債権法改正に関するパブリックコメント手続の延期等を求める会長声明
平成21年11月24日より,法務省法制審議会民法(債権関係)部会において民法(債権法)の全面改正に向けての審議が行われており,近日中には,中間的な論点整理に関するいわゆるパブリックコメント手続が行われる予定となっている。
民法は,国民生活や企業の経済活動等に直結する極めて重要な基本法であるから,同法の改正を検討するにあたっては,広く国民や企業・各種団体等に意見を求め,慎重に検討する必要があり,とりわけ消費者・労働者・中小事業者などが理由のない不利益を蒙ることなく,公正で正義にかなうものでなければならないことは言うまでも無い。
しかしながら,平成23年3月11日に発生した東日本大震災では,東日本の太平洋沿岸部に壊滅的な被害を与え,被災地域は広範囲に及び,被災者も極めて多数にのぼり,いまだに被害全容も明らかになっておらず,被災地域の住民や企業・各種団体等はもとより,被災地域以外の地域でも震災後の対応に追われている。
しかも,今回の震災を契機に,これまでは想定されていなかったような民事上の紛争も多数起こりうるものと考えられる上,社会情勢の変動に伴い,従来支持されてきた見解の妥当性に疑義が生じる可能性もある。
かような状況にもかかわらず,拙速にパブリックコメント手続や審議を進めた場合,民法(債権法)改正に向けての検討に国民や企業・各種団体等の意見を適切にくみ取ることができず,国民生活の実態や社会情勢の変動を十分に反映した内容とはならない危惧すらあると言わざるを得ない。
よって,当会は,国に対し,今回の震災に伴う混乱状況が収束し,かつ,国民生活及び企業活動等が落ち着きを取り戻すまでの相当期間,少なくともパブリックコメント手続を延期すべきであり,あわせて,今回の震災の影響に十分に配慮した審議日程を組むことを求める。
2011(平成23)年4月8日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 森 山 博