民法(親族編・相続編)の早期改正を求める会長声明
選択的夫婦別姓や婚外子の相続分差別撤廃等を内容とする法改正は、1996年の法制審議会の答申以来、14年もの間棚上げにされ、現在に至るも実現されずにいる。
現行民法は、婚姻時に夫婦いずれかが姓を変更して同一姓を名乗ることを要求しているが、現実には婚姻する96%の夫婦が夫の姓を選択しているという現実がある中で、姓の変更を望まない女性は改姓を事実上余儀なくされている。その結果、女性が被る社会生活上、職業上の不利益には計り知れないものがある。
そもそも、婚姻後も自己のアイデンティティとしての姓を継続して使用する権利の尊重は、氏名が人格権の内容を構成することに鑑みると、法制度上、十分に尊重される必要がある。しかも選択的夫婦別姓は、夫婦同姓を望む人々の権利には何らの影響を及ぼすものではない。
先進国では、婚姻後の夫婦の同姓を強制しているのは既に日本のみとなっており、また、平成18年の内閣府の調査によると、60歳未満の年齢層では選択的夫婦別姓の導入に賛成する者が反対するものを上回っていた。平成21年9月以降実施された複数の新聞社の調査においても、選択的夫婦別姓導入賛成が反対を上回っている。政府や国会はこのような国民の声を真摯に受けとめるべきである。
また、婚外子の相続分差別の撤廃も国際社会の趨勢である。婚外子の相続分差別は、子自身の意思や能力によっていかんともし難い事実をもって差別をするものであり、憲法13条、14条及び24条2項に反することは明らかである。最高裁においても、相続分差別を撤廃するべきであるという意見が何度も述べられている。
さらに、女性のみに課される再婚禁止期間についても、科学技術の発達により男女間に差を設けるべき根拠は既に失われており、婚姻年齢の統一も、今や憲法14条、24条2項から当然に要請されることである。
1993年以来、国連の各種委員会は、日本政府に、民法親族編・相続編の改正を勧告し続けてきた。とりわけ、2009年女性差別撤廃委員会は、上記改正を最優先課題として指摘し、2年以内の書面による詳細な報告を求め、再度早期改正を行うよう厳しく勧告している。
当会は、今国会において、選択的夫婦別姓の導入をはじめ、上記民法親族編・相続編の改正が速やかに実現されることを強く求める。
2010(平成22)年4月22日
仙 台 弁 護 士 会
会 長 新 里 宏 二