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特定秘密保護法案の制定に強く反対する会長声明

2013年10月18日

 政府は,本年10月15日に開会した臨時国会における特定秘密の保護に関する法律案(以下,「本法案」という。)の提出及びその成立を目指している。従来,当会は秘密保護法制の問題点を指摘してきたが,本法案にも,看過できない重大な問題が存する。

 本来,国政に関する情報は主権者である国民に提供されるのが原則であるところ,現状,情報公開は不十分である。また,秘密の保護については既に国家公務員法や自衛隊法,MDA秘密保護法(日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法)等によって秘密漏えい行為に対する罰則が設けられており,過去の秘密漏えい事案にしても情報管理システムの適正化や情報保全教育により防止できたものである。

 かかる状況に加え,以下に述べる具体的問題点からは,本法案は,弊害のみ多く,特定秘密保護の名の下に国民が知るべき情報を秘匿し,ひいては国民主権を後退させかねない危険をはらむものであることから,当会はその提出及び制定に強く反対するものである。

 第一に,「特定秘密」の範囲が,「防衛」「外交」「特定有害活動の防止」,「テロリズムの防止」と広範かつ不明確であり,本来秘密として保護すべき必要性のない情報までもが「特定秘密」として保護される危険性がある。

 この点,本法案は,「特定秘密」の指定等の統一的な運用基準について有識者の意見を聴かなければならない旨規定するが(法案第18条2項),これは,「特定秘密」指定の統一基準について意見を述べるにとどまり,個々の秘密の内容をチェックする権能を有さない。また,本法案は,「特定秘密」の指定を30年を超えて延長する場合には内閣の承認を必要とする旨規定するが(法案第4条3項),行政権力の恣意により秘密を維持する危険性があることに変わりはなく,また事実上30年間は「特定秘密」の指定を維持できることを認めることにほかならないのであって,問題点はなんら解消されていない。

 第二に,「特定秘密」の範囲が広範かつ不明確であるとともに,故意の漏えい行為にとどまらず,過失による漏えい行為のほか,漏えい行為の未遂,共謀,教唆及び扇動,並びに「特定秘密」の取得行為(特定秘密の管理侵害行為)とその行為の未遂,共謀,教唆及び扇動についても処罰しようとしている(法案第22条ないし第26条)。これは,犯罪と刑罰を法律により具体的かつ明確に規定しなければならないという罪刑法定主義(憲法第31条)の観点から重大な疑義が存し,取材活動の萎縮や知る権利に対する制約をもたらす。

 この点,本法案は,「知る権利の保障に資する報道の自由又は取材の自由に十分に配慮」する旨規定する(法案第21条1項)。しかし,判例上,報道の自由が憲法第21条の保障のもとにあることは確立されており,また,取材の自由も憲法第21条の趣旨に照らし十分尊重に値するものとされているのであるから,改めてその文言を規定する実益は乏しい。また,本法案は,取材行為について「専ら公益を図る目的を有し,かつ,法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは,これを正当な業務による行為とする」と規定するが(法案第21条2項),「著しく不当」の意味内容が漠然不明確であり,濫用防止効果には疑義がある。このように,知る権利や報道の自由,取材の自由について配慮規定が置かれたとしても,取材活動などの国民の自由に対して深刻な萎縮効果を与える懸念は全くぬぐい去れない。

 第三に,本法案では,国会議員への特定秘密の提供は行政機関の長等の裁量に委ねられており,提供するための条件も政令で定めるとされている(法案第10条)。加えて,特定秘密を漏えいした国会議員も処罰(過失も含む)の対象としており(法案第22条2項,3項,5項,第10条1項1号イ),国会議員が秘密の委員会や調査会で知得した「特定秘密」に係る情報を他の議員等に知らせることができなくなってしまう。これは,国会や国会議員が行政機関のコントロール下にあるに等しく,議会制民主主義の否定ともいうべき大問題である。

 第四に,特定秘密を取扱う者を選別する適性評価制度は,特定有害活動及びテロリズムとの関係,犯罪・懲戒歴や薬物の乱用又は影響に関する事項,精神疾患に関する事項,飲酒についての節度に関する事項,信用状態等といった機微にわたるプライバシー情報を調査するとともに(法案第12条2項),本人の友人等についてまで調査するおそれがあり,プライバシーを侵害する危険がある。

 上記問題点に加え,政府が本法案の提出に先だって実施したパブリックコメントにおいては,わずか2週間の間に9万件を超える意見が寄せられ,そのうちの実に4分の3以上となる約77%が法案に反対している点も重く捉えられるべきである。

 以上の理由から,本法案は国会に提出されるべきではなく,当会は本法案の制定に強く反対する。

2013年(平成25年)10月18日

                     仙 台 弁 護 士 会

                       会長  内 田 正 之

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