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福島原発事故損害賠償請求訴訟における司法判断を踏まえ、改めて原子力損害の被害調査を行い、速やかな被害回復を求める会長声明

2022年08月25日

本年3月2日、7日及び30日、最高裁は、7件の福島原発事故損害賠償請求集団訴訟について、東京電力ホールディングス株式会社(以下「東京電力」という。)の上告及び上告受理申立てを退ける決定を行い、東京電力の損害賠償責任を認めた各控訴審判決が確定した。
 これら各控訴審判決は、東京電力の損害賠償責任について、いずれも原子力損害賠償紛争審査会(以下「原賠審」という。)が定めた「東京電力株式会社福島第一、第二原子力発電所事故による原子力損害の範囲の判定等に関する中間指針」及びその追補(以下「中間指針等」という。)の水準を上回る内容の損害賠償を認めていたものである。
 これまで、東京電力は、原子力損害賠償紛争解決センターにおける複数の集団申立事例において、同センターによる繰り返しの和解勧告にもかかわらず、中間指針等を理由に和解受諾を拒否してきた。当会は、2019年3月7日付け「東日本大震災から8年を迎えての震災復興支援に関する会長声明」、2021年3月11日付け「東日本大震災から10年を迎えての震災復興支援に関する会長声明」において、2万人以上もの被害者の被害回復が棚上げにされた事態に懸念を示してきた。
これまでの東京電力の対応を踏まえるならば、原賠審が、中間指針等を見直し、新たな指針を策定することは急務である。
現在、原賠審では、冒頭に指摘した各控訴審判決が確定したことを踏まえ、これらの判決の調査・分析に着手したところであるが、各判決が被侵害利益として捉えるものは一様では無く、また、各判決における損害項目や賠償額の算定方法には差異があることを踏まえ、類型化の可否等を検討している。
福島原発事故は、多数の住民の居住の自由(憲法22条)、営業の自由(同条)、財産権(憲法29条)、平和的生存権(憲法前文、13条、25条)に対して甚大な打撃を与え、生活基盤を不可逆的に奪う被害をもたらした。確かに、被侵害利益は多様であり、被害事実は膨大である。
確定した各判決が被侵害利益として捉えるものが一様では無く、また、各判決における損害項目や賠償額の算定方法に差異が生じたのは、原発事故被害の広範さや深刻さ、被害の長期化、多様性等に起因する。ある判決は、避難を余儀なくされたことに著しい法益侵害を認め、ある判決は故郷での生活基盤を失った損害を認め、ある判決は避難指示区域外の被害者にも看過しがたい被害が生じていることを認めた。各判決が認定した被侵害利益や被害事実に重複しない部分があることは、確定した各判決の水準をもってしても、被害回復として不十分であることを示唆する。
しかし、各判決が認定した被侵害利益や被害事実は、膨大な原子力損害の解析にあたって貴重な指針となるものである。今般確定した司法判断に基づき、原賠審が改めて被害実態を調査することによって、現在の中間指針等で取り残された被害を再評価できる環境は整っている。
もとより、国は、原子力損害の賠償に関する法律に基づき、原賠審を設置し、原賠審において原子力損害の賠償のための指針の策定や、損害の調査及び評価を行う責務を負っている。本年6月17日に最高裁が、福島原発事故集団訴訟において、国家賠償法上の国の責任を認めない判決を言い渡した際にも、裁判長の補足意見として、国は過失の有無等に関係なく、被害者の救済に最大の責任を負うべきことが指摘されている。
被害の多様性を理由に、国や原賠審が被害の再評価を断念することは、今般確定した司法判断の水準の被害回復すら受けられないまま、多くの被害者が切り捨てられることを追認することにほかならず、断じて許されない。
そこで当会は、国及び原賠審に対し、今般確定した司法判断を踏まえ、改めて原子力損害の被害調査を行い、全ての被害者が適切な被害回復を受けるべく、中間指針等の改訂を速やかに行うことを求める。
 また、東京電力には、確定した司法判断を真摯に受け止め、全ての被害者の救済のために加害者として誠意ある対応をすることを求める。

2022年(令和4年)8月25日
仙 台 弁 護 士 会
会 長  伊 東 満 彦

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