労働者派遣法改正法案の抜本的修正を求める会長声明
本年4月6日,労働者派遣法改正法案(以下「改正法案」という。)が衆議院に提出され,同月16日午後,審議入りした。
しかし,この改正法案は,以下に述べるとおり労働者派遣の規制として不十分であって,労働者派遣法の抜本的改正というにはほど遠く,修正を行うべきである。
第1に,この改正法案では,不安定な雇用である登録型派遣について原則禁止としながら,政令指定26業務を例外としている。しかし,現行の政令指定26業務のなかには専門業務といえない事務用機器操作やファイリング等が含まれており,「専門業務」を偽装した脱法行為が可能となりかねない。登録型派遣は全面的に禁止すべきである。仮に例外を認めるとしても,真に専門的な業務に限定されなければならない。
第2に,この改正法案では,常用型派遣を容認している。現在の行政解釈では,有期契約であっても更新によって1年以上雇用されている場合や雇入れ時点で1年を超える雇用見込みがあれば,「常用型」として取り扱うとされている。これでは容易に登録型派遣の原則禁止を脱法することが可能となるおそれがある。したがって,「常用型」は「期間の定めのない雇用契約」であることを明記すべきである。
第3に,偽装請負等多くの問題を指摘されてきた製造業への派遣は全面禁止すべきである。しかし,この改正法案では「常用型」の場合を禁止の対象から外しており,規制として不十分である。
第4に,この改正法案では,違法派遣の場合における直接雇用申込みのみなし規定を設けているが,直接雇用後の労働条件を派遣元の労働条件と同一としていることから,直接雇用となった場合の雇用契約が有期雇用契約とされる余地がある。同規定を実効性のあるものにするには,直接雇用後の労働条件は,期間の定めのない契約とすべきである。
第5に,団体交渉応諾義務など派遣先の責任を明確にする規定を設けるべきである。
当会は,これまでも労働者派遣法の早期の抜本的改正を再三にわたって求めるとともに,非正規労働者の解雇・雇止め等に関する法律相談窓口を設置するなど,非正規労働者の権利救済に取り組んできた。
そこで,当会は,国に対し,今後の法案審議において,労働者の雇用と生活を守るという原点に立ち返り,改正法案について,抜本的な修正が実現されるよう強く求める。
2010(平成22)年4月22日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 新 里 宏 二