弁護士会ホーム > 「袴田事件」の再審無罪判決を受け、同判決を確定させることを求めるとともに、再審法の速やかな改正を求める会長声明

「袴田事件」の再審無罪判決を受け、同判決を確定させることを求めるとともに、再審法の速やかな改正を求める会長声明

2024年09月26日

「袴田事件」の再審無罪判決を受け、同判決を確定させることを求めるとともに、再審法の速やかな改正を求める会長声明

 2024(令和6)年9月26日、静岡地方裁判所は、いわゆる袴田事件(1980年11月に強盗殺人罪・放火罪で死刑確定)の第2次再審公判において、被告人とされた袴田巖氏に無罪の判決を言い渡した(以下「本件判決」という)。
 袴田事件で被告人とされた袴田巖氏は、2014(平成26)年3月27日静岡地方裁判所が再審開始とともに死刑及び拘置の執行停止を決定したことにより釈放されたものの、1980(昭和55)年11月19日に確定上告審で上告が棄却されて以来、40年以上にわたり死刑囚として死の恐怖の下に過ごすことを強いられてきた。釈放後も死刑囚として扱われ、再審公判においても、再び検察官から死刑求刑までなされた。これらの苦痛は計り知れない。袴田氏は、まさに人生の大半を自己のえん罪を晴らすための闘いに費やさざるを得なかったのであり、その残酷さは筆舌に尽くしがたい。袴田氏は、一刻も早く死刑囚としての地位から解放されなければならない。 
そこで、当会は、検察官に対し、公益の代表者の責務として、本件判決を真摯に受け止め、上訴権を放棄して直ちに無罪判決を確定させるよう強く求める。

 同事件を巡っては、本来無辜の救済を目的とするはずの、現行刑事訴訟法における再審に関する定め(再審法)の不備もまた明らかになった。袴田事件のみならず、現在も争われている多くの事件について再審手続が長期化し、えん罪被害者の救済が遅々として進まないことの原因は、各事件固有の事情にあるものではなく、現在の再審制度が抱える制度的・構造的問題にあるというべきである。
 すなわち、第一に、現行刑事訴訟法に再審請求審の手続規定、とりわけ手続の進行に関する明文の規定がないことである。そのため、審理の進行が各裁判所の裁量に委ねられ、ときに「再審格差」と呼ばれるような訴訟指揮における格差が問題とされてきた。
 第二に、証拠開示制度が不備であることである。再審開始決定を得た事件の多くにおいては、再審請求手続の中で初めて開示された検察官の手持ち証拠の中に、再審開始を導く重要な証拠が含まれていた。このような事態は、そもそも有罪判決を言い渡した裁判が、果たして武器の対等という刑事裁判の基本的な原則が守られた公平且つ公正な裁判であったのかに強い疑問を抱かせるものである。その上、現行刑事訴訟法では、再審における証拠開示制度が整備されておらず、これまた裁判所の裁量に委ねられているため、再審開始を導く重要な証拠が再審請求人に開示される保障がない。再審請求手続において十分な証拠開示制度を整備することが急務である。
 第三に、検察官による不服申立が許容されていることである。近年、再審開始決定に対する検察官による即時抗告や特別抗告が行われることが多く、その結果、袴田事件がまさにそうであったように、再審開始が遅延し、えん罪被害者の速やかな救済が阻害される事態が続いている。職権主義的審理構造のもとで、利益再審のみを認め、再審制度の目的をえん罪被害者の救済に純化した現行の再審請求手続においては、検察官は裁判所の審理に協力する立場に過ぎないのであるから、検察官に不服申立権を認める必要はない。
 この点、当会は、2023(令和5)年7月27日開催の臨時総会において、再審法の速やかな改正を求める決議を採択しているところであるが、本件判決を機に、改めて、政府及び国会に対し、えん罪被害者の迅速な救済を実現するため、以下の内容を含む再審手続に関する刑事訴訟法の各規定の適切かつ速やかな改正を求める。

 1 適正手続を保障する再審請求手続規定の整備
 2 再審請求手続における証拠開示の制度化
 3 再審開始決定に対する検察官による不服申立の禁止

2024年(令和6年)9月26日

仙 台 弁 護 士 会

会 長  藤 田 祐 子

ホームへ

  • 紛争解決支援センター
  • 住宅紛争審査会
  • 出前授業・出張講座
  • 裁判傍聴会のご案内
  • 行政の方はこちら
仙台弁護士会の連絡先
〒980-0811
宮城県仙台市青葉区一番町2-9-18
tel
  • 022-223-2383(法律相談等)
  • 022-223-1001(代表電話)
  • 022-711-8236(謄写関係)
FAX
  • 022-261-5945