死刑執行に関する会長声明
2009(平成21)年1月29日、東京拘置所において1名、名古屋拘置所において2名、福岡拘置所において1名、計4名の死刑確定者に対して死刑が執行された。
当会は、昨年9月26日と11月20日、法務大臣に対して死刑制度の存廃につき国民的議論をつくし、死刑制度の改善が行われるまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう強く要請したばかりであった。
しかるに、今回の死刑執行は、森英介法務大臣が就任してから2度目、昨年10月28日の執行からわずか3ヶ月という短期間に、4名という多数の死刑執行を行ったものである。このように死刑の大量執行の流れが定着しかねない事態が生じていることは、極めて遺憾であって容認できない。当会は、かような事態に対して、改めて深い憂慮の念を示すとともに、重ねて強く抗議する。
我が国をはじめ死刑存置国に対しては、国際社会からかつてないほど非常に厳しい目が向けられており、昨年12月18日、国連総会本会議においては、死刑執行の停止を求める決議が圧倒的多数の賛成で採択されたところである。
また、上記本会議に先立つ昨年10月30日、国際人権(自由権)規約委員会は、我が国に対し、世論調査の結果にかかわらず、死刑廃止を前向きに検討すること、必要的上訴制度を導入し、再審請求等による執行停止効を確実にすることなど抜本的な死刑制度の見直しを行うことを求めた。
こうした一連の決議や勧告は、国際社会から我が国に突きつけられた共通の意思の表明にほかならない。
国連による勧告は、死刑制度が最も基本的な人権にかかわる重大な問題であり、世論や多数決に依拠した死刑適用の拡大や死刑執行の促進が根本的に誤りであるとの認識のもとになされている。裁判員制度の実施を控え、死刑制度の運用に対する国民の関心が高まっている今こそ、こうした国際社会の要請や死刑制度の運用と実態を国民に十分知らしめ、開かれた議論を直ちに行うべきである。
今回の死刑執行は、こうした議論を一切行うことなく、国際社会の要請を再度無視して、短期間の間に大量の死刑執行に踏み切ったものであり、甚だ遺憾である。
当会は、政府に対し、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑の執行を停止するよう、重ねて強く要請するものである。
2009(平成21)年2月10日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 荒 中