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租税滞納処分に関する仙台地方裁判所における和解を受けて適切な徴収実務の実現を期待する会長声明

2021年01月06日

1 本日、仙台地方裁判所において、宮城県及び大崎市と税滞納者との間で、滞納処分に基づき、預貯金口座に給料が入金された直後に、預金債権として当該口座全額の差押をした案件に関する国家賠償請求事件に関し、和解が成立した。和解内容としては、差押により徴収した金員の全額を返還すること、今後は、実質的に差押禁止債権の差押と同視されるような差押をしないことが約束されたことに加え、地方税法及び通達類を尊重し、税滞納者の個別具体的な実情を十分に把握した上で、執行を停止するなど適切な措置を講じることも約束された。
2 納税の義務(憲法30条)を負う国民としては、税滞納は好ましい事態ではないが、一方で、生存権(憲法25条)もまた、保障された権利であることから、生存権を脅かすような態様での徴収は許されてはならない。当会は、かかる観点から、平成29年2月13日、「宮城県地方税滞納整理機構の滞納税徴収の姿勢に対する要請書」を採択した。その背景には、平成21年4月より設置された宮城県地方税滞納整理機構(宮城県と機構に参加する市町村で構成。以下「機構」という。)において、支払能力を顧みない徴収や、多重債務問題に理解のない徴収が行われていたという事実関係があった。かかる徴収手法が横行すると、税滞納者の生存権を脅かすこととなるので、その改善は必要不可欠であったことから、機構に対して面会にて手交する形で直接要請を行った。それにもかかわらず、平成29年9月15日に、機構に参加している大崎市と機構が、税滞納者の給料全額相当額の差押に及び、税滞納者の生活の維持を事実上不能とさせたことは、誠に遺憾である。
本件に限らず、滞納処分には、自力執行権が認められるとともに、地方税の徴税吏員には、質問検査権をはじめとした広汎な調査権限が与えられているため、差押禁止債権が入金された直後の預貯金口座を差押えることも容易にできるが、このような差押禁止債権が入金されるのを待って狙い撃ち的に差押をする行為は、生存権の保障の見地から、厳に差し控えられなければならない。広島高裁松江支部平成25年11月27日判決及び大阪高裁令和元年9月26日判決などでは、差押により徴収した金員について不当利得に基づく返還を命じる判断がなされた。これを受けて国税庁は、令和2年1月31日に、かかる差押を原則としてしないことを指示する通達を発出するに至った。
また、生存権を侵害するような差押を行わないという徴収実務は、地方税においても国税と同様に採用されなければならないものであり、総務省は、各自治体に対し、滞納処分に基づく差押は、税滞納者の個別具体的な生活実態を踏まえて行うべき旨を毎年繰り返し通知をしている。
3 本和解は、宮城県及び大崎市が、訴訟を通じて、差押禁止債権が預貯金口座に振り込まれた直後に差押をする行為の問題点を反省し、自らかかる差押を控えることを言明し、さらに滞納処分に基づく差押は、税滞納者の個別具体的な生活実態を踏まえて行うことを約束したものである。かかる実態把握が適正になされてさえいれば、滞納処分により生活が破綻するという事態を回避でき、その結果、税滞納者の生存権が保障されることとなる。当会は、宮城県及び大崎市の徴収実務に関する方針転換を高く評価する。
そして、宮城県及び大崎市が本和解において誓約した徴収実務に関する姿勢は全国一律に採用されるべきであり、本和解を契機に、全国の各自治体においても、行き過ぎた徴収姿勢を見直し、適切な徴収実務が行われることを期待するものである。

2021年(令和3年)1月6日

仙 台 弁 護 士 会

 会 長 十 河  弘

   

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