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すべての人にとって平等な婚姻制度の実現を求める会長声明

2024年08月21日

すべての人にとって平等な婚姻制度の実現を求める会長声明

 当会は、性的指向にかかわらず、すべての人が個人として尊重され、差別や偏見を受けることのない社会の実現を目指している。
 性的指向は、個々人が持つアイデンティティとして個人の人格の一要素を構成するものであって、個人の尊厳にかかる重要な法的利益として憲法13条に基づき尊重されなければならない。
 婚姻をするかどうか、いつ誰と婚姻をするかは、自身の人生を誰とどのように生きていくかという個人の幸福の追求について自ら行う意思決定の中で最も重要なものの一つである。すなわち、婚姻の自由の保障は、個人が尊厳をもってその人らしい人生を送り、その人にとっての幸福を追求するうえで必要不可欠であり、その重要性は性的指向により変わるものではない。性別を問わない婚姻の自由は、憲法13条及び憲法24条1項によって保障されているのであり、己の意思によっては変えられない性的指向の違いによって婚姻が認められないことは婚姻の自由を侵害するものとして憲法13条、24条1項に違反するとともに憲法14条1項に違反する不合理な区別であって、当然、「個人の尊厳」と「両性の本質的平等」によって画される立法裁量の限界を超えるものとして憲法24条2項にも違反する。
 2019年2月、札幌、東京、名古屋、大阪の4つの地方裁判所で、同性間で婚姻できないことは違憲であると主張する国家賠償請求訴訟(「結婚の自由をすべての人に訴訟」)が提起され、続いて2019年9月には福岡地裁で提起され、2021年には東京地裁で第二次訴訟が提起された。
 これらの訴訟のうち、2022年3月に札幌地裁で憲法14条1項に違反するとの判断が、2022年11月に東京地裁で憲法24条2項に違反する状態にあるとの判断が、2023年5月に名古屋地裁で憲法24条2項、14条1項に違反するとの判断が、2023年6月に福岡地裁で憲法24条2項に違反する状態にあるとの判決が、そして2024年3月に札幌高裁で憲法24条及び14条1項に違反するとの判断が、同日に東京地裁で憲法24条2項に違反する状態にあるとの判断がなされている。
 近年、我が国の国民及び地方自治体のなかで多様な性的指向についての認知が広がるとともに全国の自治体でパートナーシップ認証制度の導入が進み、2024年6月28日時点において458自治体で導入されている(“渋谷区・認定NPO法人虹色ダイバーシティ 全国パートナーシップ制度共同調査”.地方自治体のパートナーシップ制度登録件数|認定NPO法人虹色ダイバーシティ.2024-6-28. https://nijibridge.jp/ )。さらに、その中には、同性カップルに対し続柄欄に「夫(未届)」または「妻(未届)」と記載した住民票を交付する運用を開始した自治体も複数あるなど、パートナーシップ認証制度は今後更なる拡大が見込まれる。また、同性間での婚姻を求める手続として、宮城県内では、2024年2月14日、仙台市内の同性カップルが、仙台市太白区長に対して婚姻届の受理を求める家事審判の申立てをし、同手続は現在も係属中である。
 このように、日本国内においては、同性間での婚姻を求める声が高まっている状況にある。
 当会では、2021年2月27日、同性間での婚姻を認めていないことが憲法13条、憲法14条に違反するとして、「すべての人にとって平等な婚姻制度の実現とパートナーシップ認証制度の創設を求める決議」を行った。
 しかし、上記のように多様な性的指向の存在を柔軟に受け入れる制度の構築が広がりを見せ、多様な性的指向を前提とする同性婚が認められていないことが憲法に違反するとの司法判断が重ねられているにもかかわらず、国会及び政府は、法整備や解釈変更による同性間の婚姻を認める運用についての具体的な検討すら行っていない。
 国は、我が国において「すべて国民は、個人として尊重される」(憲法13条前段)ために、性的指向にかかわらずすべての人がその人らしく生活することが出来る社会をつくりあげる責務を負う。
 よって、当会は、国に対し、ただちに、当事者の性別に関わりなく婚姻を可能とする法整備に着手することを求める。

2024年(令和6年)8月21日

仙 台 弁 護 士 会

会 長  藤 田 祐 子

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