本年7月20日、特定複合観光施設区域整備法(いわゆる「カジノ解禁実施法」)が参議院本会議で可決し成立した。
当会は2014年(平成26年)5月23日に「『特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律案』(いわゆる『カジノ解禁推進法』)に反対する会長声明」、2016年(平成28年)12月22日に「『特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律』(いわゆる『カジノ解禁推進法』)の成立に抗議し、同法の廃止を求める会長声明」を発出し、カジノ解禁に反対してきた。
このたび成立したカジノ解禁実施法は、民間事業者が運営する賭博を合法化するという重大な効果を生じさせるものであるが、これまで当会が示してきた懸念を払拭するものではなく、その目的の抽象性はじめ、以下に述べるような問題を抱えるものである。
(1)入場規制の不十分さ
同法が依存症対策として設けている入場規制は不十分なものに留まっている。
同法176条及び177条が定めるカジノの入場料は6000円であるが、入場を制限する効果が期待できるほどの金額ではない。また、同法69条4号及び5号は、日本人等が入場できる回数を連続する7日間で3回、連続する28日間で10回に制限するとしているが、定められた上限まで入場する状態は既に依存症と考え得るものであり、このような規制は依存症対策としての効果を持っていない。
(2)特定資金貸付業務の危険性
同法は、「特定資金貸付業務」として、「カジノ管理委員会規則で定める金額以上の金銭を当該カジノ事業者の管理する口座に預け入れている」(85条1項2号)場合にカジノ業者が貸付けを行うことができるとし、年収の3分の1を超える貸付けを禁止する貸金業法の総量規制が及ばないとされている。
しかし、カジノ場内で貸付けが可能とすれば、利用者は冷静さを失って過剰な貸付けを受けてしまう懸念があるし、多重債務を防止するための貸金業法の規制が骨抜きにされることは大きな問題である。
(3)反社会的勢力等への対策の不十分さ
同法69条2号及び173条において、カジノ事業者は、暴力団員又は暴力団員でなくなった日から起算して5年を経過しない者をカジノ施設に入場させてはならないと規定されている。
しかし、入場時に係る事実を確認すること等は非現実的であるなど、反社会的勢力への対応やマネーロンダリング対策への対策は十分に取られていない。
以上のように、カジノ解禁実施法には多数の問題があり、運用の方法によって問題の発生を抑えることは困難な程度に及んでいる。
よって当会は、カジノ解禁実施法の廃止を求めるものである。
2018年(平成30年)10月19日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 及 川 雄 介