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公文書管理条例の制定を求める意見書(宮城県)

2017年02月09日


公文書管理条例の制定を求める意見書(宮城県)

2017年(平成29年)2月9日

宮城県知事  村 井 嘉 浩 殿

仙 台 弁 護 士 会

会 長 小野寺 友 宏

第1 意見の趣旨
当会は,貴県に対し,下記事項を盛り込んだ別紙「宮城県公文書等の管理に関する条例(案)」(以下「条例案」といいます。)のような公文書管理条例の制定に向けた取り組みを行うよう求めます。

 1 目的規定に「知る権利」を明記すること。(条例案第1条)
2 公文書の作成については,意思形成過程文書の作成義務を明記すること。(条例案第4条)
3 公文書の管理については,歴史的価値のある文書を保存すべきことを明記した上で,廃棄については第三者機関の関与,廃棄予定文書の目録の住民への公表及び住民の意見陳述の機会の確保など,恣意的な判断を回避するための方策をとること。(条例案第5条第6項,第9条,第13条第1項,第27条)
4 公文書の保存及び管理状況についての公表義務を明記すること。(条例案第7条2項,第10条,第13条第4項,第28条)
5 公文書館に移管された文書について,何人も利用請求権を有することを明記し,知る権利の保障の見地に立ち,利用の拒否ができるのは例外的な場合であるとし,その利用拒否事由の厳格化を図ること(条例案第15条)。

以 上

第2 意見の理由
1 公文書管理条例制定の意義・必要性
(1)公文書管理法の趣旨
2009年(平成21年)6月,公文書等の管理に関する法律が制定されました。
同法第1条では,公文書等が,「健全な民主主義の根幹を支える国民共有の知的資源」であり,「主権者である国民が主体的に利用し得るものであること」とされ,公文書等の適正な管理や保存,利用が民主主義や国民主権を支えるものとの位置付けがなされています。そして,右趣旨のもと,同法においては,公文書の統一的な管理や,歴史資料として重要な公文書等の保存及び利用について規定するとともに,その適切な運用を図るため,公文書管理委員会の設置,内閣総理大臣による改善勧告等について定められています。
このように,公文書管理は,民主主義の根幹を支える知的資源の共有,すなわち情報公開制度を機能させていくために必要不可欠の制度です。
このような公文書等の管理の重要性は地方公共団体にも同じくあてはまるものであり,同法第34条においては,地方公共団体に,必要な施策を策定し,これを実施する努力義務が課されており,地方公共団体においても,公文書管理法の趣旨に則った公文書等の適正な管理や保存,利用が求められています。
しかしながら,現状においては,地方公共団体における公文書管理条例の制定は進んでおらず,条例を制定しているのは,都道府県では鳥取県,島根県,香川県及び熊本県,政令市では札幌市,相模原市及び大阪市といった程度にとどまっています。
(2)豊洲市場地下空間問題で浮き彫りになった公文書管理条例の必要性
2016年(平成28年)に発覚した,豊洲市場に地下空間が設置され盛土がなされなかった問題について,誰がいつ盛土をしないことを決定したのかについては文書資料が乏しく,関係者の言い分が食い違い,検証が困難となっています。このような問題を招いた要因は,日本弁護士連合会が「豊洲市場の地下空間設置問題を踏まえ公文書管理条例の制定を求める会長声明」(平成28年11月2日付け)で指摘しているように,適時に適切な文書が作成されていなかったからです。すなわち,意思決定をする際に意思形成過程が判明するような文書が作成されていれば,より的確な事実経過を検証することができたはずです。また,意思形成過程文書を作成することが義務付けられていれば,各担当者はより慎重に責任感を持って意思決定を行い,いつの間にか当初計画が変更されていたなどという事態もなかったと考えられます。
この豊洲市場地下空間設置問題は,正に公文書管理条例の必要性について事実をもって示していると言えます。そして,この種の問題は東京都以外の自治体でも起こりうるものです。
(3)公文書管理条例の意義
宮城県では,公文書の管理に関する条例は制定されておらず,行政文書管理規則(平成11年6月22日宮城県規則第84号)や文書規程(昭和43年2月15日宮城県訓令甲第4号)等によって公文書管理がなされています。
しかし,第一に,公文書が住民の知的資源であり,公文書管理が住民の知る権利を保障するものであることに鑑みれば,その規律は民主的基盤を有する議会で制定される条例で行うべきです(地方自治法第14条第2項参照)。
第二に,行政文書管理規則や文書規程は内部規範に過ぎず,条例に比較すれば規範性が希薄である面を否定できません。職員の意識としても,文書管理に関するルールが内部規範で規律されるのか,それとも条例で規定されるのかによって,そのルール遵守への意識に差異が生じると思われます。したがって,内部規範よりも条例で規定されるならば,一層ルール遵守への意識が増すものと思料されます。
第三に,規則や規程は内部規範であるが故に,原則として,行政の長がその裁量によりルールを自由に変更することが可能であり,この点が大きな問題と考えます。条例として制定するならば,ルールの変更や廃止が適切であるかどうかを議会が審議し,実現されることになります。行政の長が裁量的に変更ないし廃止をなし得ないという点で,条例化は,ルールの厳格化に資するものと言えます。
第四に,条例を制定することにより,それまで知事部局や委員会等でそれぞれ規則により運用していた公文書管理が,統一的になされることになる利点もあります。
よって,公文書の管理については条例によるべきです。

