司法修習生の給費制の継続等を求める会長声明
当会は,2003年10月22日「司法修習生の給費制堅持を求める会長声明」を発して,司法修習生に対して給与を支給する給費制の廃止に強く反対したが,国会は,2004年12月,給費制を廃止して、国が司法修習生に修習資金を貸与する制度(貸与制)に切り替える旨の改正裁判所法を成立させた。
もっとも,同改正法については施行時期が2010年11月1日まで据え置かれるとともに,政府並びに最高裁判所は施行に当たり「統一・公平・平等という司法修習の理念が損なわれることがないよう、また、経済的事情から法曹への道を断念する事態を招くことのないよう、法曹養成制度全体の財政支援の在り方も含め、関係機関と十分な協議を行うこと」につき格段の配慮をすべきであるとの附帯決議がなされた。
しかしながら,司法修習生の給費制を廃止することは、上記附帯決議に真っ向から反するものである。給費制が廃止されれば,多くの者が修習期間中の生活費等を理由とする多額の債務を負ったまま法曹としての活動を開始せざるを得ない。法科大学院における学費負担の大きさをも考慮するならば、これは、上記附帯決議に指摘された弊害(「経済的事情から法曹への道を断念する事態」)にほかならない。文部科学省によれば,2009年度の法科大学院入試では,全74校の総志願者数が,昨年度より約25%減少し,法科大学院が開学した2004年度に比べると半数以下にまで落ち込んでいるとされるが、新司法試験の合格率が当初の想定を大きく下回っていること(今年度は27.6%と過去最低を更新)に加え,給費制廃止を目前に控えていることが,法科大学院の志望者を減少させる主な要因となっていると解されるのである。
司法制度改革審議会も、法曹に「国民の社会生活上の医師」としての役割を期待していたのであるが、医師については2004年以降国家試験に合格した医師には2年間の臨床研修及び研修専念義務が課される一方,研修医が研修に専念することができるよう、相応の予算措置がなされている。期待される役割の公共性において医師と法曹には共通点が多く,修習専念義務を負う司法修習生についてのみ給費制を廃止すべき理由に乏しい。
改正法成立後,政府並びに最高裁判所が「関係機関と十分な協議を行」ったとは到底言えず,このまま来年11月の法施行を迎えれば,附帯決議が危惧する事態を招くことは明らかである。かような状況に照らし,当会は,政府並びに最高裁判所に対して,給費制の復活を含む法曹養成制度全体の財政支援の在り方を再検討することを,さらに,今般の総選挙を経て新たに国民の負託を受けた国会に対して,貸与制を廃止して給費制を継続する旨の法改正を早急に行うことを,それぞれ強く求めるものである。
2009(平成21)年9月16日
仙台弁護士会
会 長 我 妻 崇