死刑執行に対する会長声明
2012(平成24)年9月27日,仙台拘置支所と福岡拘置所において,各1名合計2名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
死刑は,罪を犯した人の更生と社会復帰の観点から見たとき,その可能性を完全に奪うという問題点を内包している。また,わが国の刑事裁判においては,4つの死刑確定事件(免田事件,財田川事件,松山事件,島田事件)の再審無罪判決が確定し,死刑確定事件における誤判の存在が明らかとなっているが,誤判が生じるに至る刑事裁判の制度上・運用上の問題点は抜本的な改善がなされていない。
国際的にみても死刑廃止国は着実に増加し,現在の死刑廃止国(事実上の廃止国を含む)は141か国,死刑存置国は57か国であり,国際社会において死刑廃止が潮流となっていることは明らかである。1989(平成元)年12月の国連総会で死刑廃止条約が採択されて以来,国連の各種委員会からは,わが国に対して死刑廃止を求める決議や勧告が度々なされてきた。また,本年2月にも,欧州議会が,小川法務大臣を名指しして死刑の執行を行わないよう求める決議を採択していた。
当会は,これまで,政府に対して,死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間,死刑執行を停止するよう繰り返し要請してきた。
また,日弁連は,本年6月18日,滝実法務大臣に対し,「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し,死刑の執行を停止するとともに,死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を直ちに講じることを求める要請書」を提出して,国に対し,直ちに死刑の廃止について全社会的な議論を開始し,その議論の間,死刑の執行を停止することを改めて求めたところである。
それにもかかわらず,本年3回目の死刑執行が行われたものであり,当会はかような事態に対して深い憂慮の念を示すとともに,強く抗議するものである。
当会は,政府に対し,死刑制度が最も基本的な人権に関わる重大な問題であることに鑑み,死刑の執行を停止したうえで,死刑制度の存廃も含む抜本的な検討を行うことを重ねて強く要請するものである。
2012(平成24)年10月9日
仙台弁護士会会長 髙 橋 春 男