自衛隊のソマリア沖への派遣に反対する会長声明
政府は、本年1月28日、ソマリア沖海賊対策のために自衛隊法82条に基づく海上警備行動として、海上自衛隊をソマリア沖に派遣する方針を決定し、これを受けて、3月13日、浜田防衛大臣は海上警備行動を発令し、翌14日、護衛艦2隻がソマリア沖に向けて出航した。また、これに加え、今国会に海上自衛隊を派遣するための新法を上程することも報じられている。
しかしながら、自衛隊法82条による海上警備行動は、日本領海の公共秩序を維持する目的の範囲内に止まるべきものであるところ(自衛隊法3条1項)、今回の海上警備活動の発令は、わが国の領海を遙かに超えてソマリア沖まで海上自衛隊を派遣するものであって、憲法9条の趣旨に反するものである。
また、海賊行為等は犯罪行為であるから、本来警察権により対処されるべきものであり、自衛隊による対処にはそもそも疑問がある。
さらに、国連安全保障理事会は、海賊対策に協力する国家に武力行使を含む「必要なあらゆる措置を講じること」(同理事会1851号決議)を認めているから、この海域に自衛隊が派遣されれば、自衛隊が武力による威嚇、さらには武力行使に至る危険性があり、武力行使を禁止した憲法9条に反するおそれがある。
確かに、ソマリア沖の海賊行為の頻発は、国連安保理決議がなされているなど、深刻な国際問題となっている。この問題解決のために国際協力が重要であることは明らかである。しかし、わが国が今、国際社会の中でソマリア沖海賊対策としてなすべきことは、日本国憲法が宣言する恒久平和主義の精神にのっとり、問題の根源的な解決に寄与すべく、関係国が日本に求める要望等に配慮しながら、非軍事的な人道・経済支援や沿岸諸国の警備力向上のための援助などを行うことである。
よって、当会は、ソマリア沖に自衛隊を派遣する海上警備行動の発令に反対するとともに自衛隊をソマリア沖に派遣するための新法の制定にも反対するものである。
2009(平成21)年3月17日
仙台弁護士会
会 長 荒 中