本年9月11日,平成30年度(2018年度)の司法試験の最終合格発表が行われる。
司法試験の合格者数については,法曹養成制度改革推進会議が,平成27年(2015年)6月30日に,司法試験の合格者数を年間「1500人程度は輩出されるよう,必要な取組を進め」ると決定している。
ところで,司法試験の出願者数及び受験者数は年々減少している。平成23年度から平成29年までの司法試験の出願者数,受験者数,及び合格者数は次のとおりである。
出願者数 受験者数 合格者数 合格率
平成23年度(2011年度)11,892人 8,765人 2,063人 17.34%(23.54%)
平成24年度(2012年度)11,265人 8,387人 2,102人 18.65%(25.06%)
平成25年度(2013年度)10,315人 7,653人 2,049人 19.86%(26.77%)
平成26年度(2014年度)9,255人 8,015人 1,810人 19.55%(22.58%)
平成27年度(2015年度)9,072人 8,016人 1,850人 20.95%(23.08%)
平成28年度(2016年度)7,730人 6,899人 1,583人 20.49%(22.95%)
平成29年度(2017年度)6,716人 5,967人 1,543人 22.97%(25.86%)
*合格率は対出願者数,( )内が対受験者数である。
法科大学院については,志願者数のピークである平成16年度(2004年度)は,志願者数延べ72,800人,入学者数5767人であったが,平成30年度(2018年度)は,志願者数延べ8058人(前年比101人減),入学者数1,621人(同83人減)となっている。
このように,法科大学院の志願者数・入学者数も司法試験の出願者数・受験者数も著しく減少している中で,本年度も司法試験の合格者数を「年間1500人程度は輩出」されるべきであるとの方針を維持するために合格ラインが下げられてしまうと,司法試験制度に本来期待される選抜機能が大きく損なわれ,合格者の質を制度的に担保できない事態も想定される。
なお,本年度の出願者数は5811人,司法試験受験者数は5238人であるから,仮に合格者数が1500人であった場合,合格率は,対出願者数で25.81%,対受験者で28.63%となる。
司法は,基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とするものであり,その司法を担う法曹の質の維持・向上は,国民にとって重大な課題・要請であるから,合格者数の確保のみが優先されるようなことがあってはならない。法曹養成制度改革推進会議の上記決定も,「輩出される法曹の質の確保を考慮せずに達成されるべきものではないことに留意する必要がある」とも指摘しており,法曹の質の確保が前提となっている。
司法試験は,「裁判官,検察官又は弁護士となろうとする者に必要な学識及びその応用能力を有するかどうかを判定する」ことを目的にしているのであるから(司法試験法1条),司法試験委員会に求められているのは,安易に一定数の合格者を輩出することではなく,司法を担う法曹に必要な学識及びその応用能力を適正かつ厳正に判定することである。
よって,当会は,平成30年度(2018年度)の司法試験の合格判定にあたって,1500人程度とされる合格者数の確保のみが優先されるべきではなく,司法を担う法曹の質の維持・向上の要請をふまえた厳正な判定がなされることを求める。
以上
2018年(平成30年)7月19日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 及 川 雄 介