自衛隊のイラク即時撤退を求める会長声明
米国大統領による昨年5月1日の戦闘終結宣言の後も「イラクは戦争状態にあり、その全土が戦闘地域にある」状態が続いていたが、本年4月に入ると、従来協力的であったとされるシーア派と米軍など占領軍との間の激しい戦闘行為が発生し、現在も連日のように多数の死傷者が生じている。また4月8日には、自衛隊宿営地直近に向けて迫撃砲が撃ち込まれて着弾し、さらに同日、日本人民間人3名が誘拐され、自衛隊即時撤退の要求がなされるに至った。このような誘拐・脅迫行為は断じて許されるべきものではなく,誘拐された3名は速やかに解放されるべきものである。
ところで,当会は、自衛隊派遣の根拠となるイラク特別措置法は、イラクにおける自衛隊の武力行使を事実上容認するもので、国際紛争を解決する手段として武力の威嚇又は武力行使を禁じた日本国憲法に違反する恐れが極めて大きいこと、イラク派兵は国連憲章に反する米英軍の武力行使と一体化したものと評価されることが明らかであることから、同法案の成立に反対した。さらに、法案成立後も、今回の自衛隊のイラク派遣は、憲法に反するだけでなく「自衛隊等の対応措置は非戦闘地域において実施し、武力による威嚇または武力行使にあたるものであってはならない」とのイラク特別措置法の基本原則にも反することを指摘し、派遣に強く反対しその中止を求めてきた。
これにもかかわらず、政府はサマワは戦闘地域ではないとして自衛隊を派遣したのであるが、派遣後、戦闘はさらに激しくなり、上記のとおり迫撃砲が撃ち込まれるなどサマワも非戦闘地域とはいえないことがいっそう明らかになった。自衛隊が攻撃を受けて武力行使に至る危険性がますます高まってきたといわざるを得ない。
このように状況が悪化するなかで,上記の民間人が紛争にまきこまれ誘拐されたもので,誘拐という犯罪行為に対し強い怒りを覚えるものであるとともに,まさに今自衛隊を撤退させなければ,日本国民が武力紛争の泥沼に入り込み,再び戦争の惨禍に苦しむことになることを深く憂うるものである。
よって,当会は,日本政府に対し
(1) 誘拐された3名の日本人を解放させるためのあらゆる努力を尽くすこと
(2) 自衛隊の派遣が日本国憲法及びイラク特別措置法の基本原則に反する派遣であることが歴然となった現実を冷徹に見据え、法の支配に則り、自衛隊を即時撤退させること
を強く求めるものである。
2004年4月12日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 鹿 野 哲 義