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刑事手続IT化に関する法制審議会の要綱に反対するとともに、オンライン接見の法制度化を求める決議

2024年02月22日

刑事手続IT化に関する法制審議会の要綱に反対するとともに、オンライン接見の法制度化を求める決議

1 法制審議会(総会)は、2024年2月15日、刑事法(情報通信技術関係)部会(以下「部会」という。)の取りまとめに基づき、刑事手続のIT化に関する要綱(骨子)(以下「要綱」という。)を採択し、小泉龍司法務大臣に答申することを決定した。
 部会の設置に先立つ「刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会」による「取りまとめ報告書」において、刑事手続における情報通信技術は、刑事手続に携わる者の負担軽減や合理化のみを目的とすべきではなく、「被疑者・被告人、被害者をはじめとする国民」の「権利利益(憲法上保障されたものを含む)の保護・実現に資するために活用されるべきである」との基本的認識が確認されていたところ、要綱は、以下のとおり、もっぱら捜査機関の便宜のための制度を列挙し、国民のプライバシーの権利を始めとした憲法上の権利を保護する仕組みを欠く内容であって、「取りまとめ報告書」で確認された基本的認識に反するものといわざるを得ない。

2 まず、捜査機関による電磁的記録提供命令の創設である。これは、捜査機関が電磁的記録を利用する権限を有する者に対し、刑事罰をもって電磁的記録の提供を強制することが可能とするものである。今日、スマートフォンやクラウド等には、大量のプライバシー情報や業務上の秘密が電磁的記録として保管されており、捜査機関がかかる電磁的記録を収集・蓄積することは、「私的領域に侵入されることのない権利」やプライバシー権などの憲法上の権利を著しく侵害する危険を伴うものである。その危険の程度は、現行刑事訴訟法の制定当時には想定されていなかったものであり、他の強制処分より厳格な要件・手続が定められている通信傍受と比較しても、同等以上である。したがって、捜査機関が電磁的記録の提供を命じ、あるいはその記憶媒体を押収するに当たっては、被疑事実との関連性のない電磁的記録を収集してはならないことを明確にし、情報を取得された国民に不服申立ての機会を保障し、違法に収集・取得された電磁的記録の消去を義務付けるなど、厳格な要件・手続を定めることが必要不可欠である。しかるに、要綱は電磁的記録提供命令の令状発付について厳格な要件を設けてはおらず、情報を取得された国民にその旨を通知して不服申立ての機会を保障することもせず、違法な処分により取得した電磁的記録の消去も義務付けていない。捜査機関によって犯罪と無関係な国民の情報や秘密として保護されるべき情報が収集・蓄積されていく危険性があり、個人の「私的領域に侵入されることのない権利」やプライバシー権の侵害にとどまらず、弁護人との秘密交通権が侵害される危険や、企業、労働組合、報道機関、市民団体、政党等の団体の活動が監視されることとなる危険を有するものであって、到底、看過することができない。加えて、自己に不利益な供述を強要されない権利は憲法上保障された権利であり、電磁的記録提供命令をもってしてもパスワード等の供述を強要することができないことは当然であるものの、要綱では、命ずることのできる内容を文言上明確に規定しておらず、命令を執行する現場において、国民を誤解させ、あるいは誤解に乗じて、事実上供述を強要する運用がなされることが強く懸念される。

3 また、要綱では、訴訟に関する書類の電子化、電磁的記録による令状の発付・執行等に関する規定の整備、勾留質問・弁解録取手続をビデオリンク方式(映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方式。以下同じ。)で行うための規定を新設している一方で、被疑者・被告人がビデオリンク方式で弁護人等と接見し(以下「オンライン接見」という。)、電子化された書類を授受する権利を実現する制度を設けていない。弁護人の援助を受ける権利や防御権は憲法上保障されている権利であり、オンライン接見に新たな設備の整備等に伴い人的・経済的負担がかかることを理由にこれを認めないことは、捜査手続を効率化する場面では問題としない人的・経済的負担を被疑者・被告人の権利保護の場面でのみ問題とするものであり極めて不合理・不公正であり、国民の権利利益を軽視するものであるといわざるを得ない。
 接見交通権は弁護人の援助を受ける権利(憲法34条、37条)に由来する権利であり、身体拘束後、直ちに弁護士の援助を受けられるようにするためには、オンライン接見を認める必要性は大きい。公判準備及び公判段階においても、勾留されている被告人は弁護人が留置施設・刑事施設を訪問しない限り打合せをすることができない現状において、特に施設が弁護人の法律事務所から遠く離れている場合には被疑者の防御権に深刻な支障を来しており、こうした不利益を解消するために、オンライン接見を活用できるようにすべきである。

