アメリカによるベネズエラへの武力攻撃並びにベネズエラ大統領夫妻の拘束、アメリカへの連行及び収容に関し、日本政府に対して国際社会における法の支配の堅持に向けて責任のある役割を果たすよう求める会長声明
本年1月2日深夜から同月3日未明にかけて、アメリカ合衆国はベネズエラ・ボリバル共和国に対して武力攻撃を行い(以下「本件武力攻撃」という。)、同国のマドゥロ大統領夫妻を拘束し、アメリカへ連行し、刑事施設に収容した(以下「本件拘束等」という。)。ベネズエラ政府の発表によれば、本件武力攻撃により、ベネズエラ市民を含む少なくとも100人が死亡したという。
国際連合憲章は、加盟国に紛争の平和的解決を義務付け(2条3項、33条)、「すべての加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使は、いかなる国の領土の保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない。」と定めている(2条4項、武力行使禁止原則)。本件武力攻撃は、この国連憲章により禁止されている「武力の行使」に当たる。また、武力行使禁止原則の例外として自衛権の行使(同51条)及び安全保障理事会による軍事措置(同42条)が定められているが、ベネズエラはアメリカやその同盟国に武力行使をしていないし、国連安全保障理事会による軍事措置の決議もなされていないため、本件武力攻撃はこれらの例外には当たらない。
本件拘束等について、アメリカ政府は、マドゥロ大統領夫妻が麻薬テロやコカイン密輸に関与していることなどを理由に、アメリカ法執行機関と連携した旨の説明をしている。しかし、マドゥロ大統領夫妻が麻薬テロやコカイン密輸に関与していたか否かは明らかでない上、仮にそのような事実を前提にした場合であっても、そもそも他国の領域内で自国の逮捕状を執行することは、領域内の統治について他の権力から制約を受けないという意味での主権(対内主権、領域主権)の侵害であり、許されない。また、ベネズエラ国内がいかなる状況であっても、アメリカ政府がベネズエラの政治運営に関与するとなれば、これも外部権力の支配を受けずに意思決定を行う権限という意味での主権(対外主権)の侵害であり、許されない。
このように、本件武力攻撃及び本件拘束等は、国連憲章を始めとする国際法に反するものであり、国際法の規範性を弱め、法の支配を揺るがす重大な問題である。そればかりでなく、アメリカ政府は、本件武力攻撃及び本件拘束等の目的の一つとして、ベネズエラ領域内に埋蔵されている石油資源をアメリカの管理下に置くことを表明しているが、これは国際法に反してでも自国の利益を実現するという力による支配であって、許されない。
よって、当会は、日本政府に対して、国際社会における法の支配の確立を推し進める立場から、国際法に違反する違法な武力行使や主権侵害行為には毅然と対応し、国際社会における法の支配の堅持に向けて責任のある役割を果たすように求める。
2026年(令和8年)3月12日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 千 葉 晃 平
















