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令和6年能登半島地震及び奥能登豪雨災害における応急仮設住宅供与期間に関する取扱いの是正と適切な期間の延長等を求める会長声明

2025年02月18日

令和6年能登半島地震及び奥能登豪雨災害における応急仮設住宅供与期間に関する取扱いの是正と適切な期間の延長等を求める会長声明

1 令和6年1月に発生した能登半島地震及び同年9月に発生した奥能登豪雨に関し、石川県は、いずれの災害に関しても、いわゆる応急仮設住宅(建設型・賃貸型)の供与期間として、災害時に持ち家に居住していた被災者については入居日から2年以内、災害時に賃貸住宅や公営住宅に居住していた被災者については入居日から1年以内とし、災害時の居住形態によって応急仮設住宅の供与期間について異なる取扱いをしている。
 この点、石川県は、上記取扱いをしつつ、「恒久的な住まいの確保やライフラインの復旧などの個々の事情を勘案し、適宜、仮設住宅の供与期間の延長等の判断を行います。」として、供与期間の延長の可能性を示唆しているものの、上記のような災害時の居住形態による異なる取扱いについて合理的な説明はなされていない。
 一見すると、災害時に持ち家だった被災者とそうでなかった被災者とでは、新たな住居確保に要する期間等に差異があるように思えるが、災害時における居住形態は各被災者において様々な事情があったに過ぎず、災害により住居を失って被災した点では同一であり、生活再建のための応急仮設住宅の供与期間について、異なる取扱いをすべき合理的理由を見出すことは困難というべきである。また、今般の上記各災害による被害の甚大さや賃貸住宅等の確保の困難さに鑑みれば、賃貸住宅や公営住宅に居住していた被災者に対し、供与期間を1年間とすることは、あまりに酷に過ぎるというべきである。
2 当会が経験したいわゆる東日本大震災において、多くの被災者が甚大な被害を受け、住居を失うこととなったが、その応急仮設住宅の供与期間においては、災害時の居住形態によって異なる取扱いはなされず、持ち家であった被災者とそうでなかった被災者とで等しく供与期間が設定され、都度延長がされながら、恒久的な住まいの確保まで応急仮設住宅で暮らしながら生活再建を模索してきた。苦しい状況にありながらも生活再建を目指す被災者に、国や自治体が災害時の居住形態の差異にかかわらず必要に応じた延長措置をとったことで、多くの被災者が安心して落ち着いて生活再建を図ってきたのである。
 東日本大震災と同様に、能登半島地震及び奥能登豪雨によって、多くの被災者が困難に直面している最中にあって、被災者が安心して落ち着いて生活再建を図ることができよう災害時の居住形態にかかわらず、供与期間に差異を設けず、適切な延長措置を講じることは、国や石川県の責務というべきである。
3 当会は、東日本大震災において、「人間の復興」を視座に被災者の生活再建支援活動をしてきたが、その背景には、被災者一人ひとりが、その個別事情に応じて等しく平等に人権が守られるべきであるという点がある。すなわち、わが国の憲法において、個人の尊厳、幸福追求権(憲法13条)、法の下の平等(憲法14条)、及び生存権(憲法25条)が規定されており、これら憲法が定める人権、平等原則は、災害時にこそ貫徹されるべきものである。
 しかるに、今般の能登半島地震及び奥能登豪雨災害において、災害時における居住形態によって、応急仮設住宅の供与期間に異なる取扱いがなされることは、本来的に享受されるべきはずの被災者の個人の尊厳、幸福追求権及び生存権をないがしろにし、平等原則にも反するものであって、到底承服できるものではない。
 また、上記各災害による被害は甚大なものであり、復旧・復興の進捗が芳しくない現状においては、復旧・復興に相当な期間を要することは明白である。そのため、被災者の生活再建には相当長期間を要することが予想され、被災者は先の見通しを立てることが困難な状況にある。かかる状況にあっては、被災者が安心して落ち着いて生活再建を図れるようにすることが肝要であり、生活基盤となる応急仮設住宅の供与期間についても、被災者が安心して先を見通せるように、災害時の居住形態によって差異を設けず、適切な延長措置がなされるべきである。そのため、国や石川県においては、応急仮設住宅の供与期間に関する現行の取扱を是正し、延長措置の情報を可能な限り公表することが被災者の生活再建に資するというべきであるし、被災者の人権保障のために、必要不可欠な措置というべきである。
4 以上から、当会は、国及び石川県に対し、以下のとおり、応急仮設住宅供与期間に関する取扱いの是正と適切な期間の延長等を強く求める。
(1)令和6年能登半島地震及び奥能登豪雨災害における応急仮設住宅の供与期間に関し、災害時に借家・公営住宅に居住していた被災者について入居日から1年以内とする取扱いを改め、災害時に持ち家に居住していた被災者と同様の供与期間とすべきである。
(2)令和6年能登半島地震及び奥能登豪雨災害における応急仮設住宅に入居する被災者に対し、恒久的な住まいが確保できるまで応急仮設住宅の供与期間を延長し、可能な限り速やかに延長に関する情報を公表すべきである。

2025年(令和7年)2月17日

仙 台 弁 護 士 会

会 長  藤 田 祐 子

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