2 公文書管理条例に盛り込むべき内容
(1)はじめに
条例案は,既に存在する島根県公文書等の管理に関する条例や鳥取県公文書等の管理に関する条例,日弁連「公文書管理法案の修正と情報公開法の改正を求める意見書」(2009年4月24日付け)などを参考に作成しました。条例案は,あくまで参考資料として作成したものですが,情報公開制度と車の両輪となる公文書管理制度の充実を期す観点から,条例制定にあたっては条例案に盛り込まれてある以下の内容は明記すべきです。
(2)県民の知る権利を明記すること
宮城県行政文書管理規則第3条では,「職員は,県がその諸活動を説明する責務を有することを認識し,常に行政文書の所在を明確にする等行政文書を適正に管理しなければならない」と定め,公文書の管理目的を,県の諸活動の説明責任を果たすこととしています。しかし,公文書の保存は,説明責任だけではなく,県民の知る権利に応えることもまた,目的とされなければならないと考えます。
そして,公文書は,公権力の意思形成過程,執行手続の経過及び結果を記録した資料として,後に検討されるべき重要なものであることに鑑みると,県民の地方行政に対する知る権利を充足させるために必要不可欠なものと言えます。即ち,地方公共団体における公文書は,地方公共団体が住民の付託に基づき適切に事務を執行してきたのかどうかを判断する上で欠かせない存在であって,これは県民の重要な政治的財産と評すべきものです。
したがって,原則として公文書は県民の知る権利に応えるような存在でなければならないところ,規則では県の諸活動についての説明責務を果たすことだけが規定され,県民の知る権利に応えるという面が明記されていません。
この点,条例案第1条では,「この条例は,県の諸活動や歴史的事実を記録した公文書等が,県政に対する県民の知る権利に不可欠な県民共有の知的資源であることに鑑み」と明記し,文書管理が県民の知る権利に応える重要な事務であることを宣言しています。
(3)意思形成過程文書の作成義務を明記すること
宮城県行政文書管理規則第6条においても文書の作成義務は定められていますが,その記載事項は「所掌事務に関する意思決定の内容その他事務処理上の重要な事項」となっており,意思形成過程文書が含まれない可能性があります。また,宮城県公安委員会行政文書管理規則第4条第1条は文書の作成を原則としつつも,「決定権者その他の者が行政文書を作成する必要がないと認めた場合」(同項第3号)には文書の作成を要しないとしており,恣意的な文書不作成の可能性を残しています。
しかし,事務又は事業の実績を合理的に跡付け又は検証できるようにするためには,意思形成過程の確認も必要であり,そのためにも意思形成過程に係る文書の作成を義務付けるべきです。
また,公文書は県民の知る権利に不可欠な県民共有の知的資源であるという条例案第1条の目的を達成するためには,実施機関による恣意的な文書の不作成は許されません。
この点,条例案第4条では,「実施機関の職員は,第1条の目的の達成に資するため,当該実施機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該実施機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け,又は検証することができるよう,処理に係る事案が軽微なものである場合を除き,次に掲げる事項その他の事項について,文書を作成しなければならない。一 条例若しくは規則の制定又は改廃及びその経緯 二 前号に定めるもののほか,実施機関の長で構成される会議(これらに準ずるものを含む。)の決定又は了解及びその経緯 三 複数の行政機関による申合せ又は他の行政機関若しくは地方公共団体に対して示す基準の設定及びその経緯 四 個人又は法人の権利義務の得喪及びその経緯 五 職員の人事に関する事項」と定めています。
なお,個人的メモも場合によっては意思形成過程を示す資料や重要な歴史的資料になりうるため,条例の運用にあたり留意されるべきです。
(4)公文書の管理については,歴史的価値のある文書を保存すべきことを明記した上で,廃棄については第三者機関の関与,廃棄予定文書の目録の住民への公表及び住民の意見陳述の機会の確保など,恣意的な判断を回避するための方策をとること
宮城県行政文書管理規則第8条1項は,行政文書管理責任者である本庁の課長及び地方機関の長の判断で,保存年限が経過した行政文書を廃棄できる旨定める一方で,文書規程第47条において,歴史的・文化的価値を有する文書の選定を公文書館長に依頼し,公文書館長が歴史的・文化的価値を有する文書を選定した場合には公文書館で保存する旨定めています。
公文書館長が関与することで,歴史的・文化的価値を有する文書が不当に廃棄されてしまう危険性は減少していると思料されますが,県民の知る権利を保障するためには,第三者機関の関与と住民の意見の反映による廃棄についての慎重な判断ができる仕組みが設けられるべきです。
この点,条例案では,第5条第6項で「歴史公文書等に該当するものにあっては公文書館への移管の措置」を定め,第13条1項で,「公文書館長は,特定歴史公文書等について,第27条第1項の規定により廃棄されるに至る場合を除き,公文書館において永久に保存しなければならない。」と規定し,もって歴史資料の保存を公文書館の館長に義務付けました。また、条例案第9条は保存期間が満了した公文書ファイル等の公文書館への移管又は廃棄の措置を行う主体を実施機関にするとともに(第1項),廃棄しようとするときは,事前に第三者機関である公文書管理委員会に諮問することとし(第2項),同委員会は諮問を受けたときには県民からの意見聴取の機会を設けることとしています(第3項)。さらに,知事や公文書館長が、保存が必要と認めた文書については廃棄しない取扱いとすることができるよう定めています(同条第5項,第6項)。そのほか,条例案第10条では廃棄予定文書の公表と何人も意見を述べることができると定め,県民の知的資源の不当な廃棄を防止しています。
(5)公文書の保存及び管理状況についての公表義務を明記すること
宮城県行政文書管理規則では,公文書の保存及び管理状況についての公表が義務付けられていません。そのため,県民からすれば,当該行政文書が適切に保存・管理されているのかどうかについて,知る機会が与えられていないという問題が生じます。
そこで,公文書の保存・管理状況についての公表を義務付けることによって,その適正な保存・管理がなされていることを県民に周知することが重要と考えます。
この点,条例案第7条2項では,「実施機関は,公文書ファイル管理簿について,規則等で定めるところにより,一般の閲覧に供するとともに,電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により公表しなければならない。」と定め,条例案第10条では,「実施機関は,公文書ファイル管理簿の記載状況,廃棄予定文書その他の公文書の管理の状況について,毎年度,知事に報告しなければならない。」,「知事は,毎年度,前項の報告を取りまとめ,その概要を公表しなければならない。」と定めています。
また,特定歴史公文書等についても,条例案第13条4項では,「公文書館長は,規則で定めるところにより,特定歴史公文書等の分類,名称,移管又は寄贈若しくは寄託をした者の名称又は氏名,移管又は寄贈若しくは寄託を受けた時期及び保存場所その他の特定歴史公文書等の適切な保存を行い,及び適切な利用に資するために必要な事項を記載した目録を作成し,公表しなければならない。」と定めるとともに,条例案第28条では,「公文書館長は,特定歴史公文書等の保存及び利用の状況について,毎年度,知事に報告しなければならない。」,「知事は,前項の報告を取りまとめ,その概要を公表しなければならない。」として,公表を義務付けています。
(6)公文書館に移管された文書について,何人も利用請求権を有することを明記し,知る権利の保障の見地に立ち,利用の拒否ができるのは例外的な場合であるとし,その利用拒否事由の厳格化を図ること
保存期間経過後に公文書館に移管された「特定歴史公文書等」については,住民の知的資源である以上,住民が原則として自由に利用できなければなりません。そこで,条例案第16条で住民の利用請求の方法について定め,第17条第1項で利用拒否事由を限定した上で住民の利用を保障しています。
また,利用拒否事由については,文書の作成から相当期間が経過しているにもかかわらず,現用文書における非開示事由と同様の利用制限(利用拒否事由)を定めることは,公文書が県民共有の知的資源であるという条例案の趣旨に逆行します。そこで,条例案第15条第4項では,「第2項の時の経過を考慮するにあたり,作成後30年以上を経過した特定歴史公文書等は,第1項第1号又は第3号に該当しないものと推定する。」と定め,作成後30年以上経過した特定歴史公文書等の利用制限を緩和しています。
利用拒否事由のうちの犯罪情報については,宮城県情報公開条例では「公開することにより,犯罪の予防,鎮圧又は捜査,公訴の維持,刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障が生ずるおそれがあると実施機関が認めることにつき相当の理由がある情報」が非開示事由とされています(第8条第1項第4号)。しかし,この規定は実施機関による恣意的な不開示を助長しかねないとの批判があるところであり,実施機関の裁量により永久的に利用が制限されるおそれもあります。それでは公文書が県民共有の知的資源であるという条例案の趣旨を実現できないため,特定歴史公文書等については実施機関の裁量を小さくすべきです。この点,条例案第15条第1項第1号ハでは,「公開することにより,犯罪の予防,鎮圧又は捜査,公訴の維持,刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報」と定めています。
(7)まとめ
県民の知る権利の保障の観点からは,以上の点を公文書管理条例に盛り込むことが必要となります。

