「日本の死刑制度について考える懇話会」報告書の公表を受けての会長声明
昨年11月13日、「日本の死刑制度について考える懇話会」(以下「懇話会」という。)の報告書が公表された。
この報告書は、井田良座長(中央大学大学院教授、前法制審議会会長)の下、研究者、国会議員、検事総長や警察庁長官の経験者、犯罪被害者遺族等、多様な委員が参加して、12回に及ぶ集中的議論を経て、委員全員の一致した意見として、日本の死刑制度のあるべき方向性についての提言を行ったものである。
懇話会報告書は、冒頭で、「死刑は個人の生命を剥奪する究極の刑罰であり、他の刑罰(自由刑や財産刑)が個人の権利の一部を制限するのとは異なり、人権の基盤にある生命そのものの全否定を内容としている。しかも、人の行う裁判である以上、誤判・えん罪の可能性が常につきまとい、ひとたび誤った裁判に基づく執行が行われるに至れば、取り返しのつかない人権侵害となる。」、「現行の日本の死刑制度とその現在の運用の在り方は、放置することの許されない数多くの問題を伴っており、現状のままに存続させてはならない。」との「基本的認識」を示している。その上で、報告書は、「早急に、国会及び内閣の下に死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体を設置すること」を提言し、その会議体においては、特に「国際社会の中の日本」という視点、死刑と無期拘禁刑の分水嶺に関わる事件における特別な手続的保障の制度化の要否、被害者遺族の置かれた実情と支援の在り方、死刑を廃止した上で代替刑の創設等により国民の危険や不安を取り除けるのかどうか、死刑執行に至る手続における諸問題及び国民の死刑制度に関する意見を的確に集約する方法について、慎重かつ具体的な検討を行うべきことを提言している。
当会は、これまで、死刑が執行される都度、死刑執行に抗議する会長声明を出し、2020年8月27日に再審請求中の死刑囚に対する死刑執行の停止を求める意見書を公表し、2021年2月27日の定期総会において、政府及び国会に対し、死刑制度の廃止と死刑制度の廃止までの間の死刑執行の停止を求め、死刑制度の廃止に向けた取組を進めることを決議したが、懇話会報告書の上記「基本的な認識」及び「提言」において示された問題意識は、人権保障の理念に合致するものであり、当会としても、支持することができる。
よって、当会は、政府及び国会に対し、国会及び内閣の下に死刑制度に関する公的な会議体を設置することを求めるとともに、改めて死刑制度を廃止すること、死刑制度の廃止までの間、死刑の執行を停止することを求める。
2025年(令和7年)3月13日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 藤 田 祐 子