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最低賃金の大幅な引上げ及び中小企業への支援策の強化を求める会長声明

2025年05月22日

最低賃金の大幅な引上げ及び中小企業への支援策の強化を求める会長声明

 最低賃金は概ね毎年10月に改定されているが、その決定方式は以下のようなものである。まず中央最低賃金審議会が調査審議を行い、それを参考にして各都道府県の地方最低賃金審議会が調査審議を行って、その意見を聴いた上で各都道府県労働局長が地域別最低賃金の額を定めるという流れになっている。
 この地域別最低賃金については「地域における労働者の生計費及び賃金並びに通常の事業の賃金支払能力を考慮して定められなければならない」(最低賃金法9条2項)とされている。
 この点、物価の高騰は労働者の生計費に大きな影響を与えている。2024年度(令和6年度)平均で、物価の総合指数は2020年を100とすると109.5で、前年度比で3.0%の上昇となっている。そして、直近の2025年(令和7年)3月の総合指数は111.1であり、上昇傾向は依然として続くことが予想されている。
 一方、名目賃金(賃金の額面額)自体は増えており、2024年の現金給与総額(月例の給与と賞与等を合わせたもの)については、事業所規模5人以上あるいは30人以上の企業では前年比で33年ぶりとなる大きな伸びを見せている。しかし、実質賃金(名目賃金から物価変動を考慮して調整した賃金)で見た場合には、事業所規模5人以上では2024年は2023年(令和5年)に続いて0.2%の下落となっており、事業所規模30人以上でも0.1%の上昇に留まっている。このことからすれば、額面が増えても物価上昇によって相殺されてしまい、労働者にとって賃金上昇を実感できない状況になっている。
 「労働者の生活の安定、労働力の質的向上」(最低賃金法1条)という最低賃金の目的からすれば、その引上げが急務というべき状況であるといえる。
 一方、賃金を支払う側、特に中小企業の賃金支払能力を考慮する場合、最低賃金の引上げによって生じる負担の軽減も必要となる。政府も賃上げを行った中小企業に対し、業務改善助成金等の補助金や賃上げ促進税制などの支援策を設けているが、対象が限定的で十分なものとはいえない。既存の制度の改善に加え、社会保険料の事業主負担部分の免除・軽減措置や、政府による取引条件の監視を強め、公正な価格設定を促進する措置を講じることなどが求められる。
 当会は2019年(令和元年)7月4日付け「最低賃金を大幅に引き上げることを求める意見書」を発出して以降、最低賃金の引上げを求める会長声明を発出しているが、改めて最低賃金の大幅な引上げを求める調査審議を中央最低賃金審議会及び宮城地方最低賃金審議会に求めるとともに、国に対し、最低賃金の引上げに対応する中小企業への支援策の強化を強く求める。

2025年(令和7年)5月22日 

仙 台 弁 護 士 会  

会 長  千 葉 晃 平

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