3 公文書管理条例を制定した各自治体の状況
(1)公文書管理法において,同法の趣旨にのっとった地方公共団体による公文書管理の努力義務が定められたことを受けて,前記1(1)で挙げた各地方公共団体では公文書管理についての条例を制定しています。
(2)これらの地方公共団体の条例の具体的な内容は,公文書管理法と同様の制度となっている場合が多く,公文書について,①作成,②整理,③保存,④管理簿の作成・公表,⑤保存期間経過後の廃棄・公文書館等への移管,⑥住民による特定歴史公文書等の利用手続などが定められています。
(3)仙台弁護士会では,平成28年4月から5月にかけて,条例を制定した地方公共団体に対し,条例制定までに要した期間や,制定過程において直面した問題点,予算措置等についてのアンケートを送付し,回答を得ました。その概要は次のとおりです。
① 条例案作成に要する期間
アンケートの回答によると,各地方公共団体が条例案の作成に着手してから議会に条例案提出までの具体的期間は,次のとおりでした。
島根県:第1回庁内研究会の開催から,議会への条例案の提出までに1年4か月
鳥取県:初回の検討委員会の開催から,議会への条例案提出までに1年6か月
香川県:初回の庁内検討協議会の開催から,議会への条例案提出までに1年10か月
相模原市:市長の審議会への諮問から,議会への条例案提出までに1年7か月
以上の回答結果によると,条例案作成に着手してから,議会に条例案を提出するまでにおよそ1年半程度を要する場合が多いようです。
② 条例案の作成に関して各自治体が直面した問題点・検討点
島根県の場合,ファイル管理簿に記載されているものの,実在しない公文書があったり,保存期間経過後も保存されていた公文書があったり,ファイル管理簿に記載されていない文書があることなどが発覚したとのことです。このように,公文書の管理を徹底するためには,どのような公文書が実際に存在するか調査する必要があると考えられます。
また,島根県では,歴史公文書に関する職員の認知度の低さを克服する必要があったとの回答があり,また,鳥取県においても,条例の意義や内容を職員に理解してもらうことが必要だったとの回答がありました。このように,職員に歴史公文書や条例の意義・内容等を理解してもらうことが課題となるようです。
さらに,鳥取県においては,個人情報保護の観点から公表する管理簿の名称変更が必要になることなどがあったとの回答があり,このような点についての配慮が必要となると考えられます。
③ 予算
条例の施行に伴う予算措置として,文書管理システムの構築 費,公文書館等の人件費及び設備改修費が必要となった地方公共団体がありました。
具体的予算措置としては,次のとおりです。
鳥取県:2年間にわたり政策法務課に専任担当1名の人員配置がなされ,また,電子決裁等システム改修費用として660万円を計上した(もともと公文書館あり)。
香川県:電算システム改修費用として735万円を計上した(もともと県立文書館あり)。
島根県:公文書センター職員経費(4名分)として800万円,公文書センター改修費として1000万円,備品整備(収蔵庫書架)費として1200万円,合計3000万円を計上した。その他,条例制定準備経費として,先進地視察費や内閣府協議旅費などを計上した(新たに公文書センターを設置)。
札幌市:総合文書管理システム改修費用として6250万円を計上した(新たに公文書館を設置)。具体的には,㋐簿冊管理を延長する方法の変更及び公文書館一次選別機能追加に伴う機能改修,㋑文書管理サブシステムとしての公文書館システムの新規構築,㋒既存の公文書目録公開システムの改修及び公文書館に引継ぎされた簿冊データの公開機能追加,㋓文書を永年保存する制度を廃止したことに伴う,永年保存データの変更及び関連機能の改修。
相模原市:視察の旅費,審議会委員への報酬等で数万円程度(もともと統合文書管理システムあり)。
以上のように,もともと公文書館があった地方公共団体においては,電算システムの改修等の費用として,数百万円程度の予算が必要となるだけであり,すでに公文書館を有する貴県においては,この程度の予算があれば条例制定が実現するものと考えられます。
④ 条例制定後の状況
香川県からは,「公文書管理条例の施行に伴い,簿冊の保存期間満了時の措置として,延長,移管又は破棄とする制度に変更して,歴史的価値の有無を文書館において評価選別することとした。このようなルール変更研修や,簿冊管理簿の作成及び公表を行うという作業をすることで,各所属における文書管理に対する意識にも変化があった。これは,文書管理に係る新たな体制づくりとして,所属ごとに文書管理推進責任者や文書管理推進担当者を新設したことで,より慎重な取扱いをする運用となったことも大きいといえる。」という回答が寄せられており,公文書管理条例を制定することにより,公文書管理に関する職員の意識に変化があったとされています。
また,相模原市からは,「条例にあわせて,歴史的公文書の保存と利用の場である公文書館を整備(平成26年10月開館)し,歴史的公文書の利用実績があることから,住民からは一定の評価があると認識しています。」との回答があり,歴史的公文書を保存・管理・利用することによる住民からの評価を感じているとされています。
このように,公文書管理条例を制定することにより,職員の意識の変化や,住民からの評価などが期待できます。