4 このほか、ビデオリンク方式による証人尋問制度の拡充及び勾留質問の創設が盛り込まれているが、被告人の反対尋問権や被疑者の裁判官と対面して陳述する権利は安易に制約すべきではない。
 このように、要綱は、もっぱら捜査機関の便宜を重視し国民の憲法上の権利を保護する仕組みを欠く内容となっている。

5 よって、当会は刑事手続IT化に関する法制審議会の要綱に反対するとともに、オンライン接見の法制度化を求めるものである。

2024(令和6)年2月22日

  

仙 台 弁 護 士 会

    

会 長  野 呂  圭

提 案 理 由

第1 はじめに
 1 刑事手続においては、犯罪事実に関する証拠の収集・保全、犯罪事実についての存否の主張・立証、犯罪事実の認定等すべての場面において、主として書面が用いられてきた。また、刑事手続ではその多くの部分を人が対面する形で行われてきた。
 その一方で、現行の刑事訴訟法制定後70年以上が経過し、情報通信技術の進展は目覚ましく、紙媒体が担っていた役割は多くの場面で電子データによって代替されているほか、画像・映像等を含む大量の情報を遠隔地間で瞬時に送受信したり、オンラインで接続することにより、遠隔地にいながら相手の顔を見て意思疎通を行うことも活用されてきている。
 刑事手続においても、円滑化・迅速化を図るため情報通信技術の活用は避けては通れない課題である。

2 しかし、合理化・効率化を求めるあまり国民の権利利益を制約・侵害することは許されないことはいうまでもない。
 法制審部会の設置に先立って、刑事手続の情報通信技術を活用する方策の在り方を検討した「刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会」においても、全11回の会議を経て議論状況をまとめた「取りまとめ報告書」の中で、以下のような基本的視点が重要であるとの認識が共有されている。
 すなわち、「刑事手続における情報通信技術の活用は、刑事手続に携わる者の負担を軽減し、その合理化に資するものであるが、それのみを目的とすべきではなく、『公共の福祉の維持と個人の基本的人権の保障とを全うしつつ、事案の真相を明らかにし、刑罰法令を適正且つ迅速に適用実現することを目的とする』(刑事訴訟法第1条)刑事手続の円滑かつ適正な実施に資するために、そして、被疑者・被告人、被害者をはじめとする国民について、捜査・公判に関与する負担を軽減し、それらの者の権利利益(憲法上保障されたものを含む)の保護・実現に資するために活用されるべき」(同報告書3頁)という基本的視点である。
 刑事手続における情報通信技術の活用は、それによって国民の権利利益を損なうことがあってはならない。憲法が私的領域に侵入されることのない権利、プライバシー権や弁護人の援助を受ける権利等を保障していることを十分に踏まえて検討されるべきである。

3 2024年2月15日、法制審議会(総会)は、刑事法(情報通信技術関係)部会の取りまとめに基づき、捜査から公判までの刑事手続をIT化するための要綱を採択し、法務大臣に答申した。
 しかし、要綱は、以下に述べるように、捜査機関の利便性の向上ばかりを図る内容であって、市民の権利を保護する規定を欠いており、著しくバランスを失している。

