平成27年9月8日
自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン研究会
座 長 富 永 浩 明 殿
仙 台 弁 護 士 会
会長 岩 渕 健 彦
要 望 書
第1 要望の趣旨
1 貴研究会構成メンバーに東日本大震災の被災地弁護士会に所属する弁護士を加え,新たな準則の策定に関する各種手続への参加を可能とすることを要望する。
2 貴研究会が新たな準則を策定するにあたっては,東日本大震災の被災地弁護士会に意見照会する等,被災地からの意見が適切に反映される措置を講じるよう要望する。
第2 要望の理由
1 貴研究会は,今後,全国各地で自然災害が発生した場合の着実な復旧,復興に向けた取り組みとして,被災した個人債務者の私的整理に関する新たな準則について検討し,その成果をガイドラインとしてとりまとめることを目的として設置されたものである。
2 ところで,貴研究会の委員は,弁護士,全国銀行協会,金融機関,経済団体,学識経験者等で構成され,オブザーバーとして,財務省,金融庁等の関係各機関が参加している。
3 この点,構成メンバーには,座長を含め複数名の弁護士が参加しているが,さらに東日本大震災の被災地弁護士会に所属する弁護士(特に被災ローン減免制度の運用に関与した弁護士)も加えるべきである。
すなわち,貴研究会では,今後,全国各地で自然災害が発生した際に迅速かつ円滑に被災者の債務整理が可能となるよう,被災ローン減免制度を特定調停のスキームにのせた新たな準則を策定することを目的としている。
そうすると,その新たな準則の策定にあたっては被災ローン減免制度の長所についてはこれを生かしつつ,問題点についてはこれを改善していくという作業が想定される。
この点,被災ローン減免制度は,東日本大震災発災後に短時間で策定されたことや,その策定作業に被災地で被災者の債務整理にあたる弁護士が関与していなかったことから,実際の運用にあたっては,必ずしも被災地,被災者の実状が反映されないという事態が生じ,被災者の被災ローン減免制度の利用へとつながらない結果を招いた部分がある。
このことからすれば,新たな準則の策定にあたっては,被災ローン減免制度の運用を被災地で被災者と直に向き合って対応し,同制度の長短について現場レベルで把握している弁護士を研究会の構成メンバーとして参加させるとともに,新たな準則の策定に関する各種手続に関与させることが,被災者の実態を反映した適切な制度策定につながるものであり,必要不可欠なものである。
4 また,東日本大震災を経験したその被災地弁護士会は,震災後から今日まで被災地における復旧,復興事業に深く関与してきたものであり,被災者の債務整理に関する問題についても同様である。特に被災ローン減免制度については,運用開始から継続的にその問題点等を検証し,個人版私的整理ガイドライン運営委員会との協議等を通じて,被災地の実情をふまえた運用改善を図ってきたものであり,被災地という現場レベルでの多数の経験を有している。
したがって,新たな準則の策定にあたっては,被災地弁護士会に意見照会する等の方法によりその経験が適切に反映される措置を講じられたい。
5 よって,要望の趣旨記載のとおり,要望する。
以 上