4 結論
以上のとおり,公文書管理条例を制定することにより,十分な公文書の保存・管理や住民による利用を促進することが必要であり,これにより,職員の意識の変化や住民による評価という効果が期待できると考えます。
よって,「第1 意見の趣旨」のとおり,公文書管理条例の制定に向けた取り組みを行うよう求めます。

以 上

宮城県公文書等の管理に関する条例(案)

目次
第1章 総則(第1条―第3条)
第2章 公文書の管理(第4条―第12条)
第3章 特定歴史公文書等の保存、利用等(第13条―第29条)
第4章 公文書管理委員会(第30条―第32条)
第5章 雑則(第33条―第36条)
附則

第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、県の諸活動や歴史的事実を記録した公文書等が、県政に対する県民の知る権利に不可欠な県民共有の知的資源であることに鑑み、公文書等の管理に関する基本的事項を定めることにより、公文書の適正な管理及び特定歴史公文書等の適切な保存、利用等を図り、もって県政が適正かつ効率的に運営されるようにするとともに、宮城県及び宮城県が設立した地方独立行政法人等の諸活動について、現在及び将来の県民の知る権利を保障し、これに対する宮城県及び宮城県が設立した地方独立行政法人等における説明する責務が全うされるようにすることを目的とする。
(定義)
第2条 この条例において「実施機関」とは、知事、公営企業管理者、議会、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会、監査委員、公安委員会、警察本部長、労働委員会、収用委員会、海区漁業調整委員会及び内水面漁場管理委員会、県が設立した地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成15年法律第118号)第2条第1項に規定する地方独立行政法人をいう。以下同じ。)並びに宮城県住宅供給公社、宮城県道路公社及び宮城県土地開発公社(以下「公社」という。)をいう。
2 この条例において「公文書館」とは、公文書館条例(平成12年12月20日宮城県条例第132号)に基づき設置された宮城県公文書館をいう。
3 この条例において「公文書」とは、実施機関の職員(県が設立した地方独立行政法人及び公社の役員を含む。第31条を除き、以下同じ。)が職務上作成し、又は取得した文書(図画、写真、スライド、マイクロフィルム及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)を含む。第21条を除き、以下同じ。)であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして当該実施機関が保有しているものをいう。ただし、次に掲げるものを除く。
一 官報、公報、新聞、書籍その他不特定多数の者に販売することを目的として発行されるもの
二 特定歴史公文書等
三  図書館、美術館その他の県又は県が設立した地方独立行政法人若しくは公社の施設又は機関において一般の利用に供することを目的として管理されているもの(前号に掲げるものを除く。)
4 この条例において「歴史公文書等」とは、次に掲げる文書をいう。
一 実施機関の組織及び機能並びに政策の検討過程、決定、実施及び実績に関する重要な情報が記録された文書
二 県民の権利及び義務に関する重要な情報が記録された文書
三 県民を取り巻く社会環境、自然環境等に関する重要な情報が記録された文書
四 県の歴史、文化、学術、事件等に関する重要な情報が記録された文書
五 前各号に掲げるもののほか、歴史資料として重要な情報が記録された公文書その他の文書
5 この条例において「特定歴史公文書等」とは、歴史公文書等のうち、次に掲げるものをいう。
一 第9条第1項の規定により公文書館に移管されたもの
二 第30条第3項の規定により公文書館に移管されたもの
三 歴史資料として重要な文書であるものとして法人その他の団体(県、県が設立した地方独立行政法人及び公社を除く。第15条第1項第4号において「法人等」という。)又は個人から寄贈され、又は寄託されたもの
5 この条例において「公文書等」とは、次に掲げるものをいう。
一 公文書
二 特定歴史公文書等
(他の法令等との関係)
第3条 公文書等の管理については、法令又は他の条例に特別の定めがある場合を除くほか、この条例の定めるところによる。

