平成25年7月16日、政府は法曹養成制度検討会議(以下「検討会議」という。)の意見等を踏まえ、「法曹養成制度改革の推進について」と題する法曹養成制度関係閣僚会議決定(以下「関係閣僚会議決定」という。)を公表した。
司法修習生に対する経済的支援の在り方について、関係閣僚会議決定では、「はじめに」において貸与制を前提としている検討会議の「取りまとめ」の内容を是認している。
しかし、本年4月、5月に実施されたパブリックコメント(以下、「パブコメ」という。)には1か月の間に3119通もの意見が寄せられ、うち法曹養成課程における経済的支援に関する意見数は2421通にのぼり、その大多数が「司法修習生に対する給費制を復活させるべきである」との内容であった。また、検討会議では複数の委員から給費制を復活すべきという意見が出された。
パブコメが実施されたということは、当然その後の議論において、パブコメに寄せられた声を踏まえることが予定されているところ、検討会議は、給費制復活が妥当であるとの大多数の声に反する座長試案をもとに議論を進め、ほとんど訂正を加えることなく、取りまとめに至った。これはパブコメという手続の趣旨を没却し、実質的には国民の声を無視するものである。
また、取りまとめ及び関係閣僚会議決定では経済的支援策の一つとして兼業許可基準の緩和を挙げているが、これはフルタイムで密度の濃い修習に励む司法修習生にとって何ら支援策とならない。そればかりか、修習の実を上げるために必要不可欠な修習専念義務を骨抜きにするおそれがある。
これまでも当会は、経済的困窮を理由に法曹志願者がその道を閉ざされることがないよう、また、市民の権利擁護を担う人材を国が責任を持って育てるため、給費制の復活を強く求めてきた。また、学生の法学部離れ、極端な入学者の減少による法科大学院の募集停止の続出、司法修習辞退者の増加、著しい就職難など法曹養成をめぐる負の連鎖がますます深刻化する中で、給費制の復活は、これ以上の法曹志願者の減少を食い止めるために直ちに執るべき対策である。
当会は、貸与制を前提とした「取りまとめ」及び「取りまとめ」の内容を是認した関係閣僚会議決定に抗議するとともに、政府が新たな検討体制においてパブコメの結果を反映させて司法修習生に対する給費制を復活し、現在の法曹養成制度の問題の抜本的解決に向けた具体的な施策を速やかに検討し実現するよう強く求める。
2013年(平成25年)7月17日
仙台弁護士会 会長 内 田 正 之