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平成24年4月6日「災害時における専門職による相談や専門職団体との連携強化を地域防災計画上明示することを求める意見書」

2012年04月10日

災害時における専門職による相談や専門職団体との連携強化を地域防災計画上明示することを求める意見書

平成24年4月6日 

仙台弁護士会 会長 髙橋春男

 意 見 の 趣 旨

 仙台弁護士会(以下「当会」と言います)は宮城県内の市町村の各防災会議に対し、災害時における被災住民に対する専門職による相談の実施や専門職団体との連携強化を、各地域防災計画上、明記し、かつ記載を充実させることを求めます。

    意 見 の 理 由

1 大規模災害時における相談需要と対応体制確立の必要性並びにこれまでの経緯
  過去における大規模災害時には、災害発生直後から極めて多くの相談需要があったことが指摘されています。阪神淡路大震災では、震災発生数日後から被災者を対象とした法律相談を実施した兵庫県弁護士会(当時の名称は神戸弁護士会)及び近畿弁護士会連合会には延べで数万件に及ぶ法律相談が寄せられました。しかも、法律の分野にとどまらず、司法書士、税理士、建築士、土地家屋調査士などの専門分野にもまたがる相談の多かったことが指摘されています。
  当会は、こうした大規模災害時における相談需要に、迅速且つ的確に対応することが、災害復興復旧支援には欠かせないとの認識に立ち、他の専門職団体によびかけて、平成17年3月に司法書士会や建築士協会など士業8団体から成る宮城県災害復興支援士業連絡会(以下「士業連絡会」といいます)をたち上げました(その後、構成団体は宮城県社会保険労務士会などが新たに加わり13団体になっています)。また、士業連絡会が災害時に現実にその機能を果たすためには、自治体との連携が不可欠であり、士業連絡会は平成20年12月3日に宮城県との間で、災害発生時に専門職による相談を円滑に実施していくために、災害復興支援に関する協定書を締結しました。

2 東日本大震災における相談需要と問題点
  今般の東日本大震災においては、当会は平成23年3月23日から無料電話相談を開始し、同月26日から沿岸被災地における現地無料相談を開始しました。無料電話相談では同年10月7日の終了日までに9232件、現地無料相談は同年12月27日までで8190件の相談がそれぞれ寄せられました。6回線にまで増やした無料電話相談では一日200件を超す相談が寄せられることもありました。この他に、仙台、気仙沼、石巻、古川、登米、大河原の各法律相談センターに寄せられた震災相談も1000件ほどありましたし、士業連絡会や各専門職団体で実施した現地相談の相談件数もかなりの数に上りました。相談にとどまらず弁護士等専門家の関与により紛争解決をはかるべく当会が開設した震災ADRには現在までに402件の事件が申し立てられています。
  こうした専門職団体による相談活動等は、震災後に制度化された個人債務者の私的整理ガイドライン、被災事業者を対象とした宮城県産業復興機構、東日本大震災事業者再生支援機構の活動開始、集団移転等の復興計画具体化に伴う被災者の抱える問題の顕在化などにより、益々、重要性を増すともいえます。今般、東日本大震災の被災者に対し日本司法支援センター(法テラス)の民事扶助事業について、いわゆる資力要件を撤廃することなどを内容とする特別措置法が可決成立しましたが、このことも大規模災害時における相談需要が相当数存在し、その対応が災害の復旧・復興の支援に不可欠であることを前提とするものといえます。
  しかしながら、こうした活動が今般の東日本大震災発生直後から十分に機能したのかというと、必ずしもそうではありません。とりわけ沿岸部の市町では庁舎やその職員自体の被災も大きく、行政機能が低下していたことは否めません。他方、被災住民は、必要な行政情報、専門的な情報が得られず、不安や悩みを増大させる状況だったことが現地相談を行ってみて実感するようなことが度重なりました。現地相談の段取り等は、市町及び当会など専門職の各担当者が、文字通り手探り状態のなか、熱意でもってなんとか実施までこぎ着けたといった場合も少なくありませんでした。また、せっかく締結した前記宮城県と士業連絡会との協定書に基づいた相談活動が展開されたかというと、それも残念ながらありませんでした。

3 今後の大規模災害に対応するための課題と今回の要望
  東日本大震災から1年が経過した今、当会は、上記相談活動を行ってきた経過に鑑み、今後、大規模災害が起きたときに、災害直後から生じる相談需要に迅速かつ的確に対応していくためには、県や市町村が作成する地域防災計画に専門職による相談の実施及び専門職団体との連携に関する記載を明記し、かつその記載を充実させることを、要望するものです。
  これまでの地域防災計画では、専門職による相談活動の実施や専門職団体との連携については、わずかに仙台市の地域防災計画で、「・・市民のための専門相談窓口を設置する。この場合、必要に応じ、関係部及び区本部と調整を行い、当該部から関係団体への相談員の派遣要請を指示する」と記載されている程度であり、他の多くの県内市町村の地域防災計画における専門職による相談の実施や専門職団体との連携についての記載については、ほとんど言及・明記されていない実情にあります。
  今般の東日本大震災のように、自治体やその職員自体が被災しその行政機能が低下する大規模災害にあっては、なおのこと、事前の体制づくりが肝要であり、その基本は地域防災計画の充実にあると考えます。
  大規模災害発生直後から大きな相談需要が存すること、そうした相談需要に専門家の立場から迅速・的確に関わっていくことが、起きてしまった災害の復旧・復興支援に欠かせないことを当会は確信しています。そうした専門職による相談の実施、専門職団体との連携を実施するためには、これらを災害対策基本法上作成の義務づけられている地域防災計画に反映することが不可欠であると考え、本意見書を提出する次第です。

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