第2章 公文書の管理
(作成)
第4条 実施機関の職員は、第1条の目的の達成に資するため、当該実施機関における経緯も含めた意思決定に至る過程並びに当該実施機関の事務及び事業の実績を合理的に跡付け、又は検証することができるよう、処理に係る事案が軽微なものである場合を除き、次に掲げる事項その他の事項について、文書を作成しなければならない。
一 条例若しくは規則の制定又は改廃及びその経緯
二 前号に定めるもののほか、実施機関の長で構成される会議(これらに準ずるものを含む。)の決定又は了解及びその経緯
三 複数の行政機関による申合せ又は他の行政機関若しくは地方公共団体に対して示す基準の設定及びその経緯
四 個人又は法人の権利義務の得喪及びその経緯
五 職員の人事に関する事項
(整理)
第5条 実施機関の職員が公文書を作成し、又は取得したときは、当該実施機関は、規則等(規則、地方公営企業法(昭和27年法律第292号)第10条に規定する企業管理規程、地方自治法(昭和22年法律第67号)第138条の4第2項に規定する規則その他の規程その他実施機関が定める規程で公表を要するものをいう。以下この章において同じ。)で定めるところにより、当該公文書について分類し、名称を付するとともに、保存期間及び保存期間の満了する日を設定しなければならない。
2 実施機関は、能率的な事務又は事業の処理及び公文書の適切な保存に資するよう、単独で管理することが適当であると認める公文書を除き、適時に、相互に密接な関連を有する公文書(保存期間を同じくすることが適当であるものに限る。)を一の集合物(以下「公文書ファイル」という。)にまとめなければならない。
3 前項の場合において、実施機関は、規則等で定めるところにより、当該公文書ファイルについて分類し、名称を付するとともに、保存期間及び保存期間の満了する日を設定しなければならない。
4 第1項及び前項の保存期間は、最長30年とする。
5 実施機関は、第1項及び第3項の規定により設定した保存期間及び保存期間の満了する日を、規則等で定めるところにより、5年間延長することができる。
6 実施機関は、公文書ファイル及び単独で管理している公文書(以下「公文書ファイル等」という。)について、保存期間(延長された場合にあっては、延長後の保存期間。以下同じ。)の満了前のできる限り早い時期に、保存期間が満了したときの措置として、歴史公文書等に該当するものにあっては規則で定めるところにより公文書館への移管の措置を、それ以外のものにあっては廃棄の措置をとるべきことを定めなければならない。
(保存)
第6条 実施機関は、公文書ファイル等について、当該公文書ファイル等の保存期間の満了する日までの間、その内容、時の経過、利用の状況等に応じ、適切な保存及び利用を確保するために必要な場所において、適切な記録媒体により、識別を容易にするための措置を講じた上で保存しなければならない。
(公文書ファイル管理簿)
第7条 実施機関は、公文書ファイル等の管理を適切に行うため、規則等で定めるところにより、公文書ファイル等の分類、名称、保存期間、保存期間の満了する日、保存期間が満了したときの措置その他の必要な事項(宮城県情報公開条例(平成11年宮城県条例第10号。以下「情報公開条例」という。)第8条に規定する非公開情報に該当するものを除く。)を帳簿(次項及び第11条第2項第4号において「公文書ファイル管理簿」という。)に記載しなければならない。ただし、1年未満の保存期間が設定された公文書ファイル等については、この限りでない。
2 実施機関は、公文書ファイル管理簿について、規則等で定めるところにより、一般の閲覧に供するとともに、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により公表しなければならない。
(電子情報システムの利用等)
第8条 実施機関は、公文書の管理を効率的に行うため、電子情報システム(電子計算機を利用して、電磁的記録により公文書の作成、取得、決裁、分類及び保存を行い、これらの情報を効率的に管理する仕組みをいう。以下この条において同じ。)の利用及び公文書ファイル等の集中管理の推進に努めなければならない。
2 実施機関は、電子情報システムを利用して作成された公文書を含む公文書ファイルを保存するときは、電磁的記録の滅失又は毀損に備え、当該公文書ファイルを適切な記録媒体に複製し、複数保存するよう努めなければならない。
(保存期間が満了したときの措置)
第9条 実施機関は、保存期間が満了した公文書ファイル等について、第5条第6項の規定により移管の措置をとるべきことを定めたものにあっては公文書館に移管し、廃棄の措置をとるべきことを定めたものにあっては廃棄しなければならない。
2 実施機関は、前項の規定により、保存期間が満了した公文書ファイル等を廃棄しようとするときは、あらかじめ、公文書管理委員会に諮問して、その答申を得なければならない。
3 公文書管理委員会は、前項に定める諮問を受けたときは、廃棄予定とされている公文書ファイル等を公表し、県民の意見を聴く機会を設けなければならない。
4 実施機関は、第1項の規定により公文書館に移管する公文書ファイル等について、第15条第1項第1号に掲げる場合に該当するものとして公文書館において利用の制限を行うことが適切であると認める場合には、その旨の意見を付さなければならない。
5 知事は、公文書ファイル等について特に保存の必要があると認める場合には、当該公文書ファイル等を保有する実施機関に対し、当該公文書ファイル等について、廃棄の措置をとらないように求めることができる。
6 公文書館長は、公文書ファイル等にまとめられた公文書が歴史公文書等に該当すると認めるときは、当該公文書ファイル等を保有する実施機関に対し、当該公文書ファイル等を保存期間満了後に公文書館に引き継ぐよう求めることができる。
(管理状況の報告等)
第10条 実施機関は、公文書ファイル管理簿の記載状況、廃棄予定文書その他の公文書の管理の状況について、毎年度、知事に報告しなければならない。
2 知事は、毎年度、前項の報告を取りまとめ、その概要を公表しなければならない。
3 何人も、第1項の廃棄予定文書その他の公文書の管理の状況について、規則の定めるところにより、意見を述べることができる。
4 知事は、第1項に定めるもののほか、公文書の適正な管理を確保するために必要があると認める場合には、実施機関に対し、公文書の管理について、その状況に関する報告若しくは資料の提出を求め、又は当該職員に実地調査をさせることができる。
5 知事は、前項の場合において歴史公文書等の適切な移管を確保するために必要があると認めるときは、公文書館に、当該報告若しくは資料の提出を求めさせ、又は実地調査をさせることができる。
(公文書管理規則)
第11条 実施機関は、公文書の管理が第4条から前条までの規定に基づき適正に行われることを確保するため、公文書の管理に関する定め(以下この条において「公文書管理規則」という。)を設けなければならない。
2 公文書管理規則には、公文書に関する次に掲げる事項を規定しなければならない。
一 作成に関する事項
二 整理に関する事項
三 保存に関する事項
四 公文書ファイル管理簿に関する事項
五 保存期間が満了したときの措置に関する事項
六 管理状況の報告に関する事項
七 前各号に掲げるもののほか、公文書の管理が適正に行われることを確保するために必要な事項
3 実施機関は、公文書管理規則を設けたときは、公文書管理委員会の同意を得たうえで、遅滞なく、これを公表しなければならない。これを変更したときも、同様とする。
(委任)
第12条 この章に定めるもののほか、公文書の管理に関し必要な事項は、規則等で定める。

