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平成19年7月27日会長声明

2007年07月27日

光市母子殺人事件弁護人への脅迫行為に対する会長声明

 山口県光市で発生したいわゆる「光市母子殺人事件」は、現在広島高等裁判所で審理が行われています。

 この事件に関し、本年5月29日、日本弁護士連合会に、「その元少年を死刑に出来ぬのなら、まずは、元少年を助けようとする弁護士たちから処刑する!」「裁判で裁けないなら、武力で裁く!」などとかかれた脅迫文が、模造銃弾様のものとともに届けられました。更に新聞報道によれば、その後の7月7日に、朝日新聞社及び読売新聞社に同事件弁護団の弁護士を「抹殺する」などと書かれた脅迫文が届けられたとのことです。

 これは「光市母子殺人事件」の弁護団に対する明らかな脅迫行為であり、当会はこのような脅迫行為を断じて見過ごすことは出来ず、ここに強く抗議するために本声明を発表するものです。

 

 本事件は母親と幼い子の命が失われたという大変痛ましい事件であり、当会は亡くなられたお二人に心よりの哀悼の意を表するとともに、ご遺族の方の心情も察するにあまりあるものです。しかしながら、どのようにこの事件が痛ましい事件であっても被告人の弁護人依頼権は十分に保障されなければならず、その権利実現のための弁護人の弁護活動に対し、脅迫による妨害行為がなされることは決して許されるべきではありません。

 

 歴史を遡れば、刑事手続過程で不当な身柄拘束、自白の強要など、さまざまな人権侵害が行われてきました。このような歴史的事実を踏まえ、憲法は、その31条でいわゆる適正手続の保障を定め、その具体化として、37条3項において「刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することが出来る」として弁護人依頼権を保障しています。

 憲法が弁護人依頼権を保障しているということは、単に被告人が弁護人を依頼することに止まるものではなく、弁護人が被告人のための弁護活動を実質的に行えるということまでも保障するものです。    

弁護人が被告人の主張を踏まえた弁論・立証活動をすることで、被告人は初めて十分な防御の機会を与えられ、十分な主張が出来るからです。 

 弁護人は、被告人のための実質的弁護活動を行ってこそその職責を全うすることが出来るのです。また、弁護人はそのような弁護活動をすることで憲法が保障した適正手続の保障、弁護人依頼権の保障等諸権利を実現する責務を負っているのです。 

 

 もとより弁護人の弁論に対して批判等が行われること自体は、言論・表現の自由として十分に尊重されなければならないことは言うまでもありませんが、しかし、今回のような脅迫行為による弁護活動の妨害が許されないことは論を待ちません。

 

今回の脅迫行為は弁護人の弁護活動を暴力によって封じ込め,その結果,被告人の弁護人依頼権および適正手続を保障した憲法の理念をも踏みにじろうとする卑劣な行為であり,断じて許すことができません。

 

 当会は今回の脅迫行為に厳重に抗議するとともに、今後も刑事手続にたずさわるすべての弁護士がこのような卑劣な行為に屈することなくその職責を全うできるように最大限支援していくことをここに表明するものです。

                                    

 2007(平成19)年7月27日

 仙 台 弁 護 士 会    

 会 長  角  山   正

 

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