第2 電磁的記録を提供させる強制処分の創設に関する問題点
 1 要綱において、新たに電磁的記録を提供させる強制処分が創設され、裁判所によるもののほか、検察官、検察事務官又は司法警察職員(以下「捜査機関」という。)においても、犯罪の捜査をするについて必要があるときに裁判官の発する令状により、電磁的記録の保管者や利用権者に対し、電気通信回線を通じて電磁的記録を捜査機関が指定する記録媒体に記録・移転させて当該記録媒体を提出させる方法により、必要な電磁的記録を提供するよう命ずることができるとする捜査機関による電磁的記録提供命令が規定された。
 2 電磁的記録提供命令は主として電気通信事業者を被処分者として想定している制度であるが、情報通信技術の発展により、個人のプライバシーにかかわる情報や企業の業務上の秘密に該当する情報を含め大量の情報が電磁的記録としてスマートフォンやクラウド等の記憶媒体に蓄積されるようになった現代においては、当該提供命令により提供させる電磁的記録がクラウドに保存されている場合、従来の記憶媒体と比較にならないほど膨大な情報の中から対象となる電磁的記録を抽出しなければならない。被疑事実と関連性のない電磁的記録まで提供命令の対象とされ、無関係な電磁的記録を捜査機関が取得する危険性が否定できない。
 この点、部会では電磁的記録提供命令においても、令状に「記録させ、若しくは印刷させるべき電磁的記録」(刑訴法219条1項、107条1項)を記載することになるため、その対象を明確に特定し得ると説明されている。
しかしながら、捜査機関による電磁的記録提供命令は捜査の初期段階で行われことが想定され、令状は概括的な記載にならざるを得ない場合が多いため、その対象を明確に特定し得るといえるか疑問である。現状の実務においても、「本件に関係あると思料される…携帯電話機等の通信機器…及びこれらに関連する文書及び物件」などと裁判官が個別に必要性を判断していないことが明らかな差押許可状が発布され、それに基づいて犯罪事実と関連性のない大量の電磁的記録媒体が幅広く押収されているのが現状である。無関係な情報を捜査機関が取得することのないように、被疑事実との関連性を強く求める等の規定を設ける必要があるというべきである。

 3 また、情報を取得された者の権利を保護するためには、不服申立ての機会を保障することが必要不可欠である。そして、不服申立てを実効的に保障するためには自らの情報が取得されたことを知らなければならないが、電気通信事業者等第三者から電磁的記録が取得された場合、自らの情報を取得された当事者への通知規定が設けられていない。自らの情報を取得された国民は、情報を取得されたことを知らないまま、不服申立ての機会も与えられないことになる。
 電気通信事業者等は契約上、顧客である当事者に対し当該提供命令により情報提供したことを通知する義務を負っている場合はあるが、要綱では、捜査機関が電磁的記録提供命令を行うにあたり、みだりに当該提供命令を受けたこと及び提供を命じられた電磁的記録を提供し又は提供しなかったことを漏らしてはならない旨を命じることができ(秘密保持命令)、その期間については明示されず、「その必要がなくなったとき」まで持続するとされている。捜査のため秘密保持命令が必要な場合は否定できないものの、不服申立ての機会を保障するため、その期間について厳格な制限を設けるべきである。

 4 そして、電磁的記録提供命令が不服申立てにより取消された場合の原状回復措置として、捜査機関が取得した電磁的記録を消去することを義務付ける必要がある。消去することが義務付けられなければ、国民のプライバシー情報や企業の業務上の秘密を含む違法に取得された電磁的記録が捜査機関の手元に残ることになり、不服申立ての実効性を失わせ、違法な電磁的記録提供命令を抑止することができない。したがって、電磁的記録提供命令が取り消されたときは、記録させた電磁的記録については消去し、移転させた電磁的記録については被処分者に戻すとともに、捜査機関側で当該電磁的記録を複写していれば、その複写した電磁的記録についても消去しなければならないものとすべきである。
 5 さらに、電磁的記録提供命令は前述のように主として電気通信事業者からの電磁的記録の取得を目的として創設されたものであるにもかかわらず、被処分者を限定しておらず、被疑者・被告人も対象となり得る規定となっているところ、正当な理由がなく命令に違反したときは、1年以下の拘禁刑又は300万円以下の罰金に処するとされている。電磁的記録が被処分者にとって自己に不利益であり、かつ、供述としての性格を有する場合、電磁的記録の提供を刑罰によって強制されることは憲法38条1項に抵触しうるため、被処分者にとって自己に不利益な場合には、提供を拒む行為を罰しない旨明示すべきである。