第3章 特定歴史公文書等の保存、利用等
(特定歴史公文書等の保存等)
第13条 公文書館長は、特定歴史公文書等について、第27条第1項の規定により廃棄されるに至る場合を除き、公文書館において永久に保存しなければならない。
2 公文書館長は、特定歴史公文書等について、その内容、保存状態、時の経過、利用の状況等に応じ、適切な保存及び利用を確保するために必要な場所において、適切な記録媒体により、識別を容易にするための措置を講じた上で保存しなければならない。
3 公文書館長は、特定歴史公文書等に個人情報(宮城県個人情報保護条例(平成8年宮城県条例第27号)第2条第1号に規定する個人情報をいう。以下この項において同じ。)が記録されている場合には、当該個人情報の漏えいの防止のために必要な措置を講じなければならない。
4 公文書館長は、規則で定めるところにより、特定歴史公文書等の分類、名称、移管又は寄贈若しくは寄託をした者の名称又は氏名、移管又は寄贈若しくは寄託を受けた時期及び保存場所その他の特定歴史公文書等の適切な保存を行い、及び適切な利用に資するために必要な事項を記載した目録を作成し、公表しなければならない。
(利用請求の方法)
第14条 特定歴史公文書等の利用の請求をしようとするものは、次に掲げる事項を目録(前条第4項の目録をいう。第3号において同じ。)の記載に従い記載した書面(次項において「利用請求書」という。)を公文書館長に提出しなければならない。
一 氏名又は法人その他の団体の名称及びその代表者の氏名
二 住所又は事務所若しくは事業所の所在地
三 利用の請求をしようとする特定歴史公文書等の目録に記載された名称
四 前3号に掲げるもののほか、規則で定める事項
2 公文書館長は、利用請求書に形式上の不備があると認めるときは、特定歴史公文書等の利用の請求をしたものに対し、相当の期間を定めて、その補正を求めることができる。この場合において、公文書館長は、補正の参考となる情報を提供するよう努めなければならない。
(利用請求の取扱い)
第15条 公文書館長は、前条第1項の規定による特定歴史公文書等の利用の請求(以下「利用請求」という。)があった場合には、次に掲げる場合を除き、当該利用請求をしたもの(以下「利用請求者」という。)に対し、当該利用請求に係る特定歴史公文書等を利用させなければならない。
一 当該特定歴史公文書等が第9条第1項の規定により公文書館において保存することとされたものであって、当該特定歴史公文書等に次に掲げる情報が記録されている場合
イ 情報公開条例第8条第1号又は第3号に掲げる情報
ロ 情報公開条例第8条第2号に掲げる情報
ハ 公開することにより、犯罪の予防、鎮圧又は捜査、公訴の維持、刑の執行その他の公共の安全と秩序の維持に支障を及ぼすおそれがある情報
ニ 県の機関、県が設立した地方独立行政法人、公社又は国等の機関が行う監査、検査、取締り又は試験に関する情報であって、当該事務事業の性質上、公開することにより、当該事務事業若しくは将来の同種の事務事業の目的が達成できなくなり、又はこれらの事務事業の公正若しくは円滑な執行に支障が生ずると認められるもの
二 当該特定歴史公文書等が第33条第3項の規定により公文書館において保存することとされたものであって、同条第4項の規定により、利用の制限を行うことが適切である旨の意見を付されている場合
三 当該特定歴史公文書等が国の機関から移管されたものであって、当該国の機関との合意において利用の制限を行うこととされている場合
四 当該特定歴史公文書等がその全部又は一部を一定の期間公にしないことを条件に法人等又は個人から寄贈され、又は寄託されたものであって、当該期間が経過していない場合
五 当該特定歴史公文書等の原本を利用に供することにより当該原本の破損若しくはその汚損を生ずるおそれがある場合又は公文書館において当該原本が現に使用されている場合
2 公文書館長は、利用請求に係る特定歴史公文書等が前項第1号に該当するか否かについて判断するに当たっては、当該特定歴史公文書等が公文書として作成又は取得されてからの時の経過を考慮するとともに、当該特定歴史公文書等に第9条第4項の規定による意見が付されている場合には、当該意見を参酌しなければならない。
3 公文書館長は、第1項第1号から第4号までに掲げる場合であっても、同項第1号イからハまでに掲げる情報、又は同項第2号若しくは同項第3号の制限又は同項第4号の条件に係る情報が記録されている部分を容易に区分して除くことができるときは、利用請求者に対し、当該部分を除いた部分を利用させなければならない。ただし、当該部分を除いた部分に有意の情報が記録されていないと認められるときは、この限りでない。
4 第2項の時の経過を考慮するにあたり、作成後30年以上を経過した特定歴史公文書等は、第1項第1号又は第3号に該当しないものと推定する。
(本人情報の取扱い)
第16条 公文書館長は、前条第1項第1号ロの規定にかかわらず、同号ロに掲げる情報により識別される特定の個人(以下この条において「本人」という。)から、当該情報が記録されている特定歴史公文書等について利用請求があった場合において、規則で定めるところにより本人であることを示す書類の提示又は提出があったときは、本人の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがある情報が記録されている場合を除き、当該特定歴史公文書等につきこれらの規定に掲げる情報が記録されている部分についても、利用させなければならない。
(利用請求に対する措置)
第17条 公文書館長は、利用請求に係る特定歴史公文書等の全部又は一部を利用させるときは、その旨の決定をし、利用請求者に対し、その旨及び規則で定める事項を書面により通知しなければならない。
2 公文書館長は、利用請求に係る特定歴史公文書等の全部を利用させないときは、その旨の決定をし、利用請求者に対し、その旨を書面により通知しなければならない。
3 公文書館長は、前2項の規定により、利用請求に係る特定歴史公文書等の全部を利用させる旨の決定以外の決定をする場合は、これらの規定に規定する書面にその理由を付記しなければならない。
(利用決定等の期限)
第18条 前条第1項及び第2項の規定による決定(以下「利用決定等」という。)は、利用請求があった日から起算して15日以内にしなければならない。ただし、第14条第2項の規定により補正を求めた場合にあっては、当該補正に要した日数は、当該期間に算入しない。
2 前項の規定にかかわらず、公文書館長は、事務処理上の困難その他正当な理由があるときは、同項に規定する期間を30日以内に限り延長することができる。この場合において、公文書館長は、直ちに書面により延長後の期間及び延長の理由を利用請求者に通知しなければならない。
(利用決定等の期限の特例)
第19条 利用請求に係る特定歴史公文書等が著しく大量であるため、利用請求があった日から起算して45日以内にその全てについて利用決定等をすることにより公文書館の事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合には、前条の規定にかかわらず、公文書館長は、利用請求に係る特定歴史公文書等のうちの相当の部分につき当該期間内に利用決定等をし、残りの特定歴史公文書等については相当の期間内に利用決定等をすれば足りる。この場合において、公文書館長は、同条第1項に規定する期間内に、利用請求者に対し、次に掲げる事項を書面により通知しなければならない。
一 この条の規定を適用する旨及びその理由
二 残りの特定歴史公文書等について利用決定等をする期限
(第三者に対する意見書提出の機会の付与等)
第20条 利用請求に係る特定歴史公文書等に国、公文書等の管理に関する法律(平成21年法律第66号)第2条第2項に規定する独立行政法人等、地方公共団体、地方独立行政法人及び利用請求者以外の者(以下「第三者」という。)に関する情報が記録されている場合には、公文書館長は、利用決定等をするに当たって、当該情報に係る第三者に対し、利用請求に係る特定歴史公文書等の名称その他規則で定める事項を通知して、意見書を提出する機会を与えることができる。
2 公文書館長は、第三者に関する情報が記録されている特定歴史公文書等の利用をさせようとする場合であって、当該情報が情報公開条例第8条第3号ただし書に規定する情報に該当すると認めるときは、第17条第1項の規定による決定(以下この条及び第24条第2項第1号において「利用決定」という。)に先立ち、当該第三者に対し、利用請求に係る特定歴史公文書等の名称その他規則で定める事項を書面により通知して、意見書を提出する機会を与えなければならない。ただし、当該第三者の所在が判明しない場合は、この限りでない。
3 公文書館長は、特定歴史公文書等であって第15条第1項第1号ハに該当するものとして第9条第4項の規定により意見を付されたもの又は第33条第4項の規定により意見を付されたものについて利用決定をする場合には、あらかじめ、当該特定歴史公文書等に係る元の実施機関(特定歴史公文書等を公文書館において保存する前に第8条第1項又は第33条第2項の規定により保存していた実施機関をいう。第26条において同じ。)に対し、利用請求に係る特定歴史公文書等の名称その他規則で定める事項を書面により通知して、意見書を提出する機会を与えなければならない。
4 公文書館長は、第1項又は第2項の規定により意見書を提出する機会を与えられた第三者が当該特定歴史公文書等を利用させることに反対の意思を表示した意見書を提出した場合において、利用決定をするときは、その利用決定の日と利用させる日との間に少なくとも2週間を置かなければならない。この場合において、公文書館長は、その利用決定後直ちに、当該意見書(第23条第2項第2号及び同条第3項第3号において「反対意見書」という。)を提出した第三者に対し、利用決定をした旨及びその理由並びに利用させる日を書面により通知しなければならない。
(利用の方法)
第21条 公文書館長が特定歴史公文書等を利用させる場合には、文書又は図画については閲覧又は写しの交付の方法により、電磁的記録についてはその種別、情報化の進展状況等を勘案して規則で定める方法により行う。ただし、閲覧の方法により特定歴史公文書等を利用させる場合にあっては、当該特定歴史公文書等の保存に支障を生ずるおそれがあると認めるときその他正当な理由があるときに限り、その写しを閲覧させる方法により、これを利用させることができる。
(費用負担)
第22条 特定歴史公文書等の利用請求に係る手数料は、徴収しない。
2 写しの交付により特定歴史公文書等を利用するものは、規則で定めるところにより、当該写しの作成に要する費用を負担しなければならない。
(審査請求及び情報公開審査会への諮問)
第23条 利用請求に対する処分又は利用請求に係る不作為について不服がある者は、公文書館長に対し、行政不服審査法(昭和37年法律第160号)による審査請求をすることができる。
2 前項の審査請求があったときは、公文書館長は、次の各号のいずれかに該当する場合を除き、遅滞なく、公文書管理委員会に諮問しなければならない。
一 審査請求が不適法であり、却下するとき。
二 審査請求に対する決定において、審査請求に係る利用決定等を取り消し、又は変更し、当該審査請求に係る特定歴史公文書等の全部を利用させることとするとき。ただし、当該審査請求に係る特定歴史公文書等の利用について反対意見書が提出されているときを除く。
3 公文書館長は、前項の規定により諮問をしたときは、次に掲げる者に対し、諮問をした旨を通知しなければならない。
一 審査請求人及び参加人
二 利用請求者(利用請求者が審査請求人又は参加人である場合を除く。)
三 当該審査請求に係る特定歴史公文書等の利用について反対意見書を提出した第三者(当該第三者が審査請求人又は参加人である場合を除く。)
(審査請求に対する決定)
第24条 公文書館長は、前条第1項の規定による諮問に対する答申を受けたときは、これを尊重し、速やかに当該審査請求に対する決定をするものとする。
2 第20条第4項の規定は、次の各号のいずれかに該当する決定をする場合について準用する。
一 利用決定に対する第三者からの審査請求を却下し、又は棄却する決定
二 審査請求に係る利用決定等を変更し、当該利用決定等に係る特定歴史公文書等を利用させる旨の決定(第三者である参加人が当該特定歴史公文書等を利用させることに反対の意思を表示している場合に限る。)
(特定歴史公文書等の利用の促進)
第25条 公文書館長は、特定歴史公文書等(第15条の規定により利用させることができるものに限る。)について、展示その他の方法により積極的に一般の利用に供するよう努めなければならない。
(元の実施機関による利用の特例)
第26条 特定歴史公文書等に係る元の実施機関が、公文書館長に対してその所掌事務又は業務を遂行するために必要であるとして、当該特定歴史公文書等の利用請求をした場合には、第15条第1項第1号及び第3号の規定は、適用しない。
(特定歴史公文書等の廃棄)
第27条 公文書館長は、特定歴史公文書等として保存されている文書が、規則で定めるところにより、歴史資料として重要でなくなったと認める場合には、知事と協議し、その同意を得て、当該文書を廃棄することができる。
2 公文書館長は、前項の規定により文書を廃棄しようとするときは、廃棄の日の1月前までに、当該文書の名称、廃棄の日その他規則で定める事項を公表しなければならない。
3 第1項の規定による文書の廃棄について異議のある者は、公文書館長に対し、当該特定歴史公文書等について、廃棄の措置をとらないように求めることができる。
(保存及び利用の状況の公表)
第28条 公文書館長は、特定歴史公文書等の保存及び利用の状況について、毎年度、知事に報告しなければならない。
2 知事は、毎年度、前項の報告を取りまとめ、その概要を公表しなければならない。
(利用等規則)
第29条 公文書館長は、特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄が第13条から第22条まで及び第25条から前条までの規定に基づき適切に行われることを確保するため、特定歴史公文書等の保存、利用及び廃棄に関する定め(以下「利用等規則」という。)を設けなければならない。
2 利用等規則には、特定歴史公文書等に関する次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 保存に関する事項
二 第22条に規定する費用その他一般の利用に関する事項
三 特定歴史公文書等に係る元の実施機関による当該特定歴史公文書等の利用に関する事項
四 廃棄に関する事項
五 保存及び利用の状況の報告に関する事項
3 公文書館長は、利用等規則を設けようとするときは、あらかじめ、知事と協議し、その同意を得なければならない。これを変更しようとするときも、同様とする。
4 公文書館長は、利用等規則を設けたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。これを変更したときも、同様とする。

