生活保護世帯が受給する義援金等の収入認定に関する申し入れ
宮城県 御中
宮城県各福祉事務所 御中
宮城県各市福祉事務所 御中
仙台市 御中
仙台市各区保健福祉センター 御中
1 宮城県内において義援金、災害弔慰金、支援金、見舞金等(以下「義援金等」という)の給付が開始されるなか、福祉事務所によっては、①自立更生計画にまったく触れないまま、被保護世帯に対し、原則収入認定するから届け出るよう説明する、②被保護世帯による購入物品すべてに領収書の添付を求め、義援金受給額から領収書記載の合計額を控除した金員を収入認定する、③震災により直接被害を受けた物品以外の生活用品(衣服等)の補充を目的とする義援金等の利用を認めない、④将来の自立更生に向けた費用も自立更生計画に計上しうることを説明しない、などの運用が見られる。
2 この点、被保護世帯が義援金等を受領した場合につき、厚生労働省は、平成23年5月2日付厚生労働省社会・援護局保護課長「東日本大震災による被災者の生活保護の取扱いについて(その3)」(以下「厚労省5月2日付通知」という)において、当該被保護世帯の自立更生のために充てられる額を収入認定しないこととしたうえで、被保護世帯が自立更生のために充てられる費用を記載する自立更生計画の策定にあたっては、被災者の被災状況や意向を十分に配慮し、一律・機械的な取り扱いとならないよう留意すべきとしている。
そして、同通知は、震災後、緊急的に配分(支給)される義援金等については、当座の生活基盤の回復に充てられることや、一費目が低額で、かつ世帯員ごとに必要となる費目を個々に計上すると被保護世帯の負担が大きいことから、費目・金額を積み上げずに包括的に一定額を自立更生に充てられるものとして自立更生計画に計上して差し支えない、と述べ、義援金等を広く自立更生のために充てられる経費として認定するよう柔軟な取り扱いを求めている。
また、同通知には、被保護世帯の自立更生のために充てられる費用であれば、直ちに自立更生のための用途に供されるものでなくても、必要と認められる場合には自立更生計画に計上して差し支えないと述べられている。
3 義援金等は,そもそも被災世帯の生活基盤回復の補助,あるいは被災したことに対する補助等を目的とするものであるから、本来、収入認定にはなじまず,厚労省において収入認定しない取り扱いをすることが望ましいと考えられる。
この点、厚労省5月2日付通知は、義援金等を一律に収入認定しないとまで述べてはいないものの、被災者の被災状況や意向を十分に考慮し、包括的に一定額を計上する方式を認め、将来の自立に役立つ用途であれば当座に費消するものではなくても自立更生計画への計上を認めていることから明らかなとおり、各保護実施機関に対し、上記した義援金本来の目的に沿った運用を強く求めている。
4 したがって、宮城県及び県内保護実施機関におかれては、かかる厚労省5月2日付通知の趣旨を十分に尊重し、これに反する運用が認められる場合には迅速に是正すべきである。
特に、将来の自立に向けた費用の計上に関しては、今般の未曾有の大震災が被災地域の経済に与えた甚大な影響により、被災世帯が就労等により早期に保護から自立することが困難であることに鑑み、求職に必要な能力・資格等を得るための準備、高齢者の介護や看護に対する準備、葬祭関係等に対する準備など、当座に支出する費用でなくとも広く自立更生計画に計上することを認めるべきである。
2011(平成23)年9月7日
仙台弁護士会
会 長 森 山 博