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拙速な民法の成年年齢引下げに反対する会長声明

2018年05月17日


民法の成年年齢を18歳に引き下げる民法改正案が本年3月13日に閣議決定され、現在衆議院で審議中である。
当会は、民法の成年年齢引下げについて、2015年(平成27年)8月27日の会長声明及び2017年(同29年)1月26日の意見書において、未成年者取消権喪失による消費者被害増加の問題、クレジットカードやフリーローン・消費者金融の使用による若者の多重債務をはじめとする消費者被害件数及び被害額の増大のおそれ、現状の消費者教育が極めて不十分であるという問題等を指摘し、反対の意見を表明してきた。
この点、かかる問題点は、引下げを適当とした2009年(平成21年)10月の法制審議会の意見においてさえ、拙速に引下げを行えば、消費者被害の拡大等様々な問題が生じるおそれがあるため、引下げ前に問題解決のための施策が実現されねばならないとし、引下げの時期は、関係施策の効果等の若年者を中心とする国民への浸透の程度や国民の意識を踏まえる必要があると指摘されるとおり、極めて重大なものである。
しかし、現在に至って上記問題点は何ら解消されていない。すなわち、現在検討中の消費者契約法の改正案が、若年者の消費者被害保護対策との位置づけとも言われているところ、同改正案は、対象の曖昧さや立証の困難性等から、到底、現行の未成年者取消権同様の権利或いは代替策とはいえないものである。また、平成29年の消費者白書記載の通り、15歳から25歳までの若年者のうち消費者教育・啓発を受けたことがある者の割合は4割に満たず、若年者の過半数は、未だ十分どころか消費者教育や啓発すら受けたことが無い状況にあり、若者の消費者被害予防や救済のための基礎的基盤すら未整備である。さらに、成年年齢引下げ対応検討ワーキンググループの最終報告書や消費者教育推進会議の平成29年4月付「消費者教育の推進に関する基本的な方針 中間見直し」でも指摘されている通り未成年者に対する消費者教育は質・量共に極めて不十分であり、成年年齢引下げによる弊害を防止するための施策とは言い難い。加えて、民法の成年年齢の引下げについて、平成20年、同25年の内閣府世論調査では78%以上が反対、本年4月に報道機関が実施した世論調査によっても反対が56%とされ、国民的な合意が形成されているとは到底評価し得ないものである。
当会は本年3月7日に教員・学生らの参加も得て成年年齢引下げについて考えるシンポジウムを開催したところ、同シンポジウムにおいても、成年年齢引下げによって生じる影響について市民は殆ど理解できていないという意見が述べられた。当会会員が『現場』で実践している消費者教育の場でも同様の実態が強く実感されるものである。
よって、上記各問題点が何ら解消されておらず、今国会において成年年齢の引下げを決定するのは拙速であり、かかる引下げに反対する。

2018年(平成30年)5月17日

仙 台 弁 護 士 会

会 長 及 川 雄 介

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