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国選弁護人等の交通費等に関する意見書

2023年11月16日

国選弁護人等の交通費等に関する意見書

2023年11月16日

法務大臣 小  泉  龍  司 殿
日本司法支援センター理事長 丸  島  俊  介 殿

仙 台 弁 護 士 会

会長 野  呂   圭

第1 意見の趣旨
 1 刑事事件や少年保護事件において、国選弁護人や国選付添人(以下「国選弁護人等」という。)がその活動として刑事施設や留置施設、少年鑑別所等へ移動した際に支出した交通費(自家用車の場合の燃料費を含む。)の支給に関する国選弁護人の事務に関する契約約款別紙報酬及び費用の算定基準第32条及び国選付添人の事務に関する契約約款別紙報酬及び費用の算定基準第20条を改正し、移動の目的地である刑事施設、留置施設及び少年鑑別所等までの移動距離にかかわらず、移動のために要した交通費を当該弁護士に支給すること。
 2 遠距離移動について定めた国選弁護人の事務に関する契約約款別紙報酬及び費用の算定基準第27条第1項及び国選付添人の事務に関する契約約款別紙報酬及び費用の算定基準第14条第1項を改正し、「最も経済的な通常の経路及び方法によって移動した場合に片道25キロメートル以上となる移動」を遠距離移動として、遠距離接見等加算報酬の対象とすること。
また、この改正に伴い、国選弁護人の事務に関する契約約款別紙報酬及び費用の算定基準第27条第2項及び国選付添人の事務に関する契約約款別紙報酬及び費用の算定基準第14条第2項所定の各号を以下のとおり改正すること。
  一 最も経済的な通常の経路及び方法によって移動した場合に片道25キロメートル以上50キロメートル未
  満のとき 4000円
  二 最も経済的な通常の経路及び方法によって移動した場合に片道50キロメートル以上のとき 8000円