第4章 公文書管理委員会
(委員会の設置)
第30条 県に、公文書管理委員会(以下「委員会」という。)を置く。
2 委員会は、この条例の規定によりその権限に属せられた事項を処理する。
3 委員会の委員は、公文書等の管理に関して優れた識見を有する者のうちから、知事が任命する。
4 この条例に規定するもののほか、委員会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。
(委員会への諮問)
第31条 知事は、次に掲げる場合には、委員会に諮問しなければならない。
一 公文書館に関する規則の制定又は改廃の立案をしようとするとき。
二 第5条第1項、第3項、第5項、第6項、第7条、第11条第2項第7号、第12条、第13条第4項、第14条第1項第4号、第16条、第17条、第22条第2項及び第36条の規則の制定又は改廃の立案をしようとするとき。
三 第27条第1項、第29条第3項の規定による同意をしようとするとき。
四 第34条の規定による勧告をしようとするとき。
(資料の提出等の求め)
第32条 委員会は、その所掌事務を遂行するため必要があると認める場合には、関係実施機関又は公文書館長に対し、資料の提出、意見の開陳、説明その他必要な協力を求めることができる。
2 何人も、委員会に対し、公文書の管理について、意見を述べることができる。
3 委員会は、その所掌事務を遂行するため必要がある場合には、知事に建議することができる。

