平成24年10月26日
仙台弁護士会会長 髙 橋 春 男
要 望 書
第1 要望の趣旨
防災集団移転促進事業において、被災者から被災宅地を買い取るにあたっては、関係規則及び運用を改正・改善するなどして、抵当権抹消の先履行を条件としない手続によって進めるよう、要望する。
第2 要望の理由
東日本大震災の被災地の集団移転の促進のため、金融機関が対象地の宅地に設定された抵当権抹消の特例措置を検討していることが、平成24年10月12日、13日に報道各社より報じられた。
防災集団移転促進事業の多くは、自治体が被災者から土地を買い取って、移転先に宅地を整備する方針であるが、抵当権の抹消を買取条件としていることから、抵当権の存在が障壁となっている。この点、住宅金融支援機構が抵当権放棄の方針を既に打ち出していたにもかかわらず、民間の金融機関は抵当権の抹消に消極的であったところ、今般、大きく方向転換をしたものであり、被災者の生活再建及び被災地の復興促進に資するものとして、歓迎すべき動きと評価される。
ところで、被災自治体の多くは、公有財産規則や財務規則上、公有財産を取得する場合は、所有者に抵当権を消滅させ、取得に支障のないようにすることと定め、また、一部の被災自治体では、公有財産規則上、市長が特にやむを得ないと認める場合のほか、予めこれを消滅させた後でなければ、これを取得してはならないと定めている。
他方、金融機関は、被災者である債務者からの債権回収の必要上、代金支払いに先立っての抵当権抹消に応じられないという状況にある。
その結果、金融機関が対象地の宅地に設定された抵当権抹消の方針を打ち出しているにもかかわらず、自治体の要請する抵当権抹消の先履行に応じられないため、現状においてもなお、抵当権の存在が自治体による宅地買取りの重大な障害となっている。
よって、当会は、被災自治体に対し、防災集団移転促進事業において被災者からの被災宅地の買取りが円滑に進められるように、被災宅地の買取りにあたり、抵当権抹消の先履行を条件としない手続で進められるよう、規則・運用を改正・改善するよう、要望する。
なお、上記問題を解決する上で、弁護士による法的な支援等が必要な場合は、当会としてはこれに全面的に協力する所存である。
以 上