第3 オンライン接見の必要性
 1 憲法は、何人も、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ、抑留又は拘禁されないと規定し(34条)、また、刑事被告人は、いかなる場合にも、資格を有する弁護人を依頼することができると規定して(37条3項)、弁護人の援助を受ける権利を保障している。これを受けて、刑事訴訟法では、被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人となろうとする者(以下「弁護人等」という。)と立会人なくして接見することができると定めている(39条1項)。

 2 被疑者及び被告人は、弁護人等と対面で接見する権利が認められているが、弁護人等の援助を十分に受けるようにするためには、対面に加え、オンライン接見を認めるべき必要性が高い。
とりわけ、逮捕直後の初回の接見は、身体を拘束された被疑者にとって、弁護人等の助言を得る最初の機会であって、直ちに弁護人に依頼する権利を与えられなければ抑留又は拘禁されないとする憲法上の保障の出発点を成すものであるから、これを速やかに行うことが被疑者の防御の準備のために特に重要である(最判平成12年6月13日)。しかし、弁護人等が留置施設や刑事施設に出向かない限り接見することができない現状では、身体拘束されている被疑者は、直ちに弁護人等の援助を受けられないことも少なくない。弁護人からの助言を受けないまま捜査機関から供述を迫られることは、正当な権利行使を困難にし、虚偽供述によるえん罪の原因ともなっている。すべての事件において身体拘束後、直ちに弁護人等の援助を受けられるようにすることは、憲法上の要請であり、その実現の手段として、オンライン接見を認めるべきである。
 公判準備及び公判段階においても、地域によっては、元々留置施設や刑事施設へ出向く負担が大きかったところ、近時、地方の拘置支所の収容停止・廃止や警察署の統廃合により、留置施設・刑事施設と弁護人の事務所が遠く離れている場合も多くなっている状況の下で、弁護人が留置施設・刑事施設に出向かない限り打ち合わせすることができないことは、被告人の防御にも大きな不利益が生じるものといえる。かかる不利益を解消するためにも、被疑者・被告人が弁護人等とオンライン接見を可能とすべきである。

 3 部会では、全国の留置施設及び刑事施設においてオンライン接見実現のための設備の整備について、人的・経済的負担がかかり、時間もかかるとの意見も示されている。しかし、新たな設備の整備に伴い人的・経済的負担が生じるのは、刑事手続の情報通信技術の活用全般に妥当することであり、被疑者・被告人の権利利益の保護の場面でのみ、こうした負担を問題とすることは不合理・不公正であるといわざるを得ない。
 4 2015年に改定された「国連被拘禁者処遇最低基準規則」(マンデラ・ルール)は、「国際連合が適切なものとして承認する被拘禁者処遇の最低条件を示すもの」(序則2第1項)であるが、同規則において「被拘禁者は、遅滞なく、傍受又は検閲されることなく、通信し、協議をするための十分な機会、時間及び設備を提供されなければならない」(同規則120第1項、同規則61第1項)とされているように、必要な設備を提供することは国の責務である。

 5 また、刑事訴訟法39条1項は、身体の拘束を受けている被告人又は被疑者について、弁護人等との間で、前述の接見に加え、書類又は物の授受をすることができると規定されているが、要綱では、刑事手続において取り扱う書類について、電子的方法により作成・管理し、オンラインにより発受することができるとされた一方で、被疑者・被告人と弁護人等の間の書類の授受に関しては、電子的方法により作成された書類をオンラインにより授受することは一切規定されていない。

