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平成16年5月19日会長声明

2004年05月19日

有事7法案の廃案を求める会長声明

1 政府は、本年3月9日、別紙記載の国民保護法案、米軍支援法案、特定公共施設等利用法案、外国軍用品海上輸送規制法案等のいわゆる有事7法案を国会に上程し、本年4月13日から審議が行われている。

 

2 当会の基本的見解

 

当会は、有事法の総則的規定である武力攻撃事態法案に対して、①武力攻撃事態や武力攻撃予測事態(併せて「武力攻撃事態等」と称する)の概念が曖昧であること、②「自衛」の範囲を大きく超え、憲法前文や9条の定める平和主義に抵触する重大な疑念があること、③市民の人権を大幅に制限し、憲法の保障する基本的人権を侵害する危険が高いこと、などを理由に廃案にするよう求めてきたが、武力攻撃事態法の各則ともいうべき今回の7法案についても、これらの批判があてはまる。

 

3 有事7法案の問題点

 

① 国民保護法案の問題点

 

国民保護法案は、武力攻撃事態等及び緊急対処事態という2つの事態における「国民保護のための措置」として、住民の避難・避難住民の救援・武力攻撃災害対処措置などを定めている。

 

同法案によれば、放送事業者である指定公共機関等に対して、政府が資料や情報の提供を求めたり、対策本部長が発令した警報の内容を放送する責務が課される。報道機関は、実際に武力攻撃事態が発生した場合には、当然に政府の発令した警報の内容を報道するはずである。にもかかわらず敢えて政府に対する情報提供や政府の発令した警報報道を責務として規定することは、逆に、報道に対して規制を行い、報道の自由や市民の知る権利に対して不当な制約を課すことになる危険性が高い。

 

また、同法案は、立ち入り制限区域を定めて市民の立ち入りを制限し、また市民に対して特定物資の売渡・保管、土地・家屋の使用、土地・建物・物資について立入・検査など大きな権利の制約を課すことを内容としている。他方で、知る権利、集会・表現の自由の保護についての具体的な措置が確保されておらず、「国民の権利」保護としては極めて不十分な内容といわねばならない。

 

更に、同法案は、平素から、国民に対する訓練と啓発に努めなければならないと規定しているが、特定の軍事シナリオを前提にして計画が作成され、地域社会が軍事シナリオに沿って統合・訓練されることになれば、国民の戦時ムードをかりたて、紛争の平和的解決の可能性を自ら塞いでしまうおそれすらある。

 

このような重大な人権問題が発生する可能性がありながら、他方で、避難等の実効性については、鳥取県のシュミレーションでも、同県東部の住民2万6000人が隣県の兵庫県にバスで避難するのに11日間も要するなど、非現実的との指摘がなされている。

 

しかも、国民保護法案では、武力攻撃事態等と異なる「緊急対処事態」というさらにあいまいな事態を規定し、その対処方針に国会承認を不要としながら、武力攻撃事態等の場合と同様に市民の権利を制限できることとしており、その危険性は極めて大きいものである。

 

② 米軍支援法案及び特定公共施設等利用法案の問題点

 

米軍支援法案は、武力攻撃事態等と認定された場合において、日本による何らのコントロールもなされない米軍に対して、自衛隊等に属する物品や自衛隊等の役務の提供を認める。自衛隊が米軍に対して役務等を提供するということは、自衛隊が米軍の指揮下におかれることになるものである。また、特定公共施設等利用法案は、武力攻撃事態等と認定された場合において、日本国内の港湾施設・飛行場・道路・海空域及び無線通信を、自衛隊、米軍あるいはこれらから依頼を受けた業者などの優先的使用権下におくものである。

 

そして、上記の武力攻撃事態等が、公海上で米軍に対する後方支援活動を行っている自衛隊への攻撃や攻撃が予測される場合も含むという政府見解からすれば、これらの法案は、日本の防衛とは直接関係のない場合にも、米国の軍事行動を支援協力する体制を日本国内に作り、また自衛隊をして協力させることになる。これは、従来の政府解釈によっても、憲法第9条によって禁止されている集団的自衛権の行使に該当するおそれが非常に強い。

 

③ 外国軍用品海上輸送規制法案の問題点

 

外国軍用品海上輸送規制法案は、軍用品等を輸送していると疑われる船舶を、日本領海のみならず周辺公海においても強制的に停船させ、積荷を調べ、武器使用も認めるものであり、憲法9条が禁じた武力行使・武力による威嚇、さらに交戦権の行使に該当するおそれがある。

 

④ 上記法案と市民生活との関係

 

国民保護法案は、最初に述べたように、市民の権利を制限し市民生活に重大な影響を及ぼすが、さらに、米軍支援法案は、適正手続の保障がないまま、米軍の緊急通行、通行妨害となっている物件の撤去を認め、さらに、米軍の土地家屋の使用のための立入検査の拒否に対する罰則をも規定している。米軍の軍事行動の支援のために市民の基本的人権の制約がなされるのであり、その問題は重大である。また同様に特定公共施設等利用法案は、米軍及び自衛隊に日本国内の港湾・飛行場・道路・海空域及び無線通信について優先利用を認めることによって、市民や業者の交通・輸送・通信を大きく制約し、日常生活に重大な影響をあたえるものである。

 

4 結論

 

以上のべてきたように、これらの7法案のうち国民保護法案、米軍支援法案、特定公共施設等利用法案、外国軍用品海上輸送規制法案は、平和主義・基本的人権の尊重という憲法の根幹を損なう重大な危険をはらんでおり、その他の3法案についても、憲法に反するおそれのある武力攻撃事態法を補完するもので問題である。

 

当会は、これら法案のもつ重大性・危険性に鑑み、有事7法案に反対し、廃案にすることを強く求めるものである。

 

 2004年5月19日

  仙 台 弁 護 士 会 

   会 長  鹿  野  哲  義

 

 

 

(別紙)

 

  1 武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律案(以下、「国民保護法案」という)

 

  2 武力攻撃事態等におけるアメリカ合衆国の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律案(以下、「米軍支援法案」という)

 

  3 武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律案(以下、「特定公共施設等利用法案」という)

 

  4 武力攻撃事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律案(以下、「外国軍用品海上輸送規制法案」という)

 

  5 自衛隊法の一部を改正する法律案

 

  6 国際人道法の重大な違反行為の処罰に関する法律案

 

  7 武力攻撃事態における捕虜等の取り扱いに関する法律案

 

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