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死刑執行に断固抗議し,死刑執行を停止するとともに,死刑に関する情報を広く公開し,死刑制度の存廃に関する国民的議論を求める会長声明

2017年07月27日


本年7月13日,大阪拘置所と広島拘置所において,死刑確定者2名に対する死刑の執行が行われた。金田勝年法務大臣による2回目の死刑執行であり,第二次安倍内閣の下での死刑執行は11回目で,合わせて19名になる。

死刑制度は,罪を犯した人の更生と社会復帰の観点から見たとき,その可能性を完全に奪うという問題点を有しているものであり,また,誤判・えん罪による生命侵害という取り返しのつかない危険を内包するものである。2014年(平成26年)3月27日に,静岡地方裁判所が,袴田巖氏の第二次再審請求事件について再審を開始し,死刑及び拘置の執行を停止する決定をしたことは,えん罪による生命侵害の危険性を現実のものとして世に知らしめた。
世界に目を向けても,死刑を法律上廃止している国と事実上廃止(10年以上死刑が執行されていない国を含む。)している国は2016年12月末現在141か国に達しており,第71回国際連合総会(2016年12月19日)において,「死刑の廃止を視野に入れた死刑執行の停止」を求める決議が国連加盟国193か国のうち117か国の賛成により採択されている。また,2014年7月23日に採択された国連自由権規約委員会の第6回日本定期報告に関する総括所見は,死刑廃止を目指す自由権規約第二選択議定書への加入を考慮することや,再審あるいは恩赦の申請に死刑執行停止効果を持たせたうえで死刑事件における義務的かつ効果的な再審査の制度を確立することなどを勧告している。
それゆえ,当会はこれまで,政府に対し,死刑の執行を停止した上で,死刑制度の存廃について,国民が十分に議論を尽くし意見を形成するのに必要な情報を広く国民に公開して,国民的議論を行うよう繰り返し求めてきた。

また,日本弁護士連合会は,2016年(平成28年)10月7日に開催された第59回人権擁護大会において,「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し,死刑制度についての国民的議論の契機となっている。

そのような中,政府が国民的議論のための情報開示を十分に行わないまま今回の死刑執行を行ったことは,死刑制度が基本的人権に関わる極めて重要な問題であることへの配慮を著しく欠いたものであり,死刑の執行を停止し死刑制度の存廃を含む抜本的な検討と見直しをする必要性を軽視したものであると言わざるを得ない。

とりわけ,死刑が執行された2名の内1名は,再審請求中であったとのことである。金田法務大臣は記者会見において,一般論としつつ「再審請求をしているから,執行しないという考えは採っていない」と明言した。再審請求中に死刑を執行することは,誤判・えん罪の可能性を審査する再審の機会を奪うことにほかならず,裁判を受ける権利(憲法32条),適正手続保障(憲法31条)との関係で重大な問題を孕む。このような問題を解消するためにも,再審請求に死刑執行停止効を持たせる規定の導入を検討すべきである。

よって,当会は,政府に対し,今回の死刑執行について断固抗議するとともに,死刑制度が最も基本的な人権に関わる重大な問題であることを踏まえ,死刑廃止が国際的潮流となっている事実を真摯に受け止め,死刑の執行を停止した上で,死刑制度の犯罪抑止効果,死刑囚の置かれている状況,死刑執行の選定基準やプロセス,死刑執行の方法,誤判・えん罪と死刑の関係など死刑に関する情報を広く国民に公開し,死刑制度の存廃に関する国民的議論を開始するよう改めて求める。

2017年(平成29年)7月27日

仙 台 弁 護 士 会

会長  亀 田 紳一郎

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