裁判員制度導入に伴う刑事裁判手続の抜本的改革を求める会長声明
去る5月21日、「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」(以下「裁判員法」という。)および「刑事訴訟法等の一部を改正する法律」(以下「刑事訴訟法改正法」という。)が成立した。刑事訴訟法改正法は、裁判員制度の導入を理由にあるいは契機として、刑事訴訟法手続を改正しようとするものであり、2つの法律は密接不可分の関係にある。
適切な刑事裁判を実現するためには、被疑者・被告人の防御権及び弁護人の権利(以下「防御権」という。)を十分に尊重したうえで、適正かつ充実した審理を行うことが何よりも必要である。とりわけ、裁判員制度のもとでは、一般国民が裁判内容の決定に加わり、連日開廷による集中審理が行われることになるから、防御権を十分に確保しつつ、一般国民である裁判員にも分かりやすく、その主体的・実質的関与を可能とする証拠調べ手続が行われるべきである。具体的には、少なくとも、①直接主義・口頭主義を徹底すること、②取調全過程を可視化(録音・録画)すること、③完全な証拠開示と十分な準備期間を確保すること、④身柄拘束制度を抜本的に改革することが、必要不可欠となる。
ところが、裁判員法及び刑事訴訟法改正法においては、抜本的改革が必要と考えられる上記①ないし④については、改革がほとんど実現されていない。それにもかかわらず、裁判員制度を導入して、連日開廷による集中審理を行うならば、防御権を犠牲にした拙速な裁判を生み出すこととなり、そのようなことは到底容認できることではない。上記①ないし④の刑事訴訟手続の抜本的改革の実現は、裁判員法の施行に欠かすことができない要件である。
今後、最高裁判所、検察庁及び日弁連による刑事手続の在り方等に関する協議会において、上記①ないし④の要件について、国民に開かれた議論を行ったうえで、遅くとも裁判員法の施行までに、上記のような刑事訴訟手続の抜本的改革を実現すべきである。
2004年6月22日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 鹿 野 哲 義