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学校教育における教育勅語の使用に強い懸念を表明する会長声明

2017年05月18日

本年3月31日,政府は,「学校において,教育に関する勅語を我が国の教育の唯一の根本とするような指導を行うことは不適切であると考えているが,憲法や教育基本法(平成18年法律第120号)等に反しないような形で教育に関する勅語を教材として用いることまでは否定されることではないと考えている」との答弁書を閣議決定した。

この政府答弁の後にも,幼稚園など教育現場の毎日の朝礼で子どもたちが教育に関する勅語(教育勅語)を朗誦することについて,「教育基本法に反しない限りは問題のない行為であろうと思います」との答弁(4月7日の衆議院内閣委員会における義家弘介文部科学副大臣発言)がなされるなどしており,上記政府答弁に対しては,教育現場における教育勅語の活用を容認する姿勢を示すものとして,報道機関や教育研究者を含む多数の識者らから強い懸念が表明されている。

教育勅語は,主権在君の国家護持のため,臣民に天皇・皇室国家への忠誠を求めたものであり,大日本帝国憲法下で教育の根本理念とされ,軍人勅諭や治安維持法等とともに戦争遂行のための思想統制的役割を果たしたと評価されている。このような教育勅語が,戦後,個人の尊重を核心的価値に据え,基本的人権の尊重,国民主権及び恒久平和主義を基本原理として制定された日本国憲法と相容れないものであることは明らかである。

衆参両議院も,日本国憲法施行後の1948年(昭和23年)6月19日に,教育勅語の排除・失効確認の決議をしている。とりわけ,衆議院本会議における「教育勅語等排除に関する決議」は,「これらの詔勅の根本理念が主権在君並びに神話的國体観に基いている事実は,明らかに基本的人権を損い,且つ國際信義に対して疑点を残すもととなる。よつて憲法第九十八条の本旨に従い,」「これらの詔勅を排除」すると述べていた。

近時,閣僚を含む一部政治家等から,教育勅語に含まれる親孝行や家族の和等の徳目をことさら強調して,「日本が道義国家を目指すべきだという核の部分は取り戻すべきだ」「大変素晴らしい理念が書いてある」などといった教育勅語を擁護ないし肯定する発言もなされている。しかし,これらの徳目は,天皇が臣民に対して「一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壌無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ」と求める文章の一部として書かれたものである。教育勅語の一部を抜き出して擁護ないし肯定する言説は,教育勅語の本質から目をそらすものと言わざるを得ない。

教育勅語が本質的・根本的に日本国憲法の基本原理と相容れないことに鑑みれば,学校教育の場,とりわけ道徳の授業の場において,教育勅語の全体又は一部を教材とし,これを肯定的に評価する形での指導を行うことが不適切であることは明らかである。

よって,当会は,教育勅語が日本国憲法の基本原理と相容れないものであることをここに確認するとともに,学校教育の場において教育勅語の全体又は一部を教材とし,これに基づく指導がなされることに強い懸念を表明するものである。

 

2017年(平成29年)5月18日

仙 台 弁 護 士 会

会 長 亀 田 紳一郎

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