第5章 雑則
(刑事訴訟に関する書類等の取扱い)
第33条 刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第53条の2第3項に規定する訴訟に関する書類(以下この条において「刑事訴訟に関する書類」という。)については、第2章の規定は、適用しない。
2 実施機関は、当該実施機関が管理する刑事訴訟に関する書類のうち、歴史公文書等に該当するものについて、適切な保存のために必要な措置を講ずるものとする。
3 前項に規定する歴史公文書等に該当する刑事訴訟に関する書類について、実施機関が公文書館において保存する必要があると認める場合は、知事は、当該刑事訴訟に関する書類について、公文書館において保存することとしなければならない。
4 実施機関は、前項の規定により公文書館において保存されることとなる刑事訴訟に関する書類について、公文書館において利用の制限を行うことが適切であると認める場合には、その旨の意見を付さなければならない。
5 刑事訴訟法第53条の2第4項に規定する押収物については、この条例の規定は、適用しない。
(知事の勧告)
第34条 知事は、この条例を実施するため特に必要があると認める場合には、実施機関に対し、公文書等の管理について改善すべき旨の勧告をし、当該勧告の結果とられた措置について報告を求めることができる。
(研修)
第35条 実施機関は、当該実施機関の職員に対し、公文書等の管理を適正かつ効果的に行うために必要な知識及び技能を習得させ、及び向上させるために必要な研修を行うものとする。
(委任)
第36条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

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