本年1月1日に発生した令和6年能登半島地震で亡くなられた方々に哀悼の意を表するとともに、被災された皆さまに、心からお見舞いを申し上げます。
当会は、東日本大震災以降、個々の被災者の命と尊厳を守り、その日常生活を取り戻すため、無料電話相談、避難所等への出張相談、在宅被災者の戸別訪問による支援、災害ケースマネジメントの提言等に関する被災者支援活動を展開し、また、支援活動、支援者のバックアップ、法制度の提言などを行ってきました。
今回の地震では、能登地方を中心に広範囲に被害が生じ、交通網が寸断されて孤立し、いわゆるTKB(トイレ、キッチン、ベッド)が整っていない避難所での避難、車中泊あるいは在宅避難など過酷な状況を強いられている被災者が多数いらっしゃいます。しかも、令和5年奥能登地震の被災地と重なる地域もあり、復旧半ばで再び被災する絶望感、恐怖感、苦しみは計り知れません。
報道等による情報を前提にしますと、建物倒壊等により避難生活が長期化する可能性が高く、適切な住まいが確保されなければ、いわゆる災害関連死が多数発生することが危惧されます。東日本大震災の災害関連死の事例でも、避難生活の肉体的・精神的負担を原因とするものが大きな割合を占めており、早期にその負担を軽減する支援が実施されなければ、救えたはずの命が失われかねません。
そこで、避難所のTKBの整備、衛生的な環境の維持、避難者の健康管理のための十分な体制の確保、被災者のプライバシーの確保、寒さ対策、入浴及び洗濯の機会の確保など、生活環境の整備等を早急に実施することが必要です。
そして、余震も続き、生活物資の確保も困難な状況に鑑みるならば、東日本大震災でも展開された広域避難や被災自治体の外にある安全な地域にあるホテルや旅館等宿泊施設を活用し、集団的な緊急避難を早急に実現することによって、被災者の命を守る必要があります。実際に、令和2年7月豪雨や令和2年台風10号の際には、ホテル・旅館、国の研修施設等を避難所として活用し、被災者の方の当面の生活環境を整えた事例があります。
被災した県や自治体には、被災者の命を守るため、余震が落ち着き、安全に生活できる環境が整うまでの期間、早急に避難所の環境整備を行うとともに(令和6年1月1日付け内閣府事務連絡「避難所の確保及び生活環境の整備等について」参照)、広域避難やホテル、旅館等の宿泊施設を活用した被災者支援を実施することを求めます。
国には、災害救助法施行令第3条第2項に定める被災地自治体との協議などを通じ、過去の災害における救助を上限とすることなく、被災地の実情に応じ、被災者に十分な救助を実施することを求めます。
被災者の皆さま、被災地自治体の職員の皆さまにおかれましては、大変な状況にあると存じますが、当会は、被災地弁護士会と協力しながら、東日本大震災における経験に基づき、被災者の皆さまを全力で支援する所存です。
2024年(令和6年)1月5日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 野 呂 圭