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平成17年7月20日意見書

2005年07月20日

宮城県貸金業協会による「ヤミ金融回避特区」提案に反対する意見書

仙 台 弁 護 士 会

会 長  松  坂  英  明

 

 

                            意見の趣意

 

 当会は、宮城県貸金業協会による「ヤミ金融回避特区」提案に反対すると共に、政府に対し特区提案を採用しないことを求める。

 

                            意見の理由

 

1 宮城県貸金業協会(以下、「協会」という)は、平成17年6月23日、内閣官房構造改革特区推進室に対し、政府が地域の特性に応じた規制緩和の特例措置を設けて経済活性化を目指す構造改革特別区域制度に基づき、「ヤミ金融回避特区」の提案(以下、「本件提案」という)を行った。

 本件提案は、上限金利規制を緩和し、資金需要者に対し健全な貸金業者による資金供給を可能とさせることでヤミ金融による被害を抑制できるとの考えに基づき、特区内においては、貸付金額と貸付期間の上限その他の制限を定めることを条件として、出資法の上限金利を緩和して年40.004%まで認めるようにする、というものである。

 しかしながら、本件提案は、極めて問題が多く、当会はこれに対して強く反対するものである。

 

2 協会による本件提案は、①平成12年の出資法改正により上限金利が引き下げられたことにより、貸金業者が貸付を抑制するようになり、資金需要者が貸金業者から貸付を受けることができなくなった結果、ヤミ金融を利用するようになった、②従って、上限金利を緩和し貸金業者が資金需要者に対して貸付を行いやすくすることがヤミ金融被害の防止につながる、との考えを根拠とするものである。 

 しかしながら、以下のとおり、協会のこのような考えが誤りであることは明白である。

 

(1)①について

出資法の上限金利の引下げがヤミ金融被害の増加を招いたなどという社会的事実は存在しない。

 ヤミ金融は平成6年ごろにはすでに発生しており、出資法の改正がなされた平成12年に先立つ平成10年ころには、ヤミ金融の跋扈がすでに大きな社会問題となっていた。例えば、東京の有しの弁護士等のグループは、平成11年7月には、ヤミ金融245業者について警視庁に対し事実上の刑事告発を行うに至っている。

 また、平成12年以前にも数次にわたり出資法が改正され、上限金利の引き下げが順次行われてきているが、上限金利引き下げのたびにヤミ金融の被害が増大してきたという事実もない。

 さらに、平成12年の出資法改正以降も、消費者金融業者の貸付残高は年1兆円規模で増加を続けているのであり、上限金利の引き下げが貸付を抑制的にさせているという事実もない。

 そもそも、ヤミ金融が跋扈した大きな要因は、ヤミ金が狙う多重債務者が近年急増したことと、出資法違反に対する取り締まりが不十分なことにある。

 上限金利引き下げがヤミ金融被害の増加を招いたなどという社会的事実はなく、本件提案は、そもそもその前提に大きな誤りがある。

 

(2)②について

 ヤミ金融がターゲットとする顧客層は、多数の貸金業者に対して多額の負債を抱え、中小の貸金業者からも貸付を拒絶されるような多重債務者である。

 本件提案のようにこのような多重さ武者に対して高利で新たな貸付を行うことは、多重債務者の債務をさらに増大さえることにほかならず、ひいてはその経済生活の破綻を促進させる結果につながることは明らかである。同時にそれは、ヤミ金融のターゲット層をさらに拡大させることをも意味する。このように、

上限金利を緩和することは、ヤミ金融被害の防止策になりうるどころか、むしろ多重債務者のさらなる増加を促すものであり、ひいてはヤミ金融被害者を増加させる恐れが極めて大きいのである。 そもそも、近年における多重債務者の急増は、金利規制の甘さによる高利貸付の横行、債務者の経済力に見合わない過剰融資の横行に主要な原因が存するところであるが、本件提案は、まさにこの「高利貸付」「過剰融資」の正当化をはかろうとするものにほかならない。貸金業者のそのような姿勢こそが多重債務問題を深刻化させていることを指摘しないわけにはいかない。

 ヤミ金融被害の防止のために必要とされているのは、新たな高利貸付ではなく、金利規制の強化、過剰融資の抑制をはじめ、社会保障の充実や政府・自治体等による低利融資制度の充実、相談窓口の拡充等といった、多重債務者の予防・救済策なのである。

 

3 協会は、上限金利の緩和が正しく運用されるように、①貸付期間の制限(貸付期間を原則3ヶ月以内として最大でも6ヶ月を越えないこととする)、②貸付金額制限(貸付金額を個人50万円以内、事業者150万円以内とする)、③担保・連帯保証人の不徴求、④協会に対する届出等、の仕組みを確保することを掲げている。

 しかしながら、まず①については、債務の書き換えを繰り返すことなどにより、貸付期間の制限は容易に潜脱することができるのであり、到底その実効性は期待できない。

 また、②についても、現在一般的に行われている無担保貸付における貸付金額とほとんど変わりはなく、何らの抑止効果も持たない。

 さらに③についても、債務者本人に対する過酷な取立てが行われる可能性は否定できないし、何よりも債務者本人の経済生活の破綻を招くことに対しては何らの予防措置にもなりえない。

 加えて、④についても、協会が実効性ある監督機能を営むことは期待しがたい。

 このように、①〜④の措置を講じたところで、到底、本件提案が正当化される

ものではない。

 

4 当会は、多重債務問題解決のため、これまでも何度も出資法の上限金利の引き下げを求めてきたところ、上限金利については、2007年1月までに必要な見直しが行われる予定となっている(出資法改正附則12条2項)。

 そのような状況の下において、出資法の見直し作業を待たずして上限金利の引き上げを実現しようという本件提案は、十分な検討の上で出資法改正という形で上限金利規制のあり方を見直そうという上記出資法改正附則の趣旨を没却せしめるものであることは明らかである。

 

5 出資法では、上限金利に違反する利息の受領等を刑罰の対象としているが、この罰則は、いわば金融秩序に関する基本的な刑罰法規である。従って、その適用は全国的に平等になされるべきであるのが大原則であるところ、何らの合理的理由もなく特定の地域に限定して刑罰法規の適用に差異を設けることは、地域間において極めて不平等な結果をもたらすことは明白であり、ひいては憲法の定める法の下の平等にも反することになる。

 

6 本件提案は、構造改革特別区域の制度趣旨にも反するものである。

 構造改革特別区域制度は、各地域の特性に応じて規制の特例措置を定め、教育、農業、社会福祉などの分野における構造改革を推進し、地域の活性化を図り、国民経済を発展させることを目的とするものである。

 しかるに、本件提案は、なにゆえ特定の地域だけに高金利を認める必要があるのか、全く明らかにされておらず、単に高利貸金業者の保護を目的としていることが明らかな提案であって、構造改革特別区域を設けた趣旨に反するものであることは明白である。

 

7 よって、当会は、本件提案に対して強く反対するとともに、政府に対し、本特区提案を採用しないことを求める。

 

 以 上

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