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平成18年11月16日会長声明

2006年11月16日

教育基本法改正に反対する緊急声明

 これまで当会は2回にわたり、教育基本法改正反対の会長声明を発表し、本年5月18日には、改正法案についてほとんど非公開のうちに議論が進められたこと、改正の必要性について全く検証もなされていないこと、また、内容的にも、憲法に則り「個人の価値」を最大限尊重することを目的とした現行法に比べ「公共の精神」を養う目的を加えることで、その理念を後退させたばかりか、愛国心教育を目標と定めて内心の自由を保障する憲法19条に抵触するおそれがあることなどをその重大な問題点として強く反対した。 しかるに、今国会に提出された改正法案においては、上記問題点が全く解消されていないばかりか、近時のマスコミ報道により、教育基本法改正にあたっての民意の反映の過程自体にも重大な問題点を孕むことが明らかとなっている。

 すなわち、政府は市民と政府の相互対話の場としてタウンミーティングを開催し、教育基本法改正問題についてもタウンミーティングを通じて民意を反映したかのごとき体裁を整えてきた。

 しかし、政府は、タウンミーティング実施に際して、質問事項を地元教育委員会に送るなどして教育基本法改正に賛成する「やらせ」発言をさせたことなどが明らかになった。更に、近時は政府が、賛成意見を述べる者に対して謝礼を渡していたという事実も判明し、加えて主催者において政府側の意を受け、改正に反対する参加者を意図的に排除したという疑惑も生じている。

 いうまでもなく、教育基本法は、憲法と同様に、その基本において名宛人は国家であり、教育の根本規範として、子どもが自由かつ独立の人格として成長するために必要な理念と基本原則を明らかにしたものであって、準憲法的・立憲主義的な性格を有するものである。教育基本法の改正は、このような教育基本法の性格に鑑み、通常の法律以上に慎重でなければならないし、その内容について十分な国民的合意が必要なものと言わなければならない。にもかかわらず、上記の通り、民意を聞く場におけるやらせ発言によりいわば世論を偽装し、政府の求める方向に世論を恣意的に誘導しようとする姿勢は、民主主義の根幹を揺るがすものとして厳しく断罪されなければならない。

 NHKの最新のアンケートでは、改正に賛成する者は全体の4割に過ぎず、しかも、賛成するものの中でも、その7割は拙速な改正には反対しているという。また、東京大学による全国の小中学校校長に対するアンケートによれば約7割近くが改正に反対しており、宮城県でも元公立小中学校校長19名が連名で改正に反対を表明している。更に、仙台市において11月8日に開催された地方公聴会においても、国民的議論と合意が必要であると慎重審議を求める声が多かった。

 一方、現在、教育にまつわる重大な問題が噴出している。いうまでもなく、一つには陰湿なイジメの問題や虐められた子どもの自殺の問題、そしてその連鎖の問題であり、もう一つには学習指導要領により必修とされた科目を意図的且つ組織的に履修させないということが広く行われていたという問題である。

 今、社会が緊急に求められていることはまさにこれらの諸問題の原因の探求と対策であり、これらの検証作業が行われること抜きに、不適切な方法による世論の誘導の中で教育基本法の改正が行われることは断じて容認できない。

 しかし、与党は、去る11月15日、衆議院の教育基本法特別委員会において野党欠席のまま単独採決を行い、更に11月16日、衆議院本会議においても野党欠席のまま単独採決を強行した。

 ここに当会は、あまりにも民意を無視したかかる衆議院の審議のあり方に断固抗議するとともに、参議院においては衆議院における実質的な審理がなされなかった法案として速やかに廃案とすることを強く求めるものである。

           

                    

平成18年(2006年)11月16日    

仙台弁護士会  会 長  氏  家  和  男

 

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