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少年法適用年齢に関する法制審議会の答申内容に反対する会長声明

2020年12月23日

 2020年10月29日,法制審議会は,少年法における「少年」の 年齢を18歳未満とすること等について意見を求める諮問(諮問第103号)に対し,罪を犯した18歳及び19歳の者について行うべき法整備の「要項(骨子)」を含む答申(以下,「答申」という。)を法務大臣宛てに行った。

 答申は,18歳及び19歳の者が「成長発達途上にあって可塑性を有する」点で20歳以上の者(少年法上の「成人」)とは異なる取扱いをすべきであることを踏まえて,その者らの被疑事件について,犯罪の嫌疑がある場合は全ての事件を家庭裁判所に送致しなければならない(全件家裁送致主義を存続)としており,その限りにおいては,家庭裁判所のケースワーク機能を活用する現行少年法と同様の枠組みを維持しようとするものと評価できる。
しかし,そうであれば,諮問に対する答申には,少年法における「少年」の年齢を18歳未満とはせず,18歳及び19歳の者は今後も「少年」として少年法の適用対象となり,同法第1条の「健全育成」の理念が妥当することを明示すべきであるのに,答申はこの点について明示を避け「今後の立法プロセスにおける検討に委ねる」としている点で妥当でない。
 また,答申は,18歳及び19歳の者について,2022年4月施行予定の民法上「成年」と位置付けられることなどから18歳未満の者とも異なる取扱いをすべきであるとして,いわゆる原則逆送の対象事件の範囲を,現行少年法の重大な生命侵害事案から「短期1年以上の新自由刑に当たる罪の事件」にまで大幅に拡大すべきとしている。
しかし,そもそも民法改正と少年法適用年齢引下げ論とに理論的関連性はない(当会の2018年12月14日付け意見書)。また,18歳及び19歳の者が犯情の幅が極めて広い強盗罪等についても原則として逆送されることになれば,その多くは執行猶予付き判決を受けて社会に戻されるにとどまることが予想されるが,それでは,家庭裁判所調査官による社会調査や少年鑑別所による心身鑑別の形骸化を招き,家庭裁判所のケースワーク機能が活用されなくなり,保護処分による立ち直りや再犯防止の効果も得られなくなる点で,答申の考える制度設計は妥当ではない。原則逆送対象事件の拡大は,全件家裁送致の枠組みを骨ぬきにするものであり、実質的には18歳及び19歳の者を少年法適用年齢から除外するものであって,答申には反対せざるを得ない。
 さらに答申は,18歳及び19歳の者について「ぐ犯」の対象から除外する点や,逆送・起訴された後には推知報道禁止の対象からも除外する点で,本質的には少年法適用年齢引下げを前提とした立法を示唆するものであって,到底賛成できるものではない。
 18歳及び19歳の者についても,健全育成という少年法の目的は妥当するのであって,少年法に変更を加える必要はないのである。

少年法適用年齢引下げ問題について,当会は,これまで,2015年4月24日に会長声明を公表したほか,2018年12月14日には詳細な意見書を公表して,少年法の適用年齢を引き下げる理由(立法事実)も理論上の必要性もないことを明らかにするなど,少年法の適用年齢引下げに一貫して反対してきた。
以上の観点から,当会は,答申の内容に反対するとともに,政府に対しては,今後,答申に沿った法律案の国会への提出自体を行わないよう強く求める。

2020年(令和2年)12月23日

仙 台 弁 護 士 会

 会 長 十 河  弘

   

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