本年9月12日,東京拘置所において1名の死刑確定者に対する死刑の執行が行われた。谷垣禎一法務大臣による3度目の死刑執行である。
当会は,これまでも,死刑が罪を犯した人の更生と社会復帰の観点から見たとき,その可能性を完全に奪うという問題点が内在されていること,誤判・えん罪による生命侵害という取り返しのつかない危険を内包するものであることから,政府に対し,死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行い,その間死刑の執行を停止するよう求めてきた。
さらに,当会は,本年5月22日付けの会長声明において,政府が死刑制度を廃止することが適当ではない理由として挙げている点に関し,第1に,死刑制度に関する情報が国民に周知されていない状況における世論調査は死刑制度を正当化するものとしては説得力に乏しいと言わざるを得ないこと,第2に,我々国民が死刑制度の存廃について十分に議論を尽くし意見を形成するためには死刑制度に関する情報が広く公開されることが必要であること,第3に,死刑の犯罪抑止効果は科学的・統計的に証明されているとは言い難いことを指摘した。そのうえで,死刑の執行を停止し,死刑に関する情報を広く国民に公開し,死刑制度の存廃に関する国民的議論を開始することを要請していた。
今回の死刑執行は,このような国民への情報公開,国民的議論を尽くさない中で行われたものであり,当会は,死刑を執行した政府に対し,改めて強く抗議する。
また,死刑制度が最も基本的な人権に関わる重大な問題であることに鑑み,死刑廃止が国際的潮流となっている事実を真摯に受け止め,死刑の執行を停止した上で,死刑に関する情報を広く国民に公開し,死刑制度の存廃に関する国民的議論を開始することを改めて強く要請する。
2013年(平成25年)9月19日
仙 台 弁 護 士 会
会長 内 田 正 之