死刑執行に関する会長声明
2009年7月28日、大阪拘置所において2名、東京拘置所において1名、計3名の死刑確定者に対し、死刑が執行された。今年だけで7名についての死刑が執行されたこととなる。
当会は、政府に対して、昨年9月26日、11月20日、本年2月10日と、死刑制度の存廃を含む抜本的な検討及び見直しを行うまでの一定期間、死刑執行を停止するよう強く要請したばかりであった。
それにもかかわらず、政府が、一方で国民的議論を起こすことを怠り続けながら、他方で今回3名の死刑執行を行ったことに対し、強く抗議するものである。
死刑については、1989年12月の国連総会で死刑廃止条約が採択されて以来、国連の各種委員会から、国際社会に対して、死刑廃止に向けた働きかけがなされてきた。これらの動きの中で、アジアでは、カンボジア、ネパール、東チモール等が全面的に死刑を廃止したほか、韓国や台湾でも、事実上死刑の執行が停止されている。現在、死刑存置国58か国、死刑廃止国139か国となり、死刑廃止が国際的な潮流となっている。
国内において見ると、今年5月に裁判員制度が実施され、今後、一般市民が死刑判決の言い渡しに関与する可能性が生じるようになった。また、足利事件においては、無実の人が無期懲役の確定判決を受け、17年以上にも及ぶ理不尽な身柄拘束を受けていたことが判明するなど、裁判において誤判の可能性が常に存在することを国民は目の当たりにした。死刑判決の裁判においても例外ではなく、4つの死刑確定事件(免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件)の再審無罪判決が確定したことも、改めて想起されるべきである。このように、死刑制度に関しての、国民的議論を起こす機は熟している。
当会は、政府に対して、死刑廃止の国際的潮流を真摯に受けとめ、死刑制度の運用と実態について国民に十分な情報提供を行った上で、死刑制度の存廃につき国民的な議論を尽くし、広く国民の合意が形成されるまで、死刑の執行を停止するよう重ねて強く要請する。
2009(平成21)年8月19日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 我 妻 崇