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平成20年7月16日会長声明

2008年07月16日

取調べの可視化(取調べの全課程の録画・録音)を求める会長声明

 わが国の取調べは,弁護人の立会いを排除し外部との連絡を遮断した完全な密室で行われている。そのため,これまでに,違法・不当な取調べが後を絶たず,虚偽の自白が強要され,多くの冤罪が生み出されてきた。

 2007(平成19)年の1年間だけでも,刑期を終えた後に真犯人が判明して再審無罪となった氷見事件(富山県),公職選挙法違反で訴追された12人全員が無罪となった志布志事件(鹿児島県),連続殺人で死刑求刑されながら無罪となった北方事件(佐賀県)など,違法・不当な取調べによって虚偽自白がなされた事件について,無罪判決が言い渡されている。

 このような違法・不当な取調べと,虚偽の自白による冤罪を防ぐためには,人質司法の改革,「代用監獄」の廃止とともに,取調べの可視化(取調べの全過程の録画・録音)が必要不可欠である。

 また,2009(平成21)年5月21日からは,裁判員裁判が実施されるが,裁判員が,被告人の自白の任意性・信用性を判断するための,簡潔,かつ具体的・客観的な手段として,取調べの可視化(取調べの全過程の録画・録音)にまさるものはない。

 これに対して,最高検察庁は,2008(平成20)年4月から,従前一部の地検で行ってきた裁判員裁判対象事件の検察官取調べにおける一部録画・録音の試行を全国の地検本庁及び裁判員裁判対象事件を取り扱う支部に拡大し,より本格的に試行することを発表した。また,警察庁も,2008(平成20)年度中に,警視庁及び大規模府県警察において,裁判員裁判対象事件について,警察における取調べの一部の録画・録音の試行を開始すると発表した。   

 しかしながら,自白場面のみの恣意的な一部の録画・録音は,かえって自白の証拠能力・証拠評価を誤らせ,誤判・冤罪を生む危険性がある。かような「一部の録画・録音」は,およそ取調べの可視化の名に値しないというべきである。現に,再審無罪となった松山事件においては,虚偽自白を内容とする供述調書を被疑者に朗読させ,その状況を録音したテープや16ミリフィルムが作成されていて,それが証拠となって,虚偽自白に任意性・信用性が認められている。自白過程だけの録画・録音を行っているアメリカのニューヨーク州においては、自白場面だけのビデオにより有罪となったが、後に真犯人が判明したという事例が報告されている。このように、取調過程の一部だけの録画・録音は冤罪防止に役立たないどころか、有罪の有力な証拠として使われるという点でかえって危険である。

 また,誤判・冤罪の危険は,裁判員裁判対象外の事件においても存在するのであるから,裁判員対象事件に限定して,取調べの録画・録音を行う理由はない。

 世界的に見ると,密室取調べの弊害に対する反省から,欧米の多くの国々において,また,アジアにおいても香港,韓国,台湾などで,取調べの全過程の録画・録音や弁護人の立会いが行われている。取調べを密室化させず,取調べ状況を第三者がチェックできるようにすることは世界的な潮流である。

 よって,当会は,まず早急に,国に対し,全刑事事件について,警察官および検察官による取調べの全過程の録画・録音を義務づける法律を整備することを求めるとともに,取調べの全過程の録画・録音による可視化の実現のために全力を挙げて取り組む所存である。

 

2008(平成20)年7月16日

           

 仙台弁護士会          

 会 長  荒     中

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