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平成16年6月22日会長声明

2004年06月22日

有事法制関連7法・3条約承認案件の成立に対する会長声明

6月14日、別紙記載の国民保護法・米軍支援法などの有事法制関連7法及び改正ACSAなど3条約承認案件が、参議院本会議において可決承認され、成立した。

 

当会は、一昨年4月、別紙記載の「武力攻撃事態対処法」など有事法制3法案が国会に提出された後、同法案が憲法の根本規範である人権保障規定や民主的な統治構造を大きく変質させる危険があること等を指摘し、その廃案を求めるとともに、会内に有事法制問題対策本部を設置し必要な調査研究活動や市民集会の開催などを系統的に行ってきた。

 

また、当会は本年3月に国会に上程された上記有事法制関連7法案に対しても、「国民保護法案」は、国民保護措置の実効性に問題があるとともに平時から国民を統制する危険が高く、また、国民の戦時ムードをかりたて紛争の平和的解決の可能性を自ら塞いでしまうおそれがあること、「米軍支援法案」等は憲法が禁止する集団的自衛権の行使や交戦権の行使をも可能とする措置を内容とし、市民の生活や権利に対する重大な影響があること等を指摘し、これらの法案を廃案にするよう強く求めてきた。更に、改正ACSAも、米軍と自衛隊との物品役務の相互提供の適用範囲を武力攻撃事態等やイラク特措法などにも拡大し、しかも弾薬提供も可能にするなど、重大な憲法問題を有する重要案件であった。

 

しかし、衆議院さらに参議院においても、当会が指摘した問題点などについて、十分な論点整理や徹底した審議が行われたとはいえず、国民にも法案の必要性や問題点が十分認識されず、国民的議論がなされることもなかった。このように手続的にも広く十分な議論を尽くさないまま、有事法制関連7法・3条約承認案件が成立したことは、誠に遺憾と言わざるを得ない。

 

当会は、「有事」の名の下に、憲法が保障する人権が制約され、国民主権と平和主義がないがしろにされることのないように、今後も引き続き、有事法制のあり方や運用を厳しく検証してゆくとともに、政府等関係諸機関に対して、国際紛争の解決は、国際協調主義に則り非軍事的方法によることを真摯に模索探求し、今後、憲法違反の疑いが極めて強い有事法の発動を決して行わないよう強く求めるものである。

 

 2004年6月22日

  仙 台 弁 護 士 会 

   会 長  鹿  野  哲  義

 

 

(別紙)

 

 

 

〔有事法制3法案〕

 

1 武力攻撃事態等における我が国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律(以下、「武力攻撃事態対処法」という)

 

  2 安全保障会議設置法の一部を改正する法律

 

3 自衛隊法及び防衛庁の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律

 

 

 

〔有事法制関連7法案〕

 

1 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(以下、「国民保護法」という)

 

2 武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律(以下、「米軍支援法」という)

 

3 武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律

 

  4 武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律

 

  5 自衛隊法の一部を改正する法律

 

  6 国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律

 

  7 武力攻撃事態における捕虜等の取り扱いに関する法律

 

 

 

〔3条約承認案件〕

 

  1 日本国の自衛隊とアメリカ合衆国軍隊との間における後方支援、物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の協定を改正する協定(以下、「改正ACSA」という)

 

  2 1949年8月12日のジュネーブ諸条約の国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書Ⅰ)

 

  3 1949年8月12日のジュネーブ諸条約の非国際的な武力紛争の犠牲者の保護に関する追加議定書(議定書Ⅱ)

 

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