2023年11月8日、2023年度司法試験の最終合格者(以下「司法試験合格者」という。)が1781人と発表された(受験者数3928人・合格率45.3%)。
近年の司法試験の最終合格者数、受験者数、及び合格率は、2019年度が1502人(受験者数4466人・合格率・33.59%)、2020年度が1450人(受験者数3703人・合格率39.16%)、2021年度が1421人(受験者数3424人・合格率41.5%)、2022年度が1403人(受験者数3082人・合格率45.5%)であり、1781人もの多数の合格者数は近年にない。
なお、2023年度司法試験に関しては、本年度から在学中受験が導入されたことから、受験者数が昨年度と比べて846人増加したという事情がある。
しかしながら、2019年度の受験者数は本年度より約500名多い4466人であったが合格者数は本年度より約280人少ない1502人であった。そのため、受験者が昨年度より大幅に増加したことは、今年度の合格者数を大幅に増やす理由とはならない。
根本的な問題は、本年度の司法試験合格者数が法的需要に見合っていないことである。
すなわち、当会は、2015年2月21日開催の定期総会において、法的需要に見合わない弁護士人口の増加によって弁護士の就職難が生じ、これによりOJT不足や法曹志願者の激減といった事態が生じることを懸念して、司法試験合格者数を年間1000人程度とするよう求める、「適正な司法試験合格者数への減員を求める決議」を行った。2015年当時から現在まで、就職難は一定程度緩和されたとはいえ、後述のとおり、依然として法的需要に見合わない弁護士人口の増加は続いている以上、当会としては、1781人もの司法試験合格者数が出たことを問題視せざるを得ない。
そもそも、長年にわたり裁判官及び検察官の採用人数が抑制されている現状では、司法試験合格者の大多数は、弁護士登録を申請することとなる。
弁護士数は、2012年3月31日時点では3万2088人だったが、2023年12月1日時点では4万4777人と11年間で約1万2000人も増加しており、依然として弁護士増加のペースが急激であることに変わりはない。日弁連による将来予測では司法試験合格者数を年間1500人で固定した場合、2043年には弁護士人口は約6万2500人となり、20年間で約1万8000人も増加することになる。また、年間司法試験合格者数を1000人とした場合でさえ、司法試験合格者数は長年500人程度であったため、弁護士人口の増加は、当面の間続く見込みである。
その一方で、民事訴訟事件の新受件数(地方裁判所)は、2011年において約19万6000件であったのに対し、2021年では約13万件となっており、10年間で約34%も減少している。刑事事件の事件総数(地方裁判所)も同様であり、2011年において約5万8000件であったのに対し、2021年では約4万7000件と、10年間で約19%も減少している。
この点に関して、以上のとおり、裁判所が関わる典型的な紛争案件は減ったが、非紛争案件及び裁判所が関わらない紛争案件は増えたので法的需要は減っていないとの意見がある。
確かに、日弁連2022年3月27日付「法曹人口政策に関する当面の対処方針~司法試験合格者数の更なる減員に関する検証結果~」の「論点項目ごとの検討結果」第1章の2(6)によると、「経済的基盤調査の結果によれば、弁護士個人の民事事件の業務別事業(営業等)収入の総額は、2009年から2019年までの10年間で、①非紛争案件のうち財産管理案件(破産管財、後見人等)、②紛争案件のうち裁判所案件(調停、訴訟、強制執行、破産申立て等)の2類型については45%程度の減少が見られたが、一方で、③非紛争案件のうちその他のもの(契約書案件等)、④紛争案件のうちADR等及びその他のもの(交渉等)については、5%~30%程度の増加が見られた。」と報告されている。
しかし、「非紛争案件のうち財産管理案件(破産管財、後見人等)」と「紛争案件のうち裁判所案件(調停、訴訟、強制執行、破産申立て等)」が45%程度も減少したのであるから、たとえ「非紛争案件のうちその他のもの(契約書案件等)」と「紛争案件のうちADR等及びその他のもの(交渉等)」が5%~30%程度増加したとしても、これによって、年間1500人程度の司法試験合格者を維持することによる弁護士人口の大幅な増加を吸収することは困難であるといわざるをえない。
よって、当会は、引き続き政府に対し、上記2015年定期総会決議を踏まえ、今後の司法試験合格者数について減員を進め、年間1000人程度とするよう強く求める。
2023年(令和5年)12月21日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 野 呂 圭