第2 意見の理由
 1 国選弁護人等の交通費についての定め
 国選弁護人の事務に関する契約約款(以下「約款」という。)第14条は、国選弁護人に支給する費用については別紙報酬及び費用の算定基準(以下「算定基準」という。)の定めるところによると規定している。そして、算定基準第32条第1項は、国選弁護人が被疑者・被告人との接見のために刑事施設、留置施設又は少年鑑別所(以下「刑事施設等」という。)まで移動した場合、その移動が「遠距離移動」に該当しなければ、交通費(自家用車で移動した場合の燃料費を含む。以下同じ。)は支給されない旨定めている。
 「遠距離移動」とは、①最寄簡裁と刑事施設等との直線距離が片道25㎞以上となる移動、又は②当該直線距離が片道25㎞未満であって、最寄簡裁から刑事施設等まで最も経済的な通常の経路及び方法によって移動した場合に片道50㎞以上となる移動とされている(算定基準第27条第1項)。
 国選付添人の交通費についても、国選付添人の事務に関する契約約款によって、国選弁護人の場合と同様の定めがなされている。
 2 宮城県内の遠距離移動の対象とならない刑事施設等(仙台簡易裁判所基点)
 宮城県内には、刑事施設が4施設(宮城刑務所、仙台拘置支所、石巻拘置支所及び古川拘置支所)、留置施設が25施設、少年鑑別所が1施設(仙台少年鑑別所)設置されている。このうち、法律事務所が付近に集中している仙台簡易裁判所を最寄簡裁とした場合、算定基準により交通費が支給されない刑事施設等は、宮城刑務所及び仙台拘置支所の2刑事施設、仙台中央警察署、仙台南警察署、仙台北警察署、仙台東警察署、若林警察署、泉警察署、塩釜警察署、岩沼警察署、大和警察署、大河原警察署及び亘理警察署の11留置施設並びに仙台少年鑑別所1施設である。
 3 意見の趣旨第1項について
 前記2で挙げた遠距離移動の対象とならない刑事施設等のうち、以下の3施設については、公共交通機関及びタクシーを利用した場合に片道950円以上かかる交通費を、国選弁護人等が刑事施設等へ移動するたびに自己負担しなければならない。ちなみに、片道950円が著しく高額であることは、大宮駅-新宿駅(JR埼京線、片道490円)、霞ヶ関駅-横浜駅(東京メトロ、JR東海道本線、片道670円)、霞ヶ関駅-千葉駅(東京メトロ、JR総武線、片道840円)と比較すれば明らかである。
 ① 大和警察署(黒川郡大和町吉田字北谷地27-1)は、仙台簡裁からの直線距離は約20㎞であるが(自家用車を利用した場合の移動距離は約21.9㎞、有料道路利用の場合は約32.9㎞)、公共交通機関はバスしかなく、バスを利用すると最寄のバス停までの所要時間は片道約1時間、運賃は片道950円かかる。
 ② 大河原警察署(柴田郡大河原町字小島21番地8)は、仙台簡裁からの直線距離は約24.2㎞であるが(自家用車を利用した場合の移動距離は約32.4㎞、有料道路利用の場合は約33.6㎞)、JR東北本線(仙台-大河原間)だけでも片道所要時間35分、運賃は590円かかる上、大河原駅から大河原警察署までも約2.4㎞の距離があり、公共交通機関も不便であるため、タクシーを利用せざるを得ない。
 ③ 亘理警察署(亘理郡亘理町字旧舘61-21)は、仙台簡裁からの直線距離は約24.8㎞であるが(自家用車を利用した場合の距離は約27.4㎞、有料道路利用の場合は約33.5㎞)、JR常磐線(仙台-亘理間)だけでも片道所要時間30分、運賃は510円かかる上、亘理駅から亘理警察署までも約1.6㎞の距離があり、公共交通機関も不便であるため、タクシーを利用せざるを得ない。
 上記3留置施設以外にも、仙台簡裁を最寄簡裁とした場合、仙台中央警察署を除く全ての刑事施設等は地下鉄及びJR等の公共交通機関や自家用車を利用しないと移動できない場所にある。その中には、片道運賃が300円を超えるところもある(若林警察署、泉警察署、塩釜警察署、岩沼警察署)。
 また、最寄の駅から刑事施設等まで1㎞以上離れた刑事施設等もあるところ、刑事事件記録を持ちながら徒歩で移動するのは困難であるため、タクシーを利用せざるを得ない場所もある(岩沼警察署、宮城刑務所、仙台拘置支所、仙台少年鑑別所)。
 このように、国選弁護人等は、刑事施設等へ移動するたびに交通費を自己負担しなければならない。ただでさえ低廉な国選弁護人・国選付添人報酬 の下で奮闘している国選弁護人等に対し、その活動として行っている接見等のための交通費まで自己負担を強いるのは、明らかに理不尽である。
よって、国選弁護人等がその活動として刑事施設等へ移動した際に支出した交通費(自家用車の場合の燃料費を含む。)の支給算定基準について、速やかに、同施設等までの移動距離にかかわらず、日本司法支援センターが当該弁護士に支給するよう約款を改正すべきである。
 4 意見書の趣旨第2項について
 例えば、前記3で挙げた例のうち、大河原警察署は、仙台簡裁からの直線距離は約24.2㎞であるが、自家用車を利用した場合の移動距離は約32.4㎞である。しかし、直線距離を基準とする現在の算定基準の下では、「遠距離移動」に当たらず、遠距離接見等加算報酬も交通費も支給されない。このような現状は、前記3で述べたとおり、不合理であると言わざるを得ない。
 そもそも、目的地まで直線的に進行して到達することはほとんどの場合不可能であり、直線距離を基準とすること自体が交通実態を無視しており、合理性を見出せない。
 したがって、遠距離移動の対象については直線距離基準を廃止し、「最も経済的な通常の経路及び方法によって移動した場合に片道25キロメートル以上となる移動」を遠距離移動の対象にすべきである。また、これに伴い、遠距離接見等加算報酬の額を定めた国選弁護人の事務に関する契約約款別紙報酬及び費用の算定基準第27条第2項及び国選付添人の事務に関する契約約款別紙報酬及び費用の算定基準第14条第2項所定の各号も以下のとおり改正すべきである。
  一 最も経済的な通常の経路及び方法によって移動した場合に片道25キロメートル以上50キロメートル未
    満のとき 4000円
  二 最も経済的な通常の経路及び方法によって移動した場合に片道50キロメートル以上のとき 8000円

以上

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