 6 部会においては、電子的方法により作成された書類を被疑者及び被告人が閲覧するにあたり、これまでの紙媒体での書類等の授受と同等に被疑者及び被告人の罪証隠滅の防止等の措置を講じるために必要な物的設備・体制を全国一律に確保することが困難であることとの意見が出されているが、前述のとおり、被疑者・被告人の権利利益の保護の場面でのみ、人的・物的負担を問題とすることは不合理・不公正であることはオンライン接見の場合と同様である。証拠書類の多くが電子的方法により作成されることになる一方で、その検討を困難にすることは、被疑者及び被告人の防御権を侵害するものといえる。

第4 その他の問題点
 1 まず、要綱において、ビデオリンク方式による証人尋問制度の拡充が盛り込まれている。
憲法は、反対尋問の機会を確保し公正な裁判を確保するため、刑事被告人に対し、証人審問権を保障しているところ(37条2項)、証人がビデオリンク方式により、被告人や弁護人と対面することなく証言を行い、弁護人から非対面で質問を受ければ足りるものとすることは、証人を審問する機会が充分に与えられたということができず、被告人の証人審問権を制約するおそれが高い。
 弁護人は、反対尋問において、証人の視線の向きや顔色の変化など、証人の挙動や態度をつぶさに観察しながら質問を選ぶ必要があるところ、ビデオリンク方式により尋問を行う場合、こうした証人の挙動や態度の観察を困難にするものであり、反対尋問権を制約するものである。また、証人が被告人と対面することなく証言を行うことは、真実に反する証言を行う心理的抵抗を低減し、それを容易にする危険性がある。
 ビデオリンク方式による証人尋問は、2000年及び2016年の刑事訴訟法改正で導入されているが、反対尋問権の保障と証人保護の要請をいかに調整するか相当の議論を重ねて一定の要件を充たす場合に限定して導入されたものであり、刑事手続の情報通信技術の活用に乗じて、安易に反対尋問権を制約することは許されない。少なくとも、憲法上証人審問権が保障されている被告人に異議がある場合において、対面で反対尋問する権利を現行刑事訴訟法よりも制約することは許されないというべきである。

 2 また、要綱において、ビデオリンク方式による勾留質問の規定が盛り込まれている。しかし、勾留という重大な不利益に直面している被疑者が裁判官と対面して陳述する権利は安易に制約すべきでない。
 国際人権(自由権)規約9条3項は、「刑事上の罪に問われて逮捕され又は抑留された者」は「裁判官」の「面前」に「連れて行かれる」権利を有しており、自由権規約委員会は、一般的意見35号において、「個人は、裁判官又は司法権を行使することが法律によって認められている官憲の面前に実際に出頭するために連れて行かれなければならない。審問において被抑留者が実際に出頭することは、身体拘束中に受けた取扱いについて調査する機会を与え、継続して抑留する旨決定された場合に、再度の抑留の施設へ直ちに移送することを容易にする。したがって、これは、身体の安全についての権利並びに拷問及び残虐な、非人道的な又は品位を傷つける取扱いの禁止の保護手段としての役割を果たす」(パラグラフ34)という見解を示している。
 このように、「裁判官の面前に連れて行かれる権利」は、市民の自由を保護する重要な役割を有しており、ビデオリンク方式による勾留質問が認められるとしても、極めて限定的な場合に限られるべきである。

第5 結語
 以上のように、法制審議会における要綱は、国民の権利利益の保護・実現という視点を欠いたもので、捜査機関の便宜にのみ重点を置いた極めて不公正なものといわざるを得ない。私的領域に侵入されることのない権利、プライバシー権や弁護人の援助を受ける権利といった国民の権利を侵害するおそれが高いことのみならず、企業や各種団体等の活動が監視されることになる危険性を有している。
「被疑者・被告人、被害者をはじめとする国民」の「権利利益(憲法上保障されたものを含む)の保護・実現に資するために活用されるべきである」という「刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会」による「取りまとめ報告書」の基本的認識に立ち返り、被疑者・被告人の弁護人の援助を受ける権利を実効的に保障する法制度を設ける必要がある。
よって、当会は、刑事手続IT化に関する法制審議会の要綱に反対するとともに、オンライン接見の法制度化を求める。

以上

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