1 東日本大震災の被災者が抱える二重ローン問題への対応策である「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」(以下「被災ローン減免制度」という)に関し,当会は,2013年(平成25年)5月22日付け会長声明において,被災ローン減免制度の運用を担っている一般社団法人個人版私的整理ガイドライン運営委員会(以下「運営委員会」という)による不当な運用を指摘し,速やかな運用の見直しを求めた。
2 上記会長声明発出後,当会を含む被災地弁護士会及び日本弁護士連合会(以下「日弁連」という)は,運営委員会との間で,被災ローン減免制度の運用のあり方に関する協議を継続的に行ってきた。その結果,現在においては,当会が指摘した上記の不当運用については,是正がなされるに至っている。
また,当会を含む被災地弁護士会及び日弁連は,被災ローン減免制度を被災者にとってより利用しやすい制度にするという観点から,運営委員会に対し,同制度の運用規準の明示・明確化を求めるとともに,同制度の利用要件の緩和を求めてきた。その結果,2013年(平成25年)10月30日,運営委員会により,「個人版私的整理ガイドライン運用規準」が策定されるに至った。同運用規準は,被災者救済の見地からはさらなる改善の余地がありうるものではあるが,規準が明示されることにより制度利用に際しての予測可能性が高まった点や,同制度の利用要件の一つである支払不能要件が従前と比較して一定程度緩和されている点等については,一定の評価ができるものとなっている。
今回の不当運用の是正及び運用規準の策定を契機に,関係諸機関連携のもと,被災ローン減免制度の利用による被災者の救済がより一層はかられることが望まれる。
3 当会は,今後も,被災ローン減免制度が真に被災者の救済に資するものとなるよう,同制度の運用を絶えず注視し,運営委員会と協議を重ね,必要な提言を積極的に行っていくとともに,二重ローンからの被災者の救済に引き続き尽力していくことをここに改めて表明する。
2013年(平成25年)11月14日
仙 台 弁 護 士 会
会長 内 田 正 之