被災事業者のための債権買取制度に関する会長声明
1 被災事業者が抱える二重債務問題について、今般ようやく、各県に設置される産業復興機構による債権買取制度と株式会社東日本大震災事業者再生支援機構(以下、「再生支援機構」)による債権買取制度の発足が決まった。
2 これらの制度それ自体は被災事業者の再生を支援するものとして評価されるべきであるが、その現実の運用にあたっては、支援対象や債権買取価格の算定方法等まだまだ不透明な部分が多い。
そこで、これら債権買取制度の本格的な運用開始にあたって、当会は以下のとおり要請する。
(1)まず、支援対象となる事業者について、両制度とも具体的な対象事業者の要件は明らかになっていないが、産業復興機構と再生支援機構が相互に補完し合い、広く被災事業者の救済が図られるよう、将来的に収支が黒字転換する可能性がある事業者であれば対象となるような柔軟かつ緩やかな要件を定めるべきである。特に被災事業者のなかには、震災以前から赤字となっていた企業等も少なくないが、そのことをもって直ちに支援対象から外れるなどといった運用は避けるよう求める。
(2)また、債権買取価格の算定方法についても、被災事業者の再生を最優先に考え、再生支援機構による算定方法策定にあたっては、先行する産業復興機構の算定方法に縛られることなく、広く被災事業者の救済が図られるよう、買取価格が過度に高額にならず、かつ金融機関等に買取申込みのインセンティブを与えるような基準を定めるべきである。
(3)次に、両制度に基づいて買取が行われた債権の処理についても、買取差額の債務免除を原則とすることに加え、事業内容に応じた長期の支払猶予や債権の劣後化等種々の方策を積極的に活用するなど、真に被災事業者の再生に資する運用を確立すべきである。
3 以上を踏まえて、債権買取制度について適切な運用が確立されるとしても、同制度について周知徹底がなされ、これを利用するための相談体制が十分に拡充されなければ、せっかくの制度が被災事業者に利用されず、結局のところその救済が実現されないことになりかねない。
そこで、債権買取制度については、各種マスコミ、ホームページ等を利用するのみならず、地元商工会議所、商工会や弁護士会、税理士会等関係機関と積極的に連携を行って、十分な広報活動を行うと同時に、同制度の利用を求める被災事業者の声に応えるべく各種相談窓口を広く設置することを求める。
4 当会は、従前の法律相談センターや法テラスでの法律相談の枠組みを利用・拡充するなどして、被災事業者の二重債務問題解消のために全力を尽くす決意である。
以 上
平成24年1月26日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 森 山 博