公証事務は、法的紛争を未然に防止するという重要な役割を持っており、特に公正証書は、土地や建物の売買、賃貸借、金銭消費貸借などの契約に関して作成されるほか、遺言、離婚や任意後見契約などでも多く利用されている。
このような重要な役割を有する公証事務は、全ての地域の市民が等しく利用することができなければならない。
そこで、公証人法第8条は、法務局支局等の管轄区域内に公証人がいない場合、法務大臣は、当該法務局支局等に勤務する法務事務官に公証人の職務を行わせることができると規定している。
現在、仙台法務局気仙沼支局をはじめとする全国10か所の法務局支局で公証事務が取り扱われているところ、2020年から現在までの間に4カ所の法務局支局(旭川地方法務局留萌支局、秋田地方法務局本荘支局、同大曲支局及び福井地方法務局小浜支局)での公証事務の取扱いが廃止された。さらに、長野地方法務局飯山支局及び同大町支局における公証事務の取扱いが廃止される見込みとのことである。このように全国的に公証事務の取扱いの廃止が進んでいる。
しかし、公証事務が市民の生活において重要な役割を果たしていることは前述のとおりである。仮に法務局支局での公証事務の取扱いの廃止がなされた場合、地域の市民はより遠方の公証役場等に赴かなければならなくなる。例えば仙台法務局気仙沼支局から最寄りの公証役場である一関公証役場ないし石巻公証役場までは、自動車で1時間ないし1時間30分、公共交通機関では2時間ないし3時間程度もの時間を要する。公証事務の取扱いの廃止は、地域の市民、特に交通弱者や高齢者の移動に係る時間的・経済的負担を著しく増大させ、市民のアクセスを著しく阻害するものであり、許されない。
この点、改正公証人法の施行により、2025年10月からウェブ会議を利用することなどにより、公証役場や法務局支局に赴かなくても公正証書の作成などを行うことが可能になった。
しかし、公正証書の作成などの公証事務の利用を希望する市民の中には、インターネットやウェブ会議の利用方法がわからない又は利用が不得意な方もおり、申請に必要な電子署名の取得が難しい方もいる。高齢者による遺言公正証書や任意後見契約公正証書の作成など判断能力の有無や第三者による発言の誘導などがないかを直接公証人が面談して確認することが適切な場合もある。そもそも、保証人の作成する保証意思宣明公正証書のように、ウェブ会議による作成ができない公正証書もあるし、今後も高齢者や消費者等の保護の要請から、新たな公証事務が創設される可能性がある。
ウェブ会議等の手続のオンライン化は、手続の利便性を向上させるためにあるもので、ウェブ会議の利用が可能になったからといって、公正証書の作成などができる場所が減っても構わないということにはならない。
よって、当会は、現在公証事務を取り扱っている法務局支局において、今後も公証事務の取扱いを存続させることを求める。
2026年(令和8年)1月9日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 千 葉 晃 平
















