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平成21年2月21日総会決議

2009年03月31日

すべての人が,人間らしく働き,生存することができる社会の実現を求める決議 

1 1990年代後半の経済不況を乗り切るための方策として採用された構造改革政策の下で,労働分野でも規制緩和が繰り返され,労働者派遣が原則自由化された1999年以降,雇用の調整弁として,賃金の安い非正規雇用への置き換えが進められ,非正規労働者は今や1890万人に及び,全労働者の3人に1人の割合にまで増加している。

    その結果,2007年には年収200万円以下で働く民間企業の労働者は1032万3000人まで増加し,勤労世帯中,生活保護基準以下の生活を営まざるを得ない貧困世帯数も,1997年の458万世帯から2007年には675万世帯にまで増加し,「ワーキングプア」(働く貧困層)や「ネットカフェ難民」が社会問題化している。


2 こうしたなか,日本を代表する大企業が,サブプライム住宅ローン問題に始まる世界金融危機と景気悪化を理由に,昨年末,大量の派遣労働者などの非正規労働者を削減する計画を明らかにし,派遣労働者や期間労働者の大量雇止めや解雇を現に実施し始めている。非正規労働者の雇止めや解雇は,大企業にとどまらず,厚生労働省の調査でも,昨年10月から本年3月までの間に失業したか,失業が決まっている派遣労働者などの非正規労働者は12万5000人近くにのぼり,ここ東北でも1万9000人近くにのぼるという。こうした非正規労働者のなかには,失業と同時に派遣会社の寮から退去を余儀なくされ,一挙に「衣食住」のすべてを失い,いわゆる「ホームレス」状態に陥る者も少なくない。また,こうした雇止めや解雇のなかには,その適法性が問題となるものも多い。


3 このように構造改革政策の下で,労働分野が危機的状況に陥るとともに,社会保障の分野においても,社会保障給付費が次々に切り下げられている。

  最後のセーフティネットである生活保護もその給付費の抑制が図られ,いまだに窓口で申請さえ受け付けずに追い返す,いわゆる水際作戦と言われる違法な対応が行われるなどし,その実際の利用者は,本来利用し得る者の2割程度にとどまると推計されている。

  そのため,ひとたび失業すると社会保障制度によっても救済されず,蓄え,家族,住まい,健康等を次々と喪失し,人間らしい健康で文化的な最低限度の生活すら奪われ,餓死事件や高利の貸金業者を利用して多重債務に陥り,さらには経済苦・生活苦による自殺にまで至るケースが後を絶たない。ここ数年,経済・生活問題による自殺者数は毎年8000人前後という高い水準で推移している。

  こうした労働と貧困の現状は,人がひとしく享有している生存権及び幸福追求権を侵害するものであり,もはや看過することはできない。


4 よって,すべての人が,人間らしく働き,生存することができる社会の実現のために、当会は,今後貧困と労働の問題に対する相談窓口の設置とその充実,弁護士による代理援助制度の拡充,民間支援団体との協力関係の構築などの取組みを進め,継続して,研究・提言・相談支援活動を行い,より多くの弁護士がこの問題に携わることになるよう実践を積み重ね,非正規労働者や生活保護申請者の支援に向けて全力を尽くすことをここに表明するとともに,国,地方自治体及び使用者に対して,以下の点を求める。

(1)国に対し,労働者派遣法について,派遣対象業種を専門的なものに限定し,登録型派遣を禁止するなどの抜本的な改正を行うとともに,正規労働者と非正規労働者との間の同一同等労働に対する労働条件の均等待遇を立法化するなど労働法制全体の改正を行うこと。

(2)国及び地方自治体に対し,社会保障制度の充実とセーフティネットの再構築を図り,なかでも低所得者を対象とする無利息・無保証の公的融資制度の整備・充実や一時緊急避難場所の確保など生活保護制度を取り巻くセーフティネットの整備・充実を早急に行うとともに,福祉事務所窓口での生活保護受給権を侵害する現行運用を是正し,憲法25条及び13条に根差した生活保護行政を行うこと。

(3)使用者に対しても,労働関係法令の遵守と,雇用するすべての労働者が人間らしく働き,生活することができるよう雇用のあり方を見直してその社会的責任を果たすこと。


 以上のとおり,決議する。


2009(平成21)年2月21日

仙台弁護士会

会 長  荒    中

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