が急務である。

 今回の震災により生起した重大な問題の一つに,いわゆる二重ローン問題がある。

個人の二重ローン問題対策として制定された被災ローン減免制度(個人版私的整理ガイドライン)について,当会は,制度の運用改善や被災者への周知に向けて様々の取り組みを行ってきた。その結果,同制度は運用開始当初に比べ相当程度被災者救済に資する制度に改善され,また,最近では金融機関をはじめ関係機関も周知に積極的に取り組むようになり,同制度の利用者も増加してきている。しかし,同制度の利用を希望したにもかかわらず,要件との関係で利用が認められない被災者も少なくない。救済範囲の拡大等,さらなる運用改善が求められる。

また,事業者の二重ローン問題対策として,東日本大震災事業者再生支援機構及び産業復興機構がそれぞれ設立され,被災事業者の相談,債権買取等を通じた事業再建支援を行っている。支援件数は近時増加しつつあるが,いまだ震災の影響による過大な債務負担が事業再建の妨げとなっている事業者は少なくない。被災地の復興・再活性化のためにも,さらなる柔軟かつ弾力的な運用が求められる。

 このほかにも,まちづくりに向けた被災住民へのサポート,原発事故の被害に対する賠償問題など復旧・復興に向けた課題は数多く残されている。

東日本大震災から2年を迎える本日,当会は,改めて被災者及び被災地に対する支援の一層の充実を関係諸機関に求めるとともに,自らも,「人間の復興」の基本視座のもと,被災者の声に真摯に耳を傾け,被災者の生活再建や被災地の復興に向けた支援活動にこれまで以上に邁進する決意であることをここに表明する。

2013年(平成25年)3月11日

仙 台 弁 護 士 会   

会 長  髙 橋 春 男

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